フートボールの時間 作 : 豊嶋了子 + 丸高演劇部 潤色 演出 : 瀬戸山美咲 @ 吉祥寺シアター

昨晩はこちらでした。

フートボールの時間 <ala collection シリーズ vol.14>
作 : 豊嶋了子 + 丸高演劇部
潤色 演出 : 瀬戸山美咲
@ 吉祥寺シアター

出演 : 堺小春 / 井上向日葵 / おかやまはじめ / 近江谷太朗 / 林田麻里 / 谷川清夏 / 庄司ゆらの / 桜木雅 / 北原日菜乃

美術 : 原田愛
照明 : 上川真由美
音響 : 泉田雄太
衣裳 : 藤田友
振付 : 熊谷拓明
制作 : 半田将仁 / 馬場順子

主催 : 公益財団法人可児市文化芸術振興財団

高校演劇のグランプリ作品を元にしたお芝居。
例のあのラジオの高校演劇特集を聴いて、観たくて観たくてたまらなかった作品。
とにかく、まずは観られてよかった。
私の今年の(大した数は観てないが)ナンバーワンはこれだ。
まだ、来月観るものもあるけど。

あのラジオとはTBSのアトロクこと「アフター6ジャンクション」。
神回と言われ、その後シリーズ化されることとなる"高校演劇特集"は2018年9月5日に放送された。
私はこの番組をポッドキャストで時間があれば聴いているんだが、聴いたシチュエイションまで覚えているのはこの回だけだ。
仕事帰りにJRの高架脇を歩いていて、ふいに涙がこみ上げ、高架下の人目を避けられる場所を探し、しばらく泣いていた。
ポッドキャストを聴いてまさか泣くなんて、自分でも驚いた。

おそらく評判を呼んだのであろうこの特集から「フートボールの時間」のことは番組で何度も話題に上る。
グランプリであるこの作品がNHKでフル尺でオンエアされたこともある。
しかし、私はこの作品の本編を観られないのだ。...ポッドキャストだから。
本編のテレビ放送はとっくに終わっていた。

昨夜、劇場の中でいちばん泣いていたのは私だ。間違いない。
この作品は100年前の女性の置かれている境遇が大きなテーマになっているが、この〈あらかじめ決められている境遇への疑問/抵抗〉という、私が最も同期し共振するテーマの前に、私は女性サッカーのファンなのだ。
あの、なでしこジャパン(この呼び名キライなんだけど、もうこれじゃないと伝わらないくらい定着しちゃったんであえて使うね)がワールドカップで優勝する2011年よりはるか前、国内リーグがLリーグと言われていた時代からね。
女性サッカーが100年後どうなっているか、その言葉が出た瞬間からいろいろな思いがこみ上げちゃって。
女性のサッカープレイヤーたちがこの20年、どれほど時代と経済に翻弄され辛酸をなめてきたかを見ているだけにどうにも堪えられなかった。

終演後、鼻をぐずぐずさせながら脇目もふらず帰宅した私は、元の高校演劇版をどんな違法な方法であろうとネットで観てやろうと探したが、オリジナルは見つからなかった。
とある高校の地区大会用に収録したものがあったので、それを観た。
多少潤色されているようだが、それでも元の作品に近いのではないかと想像する。
これを観て昨晩の舞台を考えると、時間的に2倍だというのももちろんあるが、おそろしく完成度の高い作品に昇華されている。
ストーリーの発端になった100年前の写真を誰が撮ったのか、という新たな視点をもうひとつの主軸に据えた上で、元の作品のほぼすべてを解体し、純化した結晶を再構成している。
見事というほかない。

最後に、この公演に使用されていた音楽の選曲センスがあまりに素晴らしく、演劇よりもサッカーよりも音楽に人生の最も長い時間を費やしている私から、選曲リストを公開させていただこうと思う。
ここに出てくるシンガーはすべて、一本芯の通った素晴らしいシンガーばかりだと断言できる。
興味があったら、ぜひこのシンガーたちの歌も聴いてみてほしい。

Adele / Daydreamer
Joni Mitchell / Coyote
Judy Collins / Priests
Judy Collins / Hey That's No Way To Say Goodbye
Carly Simon / The Right Thing To Do
Adele / Someone Like You
k.d. lang / Helpless 2020

特にエンディングに使われた「ヘルプレス」は染みたなぁ。涙が止まらなくて立ち上がれるか心配になるほどだった。
オリジナルはCrosby, Stills, Nash & Young "Déjà Vu" に収録されている。作詞作曲はニール ヤング

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