見出し画像

風のある午後に

よく晴れた 風のある昼下がり
自転車をこいで となりの町まで

ちょっとばかり 海のやつを見に
埋立地の工場の裏手の 堤防の上

誰もいない海は コンクリートに切り取られ
空まで真四角な顔で にこりともしない

いつだってそうだった
いつもそう

学校をやめたときも 仕事をやめたときも
ひとりぼっちに戻ったときも

同じように定規で引いたような線で
くすりとも言いやしない

逃げるように猫が走る そのあとを
追うでもなく歩き出して 見失う

堤防の上 目まいがしそうな潮の風に
見上げた青空高く 気の早い月のやつが

おかしな顔で笑う そんで何も言わないくせ
歩き出した僕の 背中をこっそり風で押す


 〇  〇  〇  〇  〇