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ぬくちゃんとキャンプとキノコスープと裂け目

すっかり夜になっていた。
川のせせらぎと焚き火の音が耳で遊び、キャンプ感を何倍にもしてくれる。
キャンプなんて何年ぶりだろう。
ぬくちゃんはテントを立てるのも火を起こすのも手際良くひとりでこなして、料理まで作った。
俺の出番は無かった。
『ちっくんは座ってていいよ』
俺はそういうの面倒だし、ぬくちゃんはそういうの好きだからお互い特に文句もない。
ただ火起こしは楽しそうだったからちょっとやりたかった。

ぬくちゃんが作った料理を沢山食べて、最後キノコスープを飲んで椅子に座った。
それから景色がキラキラ輝きだして動けなくなった。

『ぬくちゃんさっきのキノコスープ美味かったんだけどさ、何のキノコ使ったの?』

『ああ、さっき焚き火用の枝集めてた時に見つけたキノコだよ。美味そうだったから入れてみたんだ。』

『なるほどね。どうやら食べちゃダメなキノコみたいだね。』

『そうみたいだねー。変な感じだけど気分は悪くないね。』

『まあそうだね。多分死ぬことは無さそうだ。』

とにかく星がキレイだ。2人でそれぞれ景色を楽しんでいた。

変な音がした何かレジャーシートが破けるような感じの音。
空間が裂けていた。
あのキノコ幻覚も見えるのかよ。
とか思っていたらその裂け目から女の人が落ちて来た。
一瞬で裂け目が消え、俺の上に落下してきた。
腹を強く打ったが美人だったから悪い気はしない。
『なにアレ?破れた?どうなってんの?』
俺は女に聞いた。
『助かったわ。そうよね、わけわかんないわよね。えっと私は、、、』
『まあいいからキノコスープでも飲んで落ち着きなよ』
たしかに体が細かく震えて寒そうだ。
ぬくちゃんが怪しく優しい笑みを浮かべスープを差し出す。
『ありがとう。』
と言って美人はぬくちゃんがひとつ多めに用意していたイスに座ってスープをごくごく飲んだ。
『ぬくちゃん、そのスープは、、、』
『えっ、このスープがなんなの?アレ体が動かない。変な気分というか、、、いい気分だわ。フフ。』
『そういうスープなの忘れてた。』
『まあ、大丈夫じゃない?死ぬ事は無いでしょ。それよりも色々どうなってんのか気になるのに、聞けないよ。』
『吉野さんいるでしょ、占い師の。どうも俺たちが今日ここに居ないと困る人がいるって言うからさぁ、ここに来たの。』
『そういうの先に言ってよ。いっつも適当な占いする人でしょう?あの人が相性が良いって言った人達すぐ別れるでしょ?よく信じたね。今回はどうやら当たったみたいだけど。』
『吉野さんはそういう占いは専門外なんだよ。』
じゃあ詐欺じゃねぇか。

『そうなの助けてほしくて、ここにきたんだけど、なんかいい気分だし、とりあえず後にしましょう?』
『そうだね、とりあえずこのキャンプを楽しもうよ。』
ぬくちゃんも美人な女も恍惚とした顔で空を見ている。
俺は、そんなんで大丈夫かなぁとか思ったけど、すぐ満天の星に目を奪われてどうでも良くなった。

女が話し出したのは朝になって少ししてからだった。

サポートしてもらえたらすっごい嬉しい。内容くだらないけどね。