見出し画像

言葉が思考を先回りしてしまう

自分が考えていないような言葉を勝手に口走ってしまう時がある。

考えることなく人間は言葉を喋ることができないので正確には
・相手が自分の言葉をどう受け取るか
・自分の言葉がどのような影響を周囲に与えるか
を熟慮するより先に、言葉が口から漏れ出てしまう
と表現する方が適切かもしれない。

--

小学生の頃、私は「好きな女の子と面と向かって喋られない」系の少年であった。

相手の顔を見るのすら難しく、同じ教室内に居るというだけで意識が全てそちらに持っていかれるような感覚がした。

話すことを考えるだけで胸がドキドキして、思考が整理できず、面と向かって何を口にすれば良いのかが分からなくなり、ひたすらその子と接する事を避けて5年生、6年生の二年間を過ごした。

世の中には好きな子に意地悪をしてしまう人もいると聞く。その心理は大変よく理解できる。

相手を前にすると、いつも通りの自分ではいられず、何か話したいけれども、どの話題も適切ではないような気がして、どうでもいいような話をしてしまい、果てには相手を傷つけてしまうような言葉が口をついて出てきてしまうのだ。

--

恋愛的な文脈はここまでとして、今でも緊張している時やお酒を飲んでいる時に「これは自分の言葉(本心)じゃないなぁ」と思いながら喋っている時がある。

その多くは、会話のスピードに思考のスピードがついて行けていない場合だ。

これはひょっとすると関西に住んでいるからなのか、と思うこともあった。

大阪人は特に早口で、会話のテンポを気にする傾向にある。

そのお陰か、多少適当なことを言ってしまっても「なんでやねん」で許されるところがあるので、それはそれで救われることが何度もあり、存外嫌いなわけではないのだが、その空気感が苦手に思う人もいるだろうなぁと感じている。

とはいえ、東京で働いている時も結局その「これは自分の言葉(本心)じゃないなぁ」という感覚はあったし、なんなら留学している時も感じていた(単純に語彙力の問題もあろう)ので、完全に私個人の問題であり、地域性は関係ないと今のところは結論づけている。

--

比喩的に言うなれば、条件反射的に口がその言葉を喋っているというような感覚である。

それはしばしば間違っている情報であったり、誤解を招く表現であったりして、人の信頼を損ねる結果となる。

後になって(...何であんなことを言ってしまったんだろうか)と布団の中で一人反省会を開く羽目にもなり、まさに誰も得をしない"lose-lose"の状態となる。

--

プライベートだけならまだしも、ビジネスシーンでもそういう言葉が出てしまう時がある。

多くは自分の準備不足や思慮不足が主たる要因なのだが、幸か不幸かトレーナーの先輩がそうした発言を"大変に注意深くキャッチ"して下さる方なので、「今の発言はどういう意図か」「それはこういう意味で合っているか」と言ったことを"非常に細かいレベル"で指摘して下さる。

お陰で、話し始める前に一呼吸置く、誤解を与えないように話を順序立てる、自信の無い内容を推測で喋らないようにする、きちんと調べてから報告する、といったことなどは入社前と比べて少しは意識できるようになった気がする...いや、まだまだできていないところが多いかもしれない。

駆け出しとはいえエンジニアとして正確な知識と言葉でお客さんと会話できるようになる必要がある。

それを少しずつ学んでいる昨今である。
(なんだか会社に提出する月報のようになってしまった)

--

サッチャーの父が言ったとされる言葉に以下のようなものがある(ザッと調べたところ、ガンジーが言ったとする説やマザーテレサが言ったとする説があったが、実際のところ誰が最初に言ったかは今一つよく分からなかった)。

Be careful of your thoughts, for your thoughts become your words;
Be careful of your words, for your words become your deeds;
Be careful of your deeds, for your deeds become your habits;
Be careful of your habits; for your habits become your character;
Be careful of your character, for your character becomes your destiny.

考えは言葉になり、言葉は行動になり、行動は習慣になり、習慣は性格になり、性格は運命になる(ので、それぞれに注意を払いなさい)

と強引に訳してみた。

習慣や行動、言葉が自分自身の考えに影響を与える部分もあるので「これって一方向では無いよなあ」などと反論を考えたりするが、非常に納得のいく格言であると個人的には感じている。

「僕/私は〇〇だから...」といったある種の保険をかけた言葉が、そのまま自分の行動や考えの足枷になる可能性があるし、相手にも自分に自信がない人と受け取られてしまう。

相手への印象だけでなく、自分の本心への影響も決して小さくないので、言葉というのは本当に取り扱いに注意が必要だ。言霊という言葉が存在するのも頷ける。

普段つい口にしてしまっているネガティブな発言に、自分の考えさえも侵されてしまわぬよう、常日頃から注意して言葉は選んで使っていきたい。

会話のテンポが悪くても許してやってほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?