見出し画像

流行とデザインに関する走り書き

人はあるまとまった期間を、同じく人間に囲まれた状態で過ごす。それはある時代を誰かとともに生きるということであり、コミュニケーションをとりながら日々を暮らすということともいえる。人がコミュニケーションする以上、人同士が等しく共有できる話題や志向というものが発生する。話題や志向は、まず属性の類似する集団内で共有され、感情を揺さぶり、熱狂を生む。それは時おり広く伝播し、さらなる熱狂を生みながら連鎖する。そして閾値を超えた後急速に廃れるか、あるいは熱狂は消えるものの平衡状態となる。
それは生まれ、熱狂となり、飽きられ、廃れる。あるいは、普通になる。
幾度か繰り返されつつも、その時代々々に応じて異なった形で変奏される。人はそれを流行と呼ぶ。

流行はその時代を生きる人々に通底する情念(強い感情)の流れが、ある具体的なプロダクトやサービス、あるいは概念として吹き出す刹那のモーメントである。

デザイナーは、その情念を常に把握していく必要がある。なぜならば、通俗的にいってデザインは「問題解決」に携わるからであり(この定義が字義通りに「通俗的」かどうかは微妙なところともいえるが、差し支えないだろう。noteだし)、「問題」というのは、突き詰めれば人間の情念に行き着くからである。

情念を掴み取ることが可能になるならば、その情念に対していかなるモノゴトを設計するか、それがいかなる解決と価値をもたらすかについて思考の筋道がクリアになる。
そして重要なポイントとして、その思考によって得られた「問題解決」の寿命(耐用年数)について理解することへの一助にもなるだろう。情念は時代によって変化する。流行には情念の変化が見え隠れする。流行の変化を追うことで情念の変化が見てとることができ、その分析の蓄積はやがて未来の情念を考えることに役立つはずである。

ここまで書きながら考え、考えながら書いた上で、
「時代によって移ろい、また人々の属する国や属性によっても様相が異なる情念を、いかにして掴むことが可能なのか」
これが「問題」である。

Photo by Jamie Street on Unsplash

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?