見出し画像

母と私の朝ルール

私が物心ついてから一人暮らしを始めるまで、
我が家での母と私の間には、暗黙のルールがあった。

毎朝必ずどちらかが「おはよう」と声をかけたら、
相手はそれに「おはよう」と返すこと。

これだけ。

何をそんな当たり前のことを、と思われるかもしれないが、
このルールは毎朝必ず行うのだ。

昨日どんなに大喧嘩しても、
昨日どんなに傷ついたとしても、
このルールをお互いに破ることはなかった。

みなさんはどうだろうか。

どれだけ相手に腹が立ったとしても、
もう二度と顔を見たくないと思っていても、
向かい合ったら「おはよう」と言う、
言われた方は「おはよう」と返す。

そのあとは一緒に朝食を食べて、
洗濯が終わったら、普通に学校や仕事に行く。
休みの日はお茶しながらおしゃべりする。

昨日のことはすべて水に流す。

いつからこのルールが出来たかなんてもう覚えていない。
でも、子供の時からずっとそうしてきた。
母と二人だけの儀式みたいなもの。

「ごめんね」とか余計な言葉はいらなかった。
むしろあれこれ言う方が、野暮というものだったのだろう。
何も言わない仲直り。

ちなみに、ほかの家族はこのルールが通用しない。
それが普通なのだろうけれど。
特に父は外でのストレスを持ち帰ってくるタイプだったので、
朝「おはよう」と言っても大概帰ってこない。

だからいつも、母と二人で
「めんどくさいね」
と陰で言っていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?