ダイアログ・ファシリテーター

(2011-06-21に書いていたことをnoteに移しました)

「人はファシリテーターがいなくても話はできる」

ダイアログの『場』をファシリテートをするようになって2年、ようやく気付いた当たり前のこと。
ではなぜそこにダイアログファシリテーターとして『居る』必要があるのかを考えてみるようになりました。つまり自分なりの今の時点でのダイアログファシリテーターに対する定義を。

●ダイアログとは

そもそも「Dialoge」という単語自体は日本での直訳をなしません。「対話」と便宜的に使うこともありますが、ダイアログを使った仕事や集まりなどではダイアログという言葉自体をそのまま使ってディスカッションなどの「手法」と比較することで言葉を補っています。私自身も「対話」と一言で片付けずにいろいろ言葉を足しています。

私が参加させていただいているDevLOVEというコミュニティの集まりでダイアログの場を行う時は、ダイアログの手法のひとつである『ワールド・カフェ』を説明に使うことが多いです。理由は、新聞などにも取り上げられることが増えてきていて認知度が高いということと、その単語の成り立ちから、参加者に場の説明が分かりやすくなると考えるからです。『ワールド』という部分は、実際には『世界旅行』的な図を示して、席替えをする可能性を伝えることと、多くの人と話してもらいたいことを伝えます。『カフェ』の部分では、雰囲気が大事であるということと、カフェではエチケットがあるから雰囲気を保てるという話からグランドルールという『場』で意識してほしいことを説明することができます。
ワールドもカフェも一般的な単語であり、イメージが統一しやすいという面においても、すばらしいネーミングだと思います。

ただ、DevLOVEの集まりではダイアログの時間は限られているので、『ワールドらないカフェ』つまり席替えなしの場合が多いので、説明が合わなくなっていて、ふさわしい説明はなんだろうと考え始めました。自分がダイアログファシリテーターをする時に何をしているのかを整理して、思いついた言葉は『ちょっと”意識”した会話』です。大雑把すぎないかという感もあると思われるでしょうが、どう意識するか?、何を意識するか?はその集まりの内容によって違うので、私が作るダイアログの『場』で参加者に最初に伝える言葉としてはちょうどいいと考えました。

●ダイアログファシリテーターとは

その『ちょっと”意識”した会話』をするダイアログに特化するということは、場作りにおいて参加者同士がテーマに合わせて会話しやすい状況を作り出すことを最優先するということです。そこで私がダイアログファシリテーターとして意識しているのは3つ。

 1.参加者の関係性の再構築
 2.参加者の背景(立場)の扱い
 3.参加者の会話のレベル

1つ目の『参加者の関係性の再構築』については、DevLOVEでダイアログを始めるようになった時から大切にしていたことで、社外の集まりの場合、初対面の人同士が話すことが多いので、『知らない人』からどこまで言葉を交わせる関係になっているかがキーになると考えていました。DevLOVEの集まりでは構成上、ダイアログの時間は一番最後ですが、ファシリテーターとしては始まる前から活動します。机と椅子の配置、お菓子の配布、音楽を流してもてなす感覚。まずはリラックスな場を提供すること。そして、『指示書』という形での参加者同士の交流も促しました。その後の講演やライトニングトークスを聴いている状態や、休憩時間の様子を把握して、テーマについても再考し、ダイアログの説明時に利用するアイスブレイクを考えたりして『話せる関係性』を構築していました。

2つ目の『参加者の背景(立場)の扱い』は大きく分けると『意識させる』か『意識させない』かです。参加者のテーマに対する状態は様々です。テーマについて深い知識を有する人もいれば、まだ興味の入口に立っているという人もいます。それを背景(立場)と解釈して、用意する『場』ではそれらの立場の違いがどう影響するか、または同じ場合には共感をどう活かすかなどを考え、違いが大きく会話を妨げる方向に影響が大きいのならフラットな状態にする場作りをします。逆にそのそれぞれの専門性や立場を活かした方が良い時は『視点の多様性』や『立場への誇り』を意識してもらうことで、会話の状態を整えます。

3つ目の『参加者の会話のレベル』は最近になって意識し始めたことで、冒頭にも言った『人はファシリテーターがいなくても話はできる』ことにも関係します。これは会話がうまい、下手というレベルを指しているのではありません。DevLOVEという場所でダイアログを重ねてくると、数回参加している人などもいて、その方たちはどう会話するのがいいのかを無意識につかんでいることに気付いたのです。その場合、まったく初めての人たちで会話するよりも安心した場になることもありますし、よりテーマの深層へと入っていくことがあるようです。一番特筆したいことは話している内容の『違和感(ズレ)』に気付くことです。そしてその感覚を説明してよりいい内容になっていく。このような場には多くの気付きと腑に落ちた感が生まれますが、同時に『もやもや感』も生まれるようです。この『会話のレベル』はその場に参加している人たちがどのレベルで話せているのかで、ファシリテーターとして介入する必要があるのか、次のテーマをどのように伝えるかを考える指標になると考えています。

●ダイアログが『ある』世界へ

ダイアログの『場』を作った時にアンケートを取ると、たいてい『時間が足りなかった』と書かれれます。これは、ダイアログファシリテーターの私にとってはうれしい結果なんだと思います。『もっと話したい』そう思ったということなのでしょうから。1つ1つの場で解決や、成果を出すこともファシリテーターの勤めと思いますが、『自分を話したい。そしてあなたの話を聴きたい。』そんな思いを参加者に持ち帰ってもらえることがダイアログファシリテーターの役割なのかもしれないと思い始めています。これを読んでくださったみなさんも、ダイアログのある世界にぜひ触れてみてください。

 ―― ダイアログが日常に普通に存在する世界へ ――

元:http://discoverycoach.hatenablog.jp/entry/20110621

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