gapとアン。 vol.14

私はgap。

今年で30歳になる普通の男だ。

結婚して娘もひとり、仕事もなんとかやっていけてる。

欺くことに正義があるのか。

幸せにするためにつく嘘。

お金を得るために行う詐欺。

物事を円滑に進めるための嘘。

騙される方が悪く、騙されている方が幸せなのだ。

イニシアチブは嘘をつく者次第。

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泣いているよな?

着ぐるみの下で泣いていることがわかるほど、肩が上下している。

「泣いてるんですか?」

私は青い毛むくじゃらに聞いた。

「泣いてなんかいない、少しラーメンが熱かっただけだ。」

毛むくじゃらは着ぐるみの内で流れる涙を隠しているようだった。

私はとりあえず、気を取り直そうとした。

この人がなんで青い着ぐるみを着ているかは無視しよう。

ラーメンを食べていることも、一旦頭から離そう。

優先すべきはこの状況から抜け出し、外へ抜け出すことである。


私はあたりを見回した。

青い毛むくじゃら、大きな鏡、電気ケトル、そして赤い毛むくじゃらの着ぐるみ。

この部屋のどれもが違和感を放つし、いっこうに慣れない。


私は服を手で探った。


ポケットには財布、iPhone、そして一枚の封筒がある。


藤田社長が手にしていた封筒かな。

「この封筒はなんだろう」

表に「プラチナム」とだけ書かれている。

薄暗い部屋のわずかな光をたよりに、封筒の中にはいっているメモを読んだ。

「あなた達は互いに協力し、お互いの目的を遂行してください。

まずは二人で東京へ向かってください。詳細は東京で話します。 藤田」

藤田社長からのメモか。

東京?

理由もわからずに?

しかも、二人って。

もしかして、この毛むくじゃらと二人って意味か。

そういえば、有名人を755に参加させる為に呼ばれたと言っていたな。

しかしなんだってんだ。

なぜ、私がこんな目に。



ふと、視線を青い毛むくじゃらに向けた。

目に飛び込んできたのは、首を吊ろうとする青い毛むくじゃらの後ろ姿だった。

「おい!!!!」


私が叫んだ瞬間、毛むくじゃらが台を蹴り一瞬体が宙で振り子になった。

「バカ、なにやってんだ!」


私は無我夢中で毛むくじゃらの下半身を持ち上げ、壁へ押し付けた。

その衝撃で、壁から掛けられた紐が外れ、二人ともが重なるように床へ転がった。

「ちょ、、ちょっと。 な、なにやってんだよ。」


荒い息遣いの私に

「首でもくくりたくなるよ、こんな部屋に閉じ込められて。こんな着ぐるみを着せられ…」

青い毛むくじゃらは、抑えきれない感情を言葉にしようとして震えているようにみえた。

そして、狂ったように壁に頭を叩き続けた。

ゴンゴンゴン

ゴンゴンゴン

「こんな着ぐるみ、壊してやる!」

ゴン!ゴン!ゴン!

「お、落ち着けよ! 頭、怪我するよ !」

ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン

一層激しくなる毛むくじゃらの行動に私は怖くなってきた。

「と、止めなきゃ死んじゃう」

私はとっさに、転がっている赤い着ぐるみをきた。


「ほら! オレも着ぐるみ着てるよ! 一緒だよ!こっちみなよ」

ゴン、ゴ...

動きを止め、青い毛むくじゃらはこちらを振り返った。

「よかった。とりあえず止まった。」

青い毛むくじゃらはゆっくりとこちらへ向かって歩き始めた。

そして私の目の前までくると、私の首元に手を添えた。

パチン。

カチャ。

「え、え。」

私は着ぐるみを必死に脱ごうとしたが、首が外れない。

「え、え。」

戸惑う私を横目に、青い毛むくじゃらは肩を震わせ。

着ぐるみの下で。

笑っているように。

私には映った。

つづく。

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