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ゲームの思い出:ファントムクラッシュ

 本当に好きなものと巡り会える人間はなかなかいない。軽い気持ちで手に取った筈だった。

 Xboxを手に入れ色々ソフトを買っていた頃の話だ。
僕はロボットゲームが好きである。特に「自分だけの」とか「オリジナルの機体」とかそういう言葉に弱い。
当時で言うと部活でバーチャロンが流行り、ゲーセンにバーチャロンフォースをやりに行くか、それとも部室でドリームキャストのバーチャロンオラトリオタングラムをやるか、という選択に毎日悩まされていた頃であり、月に数万をフォース筐体に突っ込んでいた頃でもある。
 
 Xboxを手に入れたとき最初に買ったソフトはHALOだった。当時ゲームショップで数時間掛けて試遊台で後輩と延々と対戦したりしていた(迷惑な話だ)

後輩もXboxを手に入れ、昼休みや放課後などに部室で8人対戦をよくやったものだ。

 ある日の事だ。学校帰り、日課のゲームショップ巡りをしている最中、たまたま手に取ったパッケージには、“瓦礫と化した東京を駆け抜けろ!”と書いていた。
安かったこともあり試しに買ってみた。バイトの給料が入ったばかりでまあ安いし微妙だったら部室に持っていってみんなで笑おう、そんな程度に思っていた。
それがまさか帰宅後寝ずに2日学校をサボってまでやり続ける事になろうとは思わなかった。

 断言してしまおう。現時点でこのゲームが僕のロボットゲームの頂点であると。
 
ファントムクラッシュはトラッシュエリアと呼ばれる廃棄され、瓦礫と化した東京で行われるスクービーと呼ばれるロボットを使ったスポーツ「ランブリング」を描いたゲームである。プレイヤーは、競技参加者、ワイアヘッズとして、ランブリングに参加していく。
通常のロボットゲームにありがちなミッションなどは全く無く、気が向いたステージでランブリングを楽しんで行けばいい。
ミッションは存在しないがストーリーは存在している。要所要所で魅力的なキャラクターが描く物語は「ここに俺も行きたい」と思わせるに十分なものだ。
 
 ランブリングとはゲートにより封鎖されたエリア内でロボット同士のバトルロイヤルを繰り広げるものである。終了条件は自分がエリアから退場するか撃墜されるかの2つのみ。敵を撃墜すると次の敵がゲートから入場してくる。これは延々と繰り返されるため、自分がやられなければ本当にずっと戦闘し続ける事ができる。
 
 エリア内には一定のタイミングで金や弾薬、機体の回復のコンテナが投下される。
 交戦を続けていると弾はすぐに無くなるため如何にこの回復ポイントでコンテナを回収するかがランブリングの勝利の鍵でもある。

 ロボットゲームで一番重要な機体の操作も簡単でわかりやすい。その上機体の動作は良好。機体次第でステージをローラーダッシュで気持ちよく走り回ったりビルを飛び越すかのような大ジャンプで飛び跳ねたりできる。しかもロボットゲームにありがちな武器の切り替えなどは無く、装備している部位に対応したボタンを押せば即座にその部位に付いた武器で攻撃ができる。攻撃ボタンを全押しすると全てを同時に発射できる。高速で移動しながらの一斉射撃は爽快感抜群で病みつきになる。

 そして何と言っても光学迷彩である。当時フルメタル・パニックが大好きだった僕にとってこれも堪らないシステムだった。

 他のゲームでもそういう効果のアイテムはあったがこのファントムクラッシュではなんと標準装備。ボタンを1つ押すだけで瞬時に展開される。乗用車で言うとエアコンとかそういう、ついていて当たり前なモノ扱いなのだ。もちろん効果時間はあるのだが効果時間が切れても再チャージは早く、結果交戦していない間はランブリングの最中の9割は光学迷彩で姿を消していられる。

