gapとアン。 VOL.13

私はgap。

今年で30歳になる普通の男だ。

結婚して娘もひとり、仕事もなんとかやっていけてる。

いつもと同じ時間に、いつもと同じ定食屋、注文するのはいつもと同じメニュー。

他の料理がまずい訳ではない。

かといって毎回頼むこれが特別美味い訳でもない。

この時間にこれを食べるととても安心するのだ。

自分の体調を確認し。精神的に落ち着けているなと確認できる。

ただ同じであるということが、最も信頼出来る理由の一つかもしれな。

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リーガロイヤルホテル京都を目の前にし、男は少し深呼吸をした。


「ここのホテルでイベントがあるんだぁ。なんか歴史ある感じのホテルだな」

僕は少し感慨深くホテルを見上げた。

そして、会場の案内がないか辺りを見回した。


「どこかに看板がでてないかな?」


私のすぐ横をホテルの従業員が通り過ぎた。

「あの、すみま...」


「お待ちしておりました!」


突然、目の前に顔が出てきた。

「うぉわぁ! 鬼だ!」

鬼がでた。


正確には鬼みたいなメイクをした、背の高い女だ。

従業員を遮る様に私に話しかけてきた。


「あなたは?」


「今回の755イベントをご案内させて頂きます。

どうぞよろしくお願いします。」

はじめは少し戸惑ったが、イベントへの期待感がそれを忘れさせてくれた。

背の高い鬼の様な女性に導かれ私は地下の1室へ通された。

出されたお茶を飲み、女がイベントの説明をはじめた。


....ところが、途中から話が怪しい。

私が期待していた展開をなかなか見せない。

ましてや思いもよらないことを言い始めている。


「....どういう事ですか? 今日はイベントがあると聞いて来たのですが。」

「...ですから、あなたにはある人物を755へ参加してもらう様に促して欲しいのです。 手段は選びません。」

「ど、どう意味ですか!? 」

気味が悪い。

こんな場所から早く離れよう。

「僕、帰らせて頂きます。」

すると一枚の封筒を女が差し出した。


【オスカー】


封筒にはただそれだけ書かれていた。

「なんですか、この封筒?」

「その中にあなたに依頼したい内容が書いております。」


「し、知らない!  僕は帰る!」

立ち上がった瞬間に目眩がした。

「…くぅ。 急に眠気が..」



-こ、...このパターンはお茶に薬はいってますやん。

絶対.......そうですやん。-

-このパターンはお茶に薬はいってますやん....

絶対そうですやん......


頭のなかでループする関西弁.....................

........................................

...................ふと気づくとそこは薄暗い部屋のなかだった。

どうやら眠っていた様だ。

「。。。いったたた。 頭が痛い。

ここはどこだろう。

なんだか視界がぼやけるし、息苦しい。」


突然、天井から声が聞こえた。

「気がついた様ですね。」

あの女の声だ。

「おまえ、何したんだ! こんなところへ連れてきて、どうするつもりだ!」


「落ち着いてください、手荒な真似をしたのは謝ります。

ここはひとつ冷静に状況は把握されてはいかがでしょうか?」

状況?

僕の状況って。

私は薬を飲まされ、ここに連れてこられた。


薄暗い部屋には壁に大きな鏡、床に真っ赤な着ぐるみが転がっている。


そして鏡に映る私は青い着ぐるみを着ている。


部屋の隅には頭に黒い布を被った人間が転がっている。



.....ん?



繰り返そう。

私は薬を飲まされ、ここに連れてこられた。

薄暗い部屋には壁に大きな鏡、床に真っ赤な着ぐるみが転がっている。

そして鏡に映る私は青い着ぐるみを着ている。

部屋の隅には頭に黒い布を被った人間が転がっている。



「うわぁあぁあーーーー!!!!!!」



大きな声が出たはずなのに着ぐるみのなかでは声がこもりそれが余計耳に残った。

「青い! 人! 死んでる?!   僕、青い!? なんだ!」

軽くパニックになった。

着ぐるみを脱ごうにも脱げない。

「落ち着きなさい。その着ぐるみは厳重にロックされていて鍵を外さないと脱げない仕組みになっています。

そして、隅に横たわった人間は死んではいない。

あなたと同じ理由でここに連れてこられたのです。」


「なんだ、なんでこんな事をするんだ!?」


「隅っこで気を失っている男もそのうちに起きるでしょう。

 部屋には食料もあるからしばらく、その部屋でお待ちください」


音声はそこで途切れた。


青い着ぐるみの自分。


布を頭からかぶった横たわる人間。


床に置かれた赤い着ぐるみ。

そして、電気ケトルとカッップラーメン。


この部屋にあるもの全てが変だ。


夢かもしれない。

......思考が止まっている。

時間が進んでいないみたいだ。


僕は水の入った電気ケトルのボタンを押した。

そして唯一、信頼できるカップラーメンを食べることにした。

つづく。

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