失われた20年といわれる間に広がった貧富の格差。その影響が直撃した街は新宿ではないだろうか。
かつて「最先端」が間違いなくマーケティング的キーワードの一つであったバーニーズニューヨークの日本初出店も、マルイ発信の新しいカルチャーも、「新宿」という街への帰属がセットとなっていたものだが、この街に訴求力が失われて久しい。
凋落の背景として埼京線の延伸、副都心線の開業等々挙げようと思えばキリがないが、街としての品格を失ってしまったのは何より森ビル、三井不動産、三菱地所等大手デベロッパーによる巨大な投資と優秀なマーケティングで人を集める六本木、丸ノ内、日本橋、日比谷等の台頭により伊勢丹新宿店周辺の上澄みにいた層がごっそりと持っていかれてしまったのだと僕は考えている(それでも伊勢丹は孤立無援で魅力を保ち続けている)。
もはや大規模な開発の余地は残されておらず、すでに完成された大きな器の中で、類型的な価値観とコンパクトな暮らしを生きる客相手にどのような商売が可能なのか。チェーンの居酒屋やショッピングセンターにあるフードコートの運営者にでも打開策を訊いたほうが適切なアドバイスが貰えそうなくらい、陳腐で、退屈なエリア。それが今の新宿の実態ではないか。
僕らは一つの大都市の終焉を見ているのかもしれない。



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