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選択肢が多いというメリット

このようなアメリカの歯科医療のシステムは日本の歯科医療のシステムとは異なっていますが、いちばん顕著な違いは「患者さんにとって選択肢が多い」ということです。

日本には専門医制度がないため、一般の歯科医師が専門分野の治療も行ないます(例外的に、口腔外科と矯正については積極的に分野を分けて治療を行なっていることが多いようです)。

また、行政の制度とは関係なく学会が専門医を定めていますが、一般医との明確な区別はありません。

いずれにしても、日本ではそれぞれの分野における専門医ではなく、一般医がほとんどの治療を行なうため、患者さんが専門性の高い治療を選択する余地はあまりありません。

また、国民健康保険制度は誰でも安価な治療を受けることを可能にしていますが、保険の範囲内で歯の治療を受けようとすると、選択できる処置や材料・機材などはかなり限定されてしまいます。

なかにはオプションとして自費診療を行なっている一般医もいますが、専門的な教育を受け、その分野での治療を集中的に行なう専門医と比べると、やはりさまざまな面で制約が増えてしまうことは事実であると思います。

実は、アメリカで専門医制度が発展したのは、それぞれの専門分野における治療技術の発展や研究の進展などにより、一人の歯科医師がさまざまな歯の症状をすべてカバーするのは無理だと考えられるようになったからです。

その結果、症状に応じて専門医が治療を担うようになっていきました。

そのほうが患者さんの選択肢が広がり、メリットが大きいと認識されるようになったのです。

日本はまだその段階に至っていませんが、専門的な教育を受けていない一般医だけでは患者さんのニーズに対応できないことは明らかです。

専門医による治療を求める患者さんは増えていますし、専門医を目指す若い歯科医師も出てきています。

とはいえ現状はまだ一般医が圧倒的多数ですし、ほとんどの歯科医師が自分でかなりの範囲の治療を行なっているので、患者さんには専門性の高い治療を受けるオプションは多くないままです。

参考文献
「あなたの歯の寿命、大丈夫ですか?歯医者さんとの賢い付き合い方」
著・石井宏
発行・コスモ21

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