 それは勿論敵も同じで敵が次々と更新されて行くステージで姿の見えない敵を相手にして戦う事を意味する。

 光学迷彩は爆風などであっさりと解けてしまう。威力がほとんど無い爆風などでもあっさりと解けてしまうので、よく見れば画面の歪みで敵の場所がわかるとは言えグレネードランチャーなどで爆風を発生させ敵の光学迷彩を解くのも大事だった。
そしてこのゲーム。機体の左右から攻撃されると2倍のダメージを受ける。背後からなら3倍。つまり、姿を隠して敵の死角から全武器を一斉射撃して最大火力で一気に叩き潰すのが基本行動なのだ。
 

 機体のFCSはチップと呼ばれ、人格を持っている。似たようなオリジナルロボットを作って戦うゲーム、アーマードコア等では交換するだけでロックサイトの大きさや形、距離が変わるが、このゲームでは違う。チップに入っている動物の種類ごとにある程度の特徴はあるものの、成長要素があり、ランブリングで手に入った賞金等で強化しなければかなり貧弱なサイトなのだ。
しかしこのチップ。ランブリング中にうるさいくらいに話しかけてきてくれる。作中でもこのチップは機械としてでは無く1つの人格を有した存在として扱われている。
 
 機体を構成するパーツもカスタマイズが出来る。細かく設定するのではなく、重くするか軽くするかというシンプルなモノだ。重くすると攻撃力が上がり攻撃範囲が減り、弾数が減る。軽くすると弾数が増え、攻撃範囲が広がるかわりに攻撃力が減る。このバランスがなかなか難しかった。

 そして、ファントムクラッシュを構成する上で肝心な事がもう一つある。もう一人の主人公とも言えるべき存在ロイの存在だ。
ロイハ俗に言うと親友ポジのキャラなのだが、彼も様々な悩みをもってランブリングに挑んでいる。合間合間に語られる彼との話も必見だ。

 最初はそれほど強くないロイの機体、スプートニクも最終的にこちらを瞬殺する火力を持って戦う事になる。これがラスボスより強い。正面から対峙しようものならガトリングガンで文字通り瞬殺される。

 彼と交戦するとき流れてくる鉄板の「ハートに傷一つきり」も名曲で、たった二人で交戦する戦場とベストマッチだ。敵を倒しても自分がやられても絵になるBGMはそう無い。ワイアヘッズにとってロイとはガトリングガンでヌードルでスプートニクなハートに傷一つきりで越えるべき壁であり友なのである。
 
 
 2015年。スプラトゥーンが発売された。ファントムクラッシュと共通点が割りと多いこのゲームについては別の機会に語るとして、このゲームで僕はワイアヘッズに出会ったことがある。

 スプートニクという名のバレルスピナー使いである。バレルスピナーというのは要はガトリングガンで、ロマンの塊過ぎる漢のブキだ。件のスプートニクさんは知る限り3人はいるみたいでその中の一人はロイのスプートニクさながら修羅のように敵を倒していた。圧倒的な強さにこちらは惨敗した。スプラトゥーンのSランクのガチエリアで味方に一切の被害を与えることなくほぼ一人でこちらを完封しきった。あんなふうになりたいと思った。
 ゲームが下手な僕がスプラトゥーンのような対人対戦ゲームで最高ランク帯まで行けたのはひとえにあの人とまた戦いたかったからかもしれない。結局、二度と出会うことはなかったけれど。

 これからも僕はロボットゲームやシューティングゲームでガトリングガンを担ぎ続けるのだろう。
それはきっと、新しいワイアヘッズに出会うためでもあるのだ。
 
 
 
 僕はワイアヘッズ。
心はトラッシュエリアに置いてきた。
スクービーのカーステレオからは鉄板の「ターボ最高」が流れていて、僕はサビを口ずさみながらゲートが開くのを待っている。
たまには帰省してみようか。
 あの熱い旧東京【オールドトウキョウ】の夏はいつでも僕を待ってくれている。

ファントムクラッシュ XBOX

2002年6月20日発売

販売:元気

※見出し画像は公式のゲーム画面からお借りしています。問題があれば連絡をくださればすぐに消去します。


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