ふがいない僕は空を見た (2012 日本)

窪美澄の同名小説の映画化作品。
監督はタナダユキ。
高度成長期は憧れの的だった最新型住居「団地」がいつのまにか独居老人と生活保護で暮らす人々で埋まり、不景気と共に都市周縁部がスラム化する現代の状況を否応なく突きつけられる。
そんな21世紀のリアルを踏まえた上で、それでも人間は日々の営みを続けるし、子孫を残す生物で、だからこそ生まれてくる子供はそれがどんな状況だろうと祝福されるべきだし、男はすべからく「ふがいない」自分を自覚しなければならない。
主人公の高校生卓巳は自らの性衝動に逆らえず、しかし幸か不幸か彼の母親は助産院を営む助産師なのだ。
小さな頃にふがいない父は逃げ、母ひとり子ひとりの家庭で、日常的に子供が生まれる姿を目の当たりにし、時にはそれを手伝って育っている。
人間の営みを身にしみて知っているし、リスペクトを忘れない。いや忘れられない。
真っ当なフェミニズムに裏打ちされた、力強くふがいない人間の賛美歌。

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