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気まぐれショートショート 白骨化スマホ

「やぁよく来てくれた!」
その夜、私は無理を言って旧知の友を呼んだ。
彼は指折りの古生物学者だった。

「僕を呼び出すなんて余程のことだね」
「すまない。ぜひ君の意見を聞きたくてね」

私は彼を研究室に案内した。
先日の台風で発生した土砂崩れの中から新種の化石が見つかったのだ。

「直径は約20~30前後、とはいえ個体差がありすぎてね」
「単眼のものもいれば3つ目の奴もいるね。なかなか複雑な遺伝だ」
「妙なのはこの生き物には手足の骨がない。翼もだ」
「クラゲのように骨のない生き物はいる」
「だがクラゲは海の生き物だ。この地層に海の成分はない」
「確かに。胴体の骨もかなり丈夫で金属みたいだからそれはないか」
「興味深いのは、今から約3500万年前に生息していたとされる二足歩行種の化石の傍に必ず1体、多いときは複数体見つかっているんだ」
「すると、二足歩行種と何らかの共生関係にあったとみて間違いないね」

空想と考察議論は夜通し行われた。
だが「スマホ」の正体まで到達するのはさらにずっと先のことだ。

(434文字)


化石の面白いところは、当時を知らない者がそこにある情報だけでイメージを膨らませていくことではないかと。故にそれまでの学説が間違っていたなんてのもしばしばで、そこもまた醍醐味なのかもしれません。

実際のスマホは、相当長い時間かけないと地中で分解されないと聞きますが、その時の未来人はスマホを見てはたしてどんなことを想うのでしょう。

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