私の手のひらは小さいのだから、本当に大事なものだけ、それを1つしか持てないのだ。

私にとって大事なものは、
音楽だけだった。

朝起きたら
歌うためにストレッチをして、
歌うためにお白湯を飲んで、
愛犬の散歩をしながら
歌うために息出しをした。

歌うためにバランスの良い食事を作った。
通学は全速力で移動した。
歌う時間を確保するために。

学校に着いたら、
真っ先に音楽室に向かった。
それから、無心になって歌った。

現代文の授業は、
作者の意図や出題者の意図、
つまりは作曲者や指揮者の意図を
読み取るために勉強した。

たったひとつ、
音楽のために動いてきた。

虐待されていても、
いじめられていても、
辛かったけれど、
音楽を手放しはしなかった。

胸を張って、
音楽と向き合ってきたし、
大切にしてきたと言える。


でも、それを続けることが
どんどん難しくなった。

大事なものが増えたから。

友達ができた。
活き活きとやりたいことをやる自分になれた。
好きな人に出会った。


私は不器用だ。
ちっぽけな手のひらしかない。


二兎を追う者は一兎をも得ず。


自分がいちばん大切にしたいものを
いざ、ってときに
きちんと大切にできるように。

私は腹を決めておかねばならぬ。


逃げるな、私。

noteに目を通していただき、ありがとうございます。皆さまからいただいたサポートは、私の心身の療養に充てさせていただきます。またnoteを通して日々還元していけるよう、生きます。