BitSummitに行ってきた

2019/06/01-02に開催された、インディーゲームの展示会「BitSummit」に今年も行ってきました。
行かなかった年もありますが、5年前の2回目からほぼ毎年参加しています。

ゲームショーの類にはあまり行かない方なのですが、(LA-MULANAのエントリにも書いたとおり)BitSummitでは、ゲームを作った方と直接お話できたり、普段業界にいてもなかなか合わない方がここでは参加していたりと、コミュニティとしての面白さもあるため積極的に参加しています。

家族連れや学生、外国人の方も多く、オープンな雰囲気なのと、試遊の待ち時間も(大手ブースやVRコンテンツで多少あるものの)ほとんどないため、全体的にポジティブな雰囲気なのがとてもよいと思っています。

基本的にはBitSummitに対しては肯定的に考えていますが、今年参加して思うところがあったので書き残しておこうと思います。

ショー会場でこそ遊びたいゲーム

毎年BitSummitには参加するものの、今年はほとんど試遊はしませんでした。同行者がいたので、あまり時間をかけて並んだりするのは気が引けたというのはあるのですが、正直なところ「わざわざ今遊ぶ必要性を感じなかった」というのが大きいです。(まあ、これはBitSummitに限らず他のゲームショーも同じですが)

私が出展されているゲームを遊びたいと思うときのモチベーションは、
1.見た目だけではどういったゲームなのか、どこが面白いのかが想像しにくく、実際に遊ばないと分からなそうなゲームのため
2.その開発者のファンで、作者の方とのコミュニケーションを取りたいため
3.その他、話のタネにやっておいたほうがよさそうなゲームであれば
という感じです。

この中でも個人的に一番重要視しているのは1番です。
私もゲームを30年以上も遊び続けているので、大げさではありますが、大抵のゲームの「元ネタ」はなんとなく想像できてしまいます。極端なことを言えば、「遊ばなくてもどう面白いのか大体分かる」ようになってしまっているということです(もちろん、面白さが100%分かるとは全く言いませんが、コアデザインくらいは)。なので、試遊とは言え、「答え合わせ」のような感覚になってしまうことが多いです。

そんな中、(主にテクノロジーの進歩によるところが大きいですが)
・今までのゲームデザインにはなかったようなアイデアが含まれていたり
・見ただけではわからない手触り、右脳的な感覚や感情に直接訴えかけるような表現があったり
・見たこともないデバイスが使われていたり
・デジタルゲームでは表現できないアナログな仕掛けがあったり

というゲームがあると、これは実際に遊んでみないとわからない、となるのです。

誤解しないでいただきたいのは、上記のようなゲームでないと面白くない、というわけではなく、あくまでも「面白さが想像できる」ということです。面白いのがわかっていれば、リリースされたときに買えばいいと思っているので、ことさらショー会場で遊ぶ意義としては乏しい、ということですね。

逆に言うと、上記に挙げたゲームが必ずしも面白いとは限りません。一般的なアイデアではないからこそ、大して面白くなかったということは往々にしてあります(そのアイデアが今まで世間に出てこなかった理由を考えればわかります)。「王道」が「王道」であり、「異端」が「異端」というのはそれなりの理由があります。

(完全に余談ですが、RPGの戦闘に音ゲー要素を追加する、みたいなアイデアはいろんなところで目にしますが、そういうジャンルが世の中であまり浸透しないのは…実際に作って遊んでみればわかります)

そんな中でも、ブレイクスルーと言えるインディーゲームはいくつもありました。
インディーゲームのクラシックとしては、プレイヤーキャラを操作するだけでなく、時間を自由に巻き戻し、再生しながらパズルを解きながら進んでいく「Braid」、ローグライクゲームにリズムゲームの要素を足し、アクション性を高めた「Crypt of NecroDancer」など、数多く存在します。
私がショー会場で遊びたいのは、そういったゲームであり、そして、そういったゲームを作った方と直接会話できるBitSummitという場が好きです。

インディーゲームのモチベーションと「シーン」化したインディーゲーム

私は、今のインディーゲームには大きく分けて2つのタイプがあると思っています。

ひとつは、商業的に成功するか分からないが、作品的に表現したいことがある、というモチベーションによって作られた実験的なゲーム。
そうしてもうひとつが、自分がリスペクトしている作品を自分の手で好きなように作ってみたい、というモチベーションによって作られたオマージュ的なゲーム。

前者はまさに先程挙げたようなゲームです。一般受けはしない(するかどうか分からない)からこそ、好きな人に買ってもらえればよい、というスタイルのゲームです。

後者は、例えば現在ではメインストリームになりにくいオールドスクールなゲームジャンル、例えばアーケードスタイルのステージクリア型アクションや、2Dシューターであったり、ピクセルアートのゲームといった、過去に一世を風靡し、思い入れのあるゲームを自分でも作ってみようというものです。その頃のゲームは日本国内の独壇場だったので、特にそれらに対するリスペクトが強い海外の方に多い印象です。「メトロイドヴァニア」「ローグライク」さらには最近流行りを見せる「ソウルズライク」などもこちらのモチベーションと言ってよいかと思います。

どちらもメインストリームに対するカウンターカルチャーであることは変わらないのですが、出発点となるモチベーションは異なります。

BitSummitに行って思ったのは、「インディーゲーム」というものが完全にビジネスシーンとして定着し、ユーザーに対して「わかりやすさ」というものが求められるようになってきたのかな、ということでした。

今や、任天堂、SIE、Microsoftというトップ3のゲームプラットフォーマーがそれぞれにインディーゲームの誘致、サポートをおこない、さらに、Devolver Digital、PLAYISM、DANGENといったインディーゲーム界の大手パブリッシャーと呼べる存在も現れ、BitSummitではかなりの存在感をアピールしていました。

インディーゲームがレッドオーシャン化している、という話はそこかしこから聞こえてくる話題ではありますが、ビジネスとして確立されてきたこと自体はよいことだと思います。ただ、個人的にはそれは90年代のゲーム業界の後追いなのではないかと思うところもあり、もともとのインディーゲームを作っている人たちの制作モチベーションにマッチしたものなのかどうかというのは(私自身がそのシーンのプレイヤーではないので)懸念するところではあります。

私自身、本業とは別に(ゲームジャム等)趣味でゲームを作ることはありますが、最初から「販売したり広く公開することを想定していない」からこそ作れるゲームというのはあると思っており、もはやこれは「インディー」ですらなく、私は「宴会ゲーム」というくくりでそれを制作しています。

初期のBitSummitでは、まだイベントの認知度が低かったのもあってか、学生サークルや個人サークルが、単に「趣味のもの」として制作したゲームも数多く出展されていました。今でももちろんそういった展示は残っているのですが、どうしても目立つのは大手のブースになっています。

「単にお前がちゃんとチェックできていないだけで、そういうゲームもたくさん展示されてたよ」ということであればよいのですが、だからこそ、ブログでもなんでも、そういうゲームに光を当てることは重要だと思った次第です。

来年もBitSummitは開催されるはずですし、私も予定さえ合えば参加するつもりですが、来年はもっといろいろ、実際に手にとってプレイし、感想などをここで書ければいいなと思っています。

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