2.3分程で読める短編小説後編

西日の残滓がケンジのもつ妻の骨壺を照らしていた。
鼻の奥につんと来る冬の匂いとともに悲しみが混じり合い目頭に熱いものが込み上げてきた。
葬儀での仮面お酌の振る舞いで仮面が溶けドロドロになった悲しみのダムが決壊し
齢60にもなる男が玄関前にへたり込みおんおんおんと奇怪な声をあげケンジは赤ん坊のように泣きじゃくった

おんおんおんおん
おんおんおんおん
おんおんおんおーん
おんおんおーんおーん
おんおーんおーんおーん
おーんおーんおーんおーん
おーんおーんおんおんおんおーん
その時ケンジはふと思った
3回目の泣き方バブルガムブラザーズのwon't be long のおりおりおりYERのところおんおんおんおーんのところと類似していることに気づいてしまった!
そう思ったら吉日男のケンジはどうにもこうにもwon't be long に当てはめたくなってきた

おんおんおんおーん
おんおんおんおーん
おんおんおんおんおんおんおーんおーん
レッツゲットおーーん!

はまった!!

まだまだいける

won't be long
おんおんおーん
won't be long
おんおんおーん
もうすぐさとどくまで〜
おんおんおんおんおんおーん
お前のためにすべて〜
おんおんおんおーんおーーん

無理だ
どうやっても無理だ
束の間の類似の幻影に虜になったケンジは我に返った。
won't be long泣きをやっていたせいか
すっかり暗闇に包まれあたりは静寂が支配していた
ケンジはいよいよ玄関のノブに手を握り右の方へ回した....

つづく