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Grace of God

垂れこめた秋の朝 雲隠れしてるのは
何も太陽ばかりじゃないと

君は憂鬱そうな顔で ひとり
キッチンで湯をわかしてる

僕はといえば 読めもしない本を開き
白紙の部分を目でなぞってばかり

君は言う
本なんて捨てちゃえばいい だって

大事なことは何一つ書いてやしないのに
僕は言う

書かれていないことを読むために
本を読むのだと

君はあきれた顔で肩をすくめ
ひとり お茶を入れてため息をつく 

そして冬になる前に 少ない荷物をまとめ
シングルベッドといっしょにいなくなった

今も僕はひとり本を読む そして
君と同じ手順でお茶をわかし ため息をつく

長すぎる秋の夜 片方だけになったベッドで
ページの余白に今も思う

何一つ読ませてはくれなかった君の
底知れぬ憂鬱に 恩寵のあらんことを

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