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成功と失敗の差はどこで生じるのか


当院には、

「以前、虫歯治療や神経をしっかり治療してもらったのに、なぜかまた痛くなってきた」

「治療後も鈍い痛みが続いている」

という患者さんがあとを断ちません。

そのような患者さんの歯を診査すると、虫歯などで神経に炎症が起こる「歯髄炎」や、歯根の尖端に炎症が起きて膿が溜まる「根尖性歯周炎」といった病気に罹患していることがよくあります。

これらの炎症は、歯髄そのものや、歯髄が通っている根管という空間に細菌が感染することによって起こります。

「感染」というと、人体外から細菌が侵入してきて感染するというイメージをもつかもしれません。

しかし、新型コロナウイルスとは違い、歯髄炎や根尖性歯周炎は、患者さんの口の中にもともと生息している細菌が歯髄や根管に感染して発症します。

ですから、根管治療に関するかぎり、感染を防ぐにはテクニックの有無よりも無菌的な処置を行なうこと、そのために必要な環境を整えることがより重要だと言えます。

まさしく根管治療は細菌との戦いなのです。無菌的な処置を徹底しなければ、いかに技術が優れていても細菌が感染する可能性は高くなりますし、かえって感染経路を拡大してしまい症状をもっと悪化させることにもつながります。

患者さんからすると、細菌が感染しないように治療するのは当然でしょうし、どこの歯科医院でもそうしているはずだと思うでしょう。

しかし、日本の根管治療の成功率が半分くらいであるというデータが出てくるということは、実際には無菌的な処置がそれほど徹底して行なわれていない可能性が高いのかもしれません。

参考文献
「あなたの歯の寿命、大丈夫ですか?歯医者さんとの賢い付き合い方」
著・石井宏
発行・コスモ21

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