芸術は才能ではなく、努力。漫画『ブルーピリオド』が教えてくれたもの

山口つばさが「アフタヌーン」で連載している『ブルーピリオド』という漫画が面白い。不良だが努力家で学業優秀な主人公・矢口八虎が、ある日1枚の絵と出会い、その絵が単に才能だけではなく、努力と技術によって描かれたことを知る。そののち、美大を目指す……という美大受験の青春スポ根漫画なんだけど、努力と芸術を描いているのがとにかく面白くないですか?

美大・芸大って芸術的才能(とは非常に曖昧な言葉だな……)のある人がいくというイメージが一般的だと思うけれど、日本に多くの美術予備校があるように「技術を学んで、努力して、勝ち得る」ものなので、実はあんまり通常の受験と違わない。紋切り型の表現をするならば、努力という才能があるかないか、ということだと思う。もちろん才能がなければ入ることのできない大学もある。

作中では固有名詞で実際の美大芸大が出てくるんだけど、日本で一番有名な東京藝術大学(「ゲイダイ」といえばこの大学のことを指す)は二浪四浪があたりまえ。主人公の受ける学部は実質倍率200倍とされている。

その一方で、学費が約50万円とめちゃくちゃに安いのだ。こうした固有名詞とリアルな数字によって、この漫画にはリアリティが宿り、読者の熱を加速させる。何が言いたいかというと、単に学費だけの話をすれば、東京藝大はめちゃくちゃに安いのだ。

ぼくがかつて通っていた芸術大学(私立)の学費は年間1,440,000円。初年度はこれに入学金の280,000円が加算され、前期だけで100万円のお金が発生することになる。高い……と思うなかれ、これでも安い。他の私立大学では180万~200万もの授業料が発生することになる。

自分の母校でいうと、たぶん「施設設備費」が高かったのは想像にたやすく、億単位の機材などが置いてあったので、他大もおそらく設備費や維持費にコストがかかっているのだろう(「文芸」の学科が安かったりするのはそういった理由もあると思う)。

高いとされている医学、私学、薬学などと大きく異なるのは、<就職につながらない>というその1点。とかく、就職したい人が行く場所ではなく、アートをしたい人が行く場所なのだ(卒業後、あるいは在学中に「商業」と接する機会のある人もいて、その人たちにはまた別の考えがあるのだと思う)。つまりコストパフォーマンスはすこぶる悪い。けどとにかく楽しいのだ。※当時の学部長は「平成ゴジラシリーズ」の監督だったからテンションもあがる。

自分が親だったら子供を進学させるかどうか迷うかな、と考えたが、やっぱり行きたいのなら行かせてあげたい。でもそれは『ブルーピリオド』にも描かれているように、「本気」である場合に限りたい。そう思ってしまうのは、あの閉ざされた芸術大学の中で、本気でなければ生き残れないからだ。
※ぼくは結局、途中でやめてしまったので本気ではなかったのだろう。
#コラム #エッセイ #漫画

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岡本尚之

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