千駄木のラーメン屋の居抜きで唐揚げのテイクアウト専門店がオープンしていた。もともと2,3人のスタッフでオペレーションをしていそうな規模の店舗だったので、開け広げとなった店内を覗くと随分とスペースを持て余しているように見えた。
余分なスペースに支払う3万の家賃を稼ぐために、例えば単価150円の唐揚げを200個売らなければならない苦労は営業を始めて痛感するのではないか。
翌日、豊洲辺りを歩くと、ららぽーと前の公園では幼い子供を連れた若い家族で賑わっていた。この数年で周囲に次々と建てられたタワーマンションの住民たちだろう。共働きで、世帯年収が1,000万を超えれば、銀行は平気で8,000万程度のローンを組んでくれるのだと、新居を探している30代の同僚が教えてくれた。
近い世代が、似たような家族構成で暮すタワマンでは学校、習いごと、あらゆる場所でマンション内のコミュニティとの接点が生ずる。本来的に高給取りが住まうべき場所に、2馬力でようやく額面だけその世界に足を踏み入れた気になっても、周りの華やかな生活に引きずられ、日々のやり繰りに追われる思い描いていた幸福とはかけ離れた暮らしが待っているだけであろう。
飲食店でいうと新規開店した50%が2年以内で廃業するという。人生を左右する決断を高揚感のなかで下してしまったり、根拠のない楽観をベースに判断してしまう、或いはお金の計算そのものが苦手な人が、実は世の中にはとても多いのではないかと近頃感じている。

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