少子化対策に感じる閉塞感

先日中医協の診療報酬改定に向けた案が出てきました。

これによれば、

・一般不妊治療を受けられる施設が増える可能性
・凍結保存期限の3年の上限がなくなる
・精子凍結が組み込まれる
・流産検体を用いた絨毛染色体検査が可能に

というようなダイジェストになるかなと思っています。

様々な議論があろうとは思いますが、総じて環境としては悪くなっていないですし、より目が細かくなっているような印象を受けます。

凍結期限の撤廃

凍結期限の撤廃は、非常に妥当な判断です。
通常、体外受精を行っていると卵巣刺激によって、複数の胚を凍結するようにアプローチすることが多いと思います。
イメージとしては、
12個採卵→8個受精→3−4個の胚盤胞を目指すような感じです。

35歳などの年齢であれば、この胚盤胞から1人から2人のお子さんに恵まれる可能性が高いです。

しかし、現在の社会において、連続して出産し、結果的に3年4年も仕事に復帰できない状態を作ることがお互いに可能でしょうか。
制度上はできるかもしれないけれど、キャリアが断絶してしまう可能性などを考えて(コントロールして)、少し育児が落ち着いてから第二子にチャレンジしようと思うのも不思議はありません。

このとき、3年という期限にはあまり意味がなくなります。

理論上はこうした点があると思いますが、そもそも制度上の難しさとして、
その胚を3年も保険で更新できるのか、という点は怪しさはありました。
妊娠中や、上記のような治療計画を立てられない状況の場合、自費での更新ですから、保険の3年という定義には入りません。

受精卵をためて次の治療にチャレンジするのが原則不可能と考えられる状況ですから、保険で3年更新するという人が出てこない、と考えるのが妥当かもしれないですね。

そこに対して医療機関側は慎重に、回数とか年数を制御できるようなソフトを組み込んだりもしていましたので、無駄がなくなってよかったね、というところでしょうか。

精子凍結

これに関しては予想通りという方が多かったと思います。
かなりスピーディに保険適用を進めたところもあり、精子凍結含め、男性不妊への対応にどうしても不備があったように思います。

これにより、医療機関も躊躇なく男性不妊患者にも対応できるのではないでしょうか。

こうした変更があり、日々不妊治療を希望される患者さんの受け入れにつとめてはおりますが、それでもどんどん少子化は進みます。

止まらない少子化が一つの答え

72万人程度という報道に慄きました。
不妊治療では少子化は止められない。
それを突きつけられたように思います。

不妊治療は「授かりたいけと授かれない」という状態を「授かった」に変える治療です。

「授かりたい」がなければ、何にもスタートしません。

今の少子化は「授かりたい」が足りないことが原因のすべてです。

そもそも少子化は悪か

これさえわかりません。
もともと社会構造上、子どもがその家の新たな労働力となるという前提があり、各家庭で労働力を担保して競うという前提があったため、結婚したら子どもを作って、という流れができあがっていた側面が社会的にあります。

その社会的な形が今は成立していません。
産業構造が変化したため、子どもの必然性が薄れているように思います。

女性の人権も確立されていき社会進出も進んでいます。
男女の権利も平等です。

そうなったとき、子ども必要?、と考える夫婦が出るのもまた当然といえば当然の思考です。

なので授かりたいと思う人が授かれる状態を作ることは価値が高いとも言えて、フランスなどのように、選択的シングルマザーを認めたらどうか、という議論にもなるわけです。

結婚したいと思わない人の増加

より深刻なのはこちらではないでしょうか。
選択的シングルマザーが不可能であれば、結婚したいと思わない人が多ければ、少子化対策はそこで行き止まりになります。

それが年々上がるのだから、これは止めようがない。

労働力は移民も含めて対策は可能でしょうし、テクノロジーの力で対応できる部分もあります。

だから、子どもの数にフォーカスをするのであれば、これを手掛ける政策側の意識を改めないと、一生平行線をたどるだけだなと思います。

この閉塞感を打ち破るなにかをいつも期待しています。

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