この夏へ
まだらな雨雲が行く空に ちぎれた青空が
久しぶりの顔を出した日曜の午後
まだ太陽のやつさえ姿を見せてないくせ
湿度ばかりがぐんぐんと不快指数を上げる
どこへ逃げても生ぬるいビールみたいな
湿った風ばかり吹いてるけど
もえさかるような雑草の背丈は
とっくに君より高くなってる
汗ばんだシャツのにおいさえ
今はもうあの頃と同じじゃないけど
金網の向こうで並んでる鋼管は今も
錆びを浮かべて涼しげな顔してる
あの夏 だなんて振り返るほどじゃない
いつだってそう この夏だけが僕らの
〇 〇 〇 〇 〇
熱気は、果実同様、人間たちを熟れさせる。彼らは生きる前に成熟してしまう。彼らはなにも学ばぬ以前にすべてを知ってしまう。
(カミュ『反抗の論理―カミュの手帖2』高畠正明 訳 新潮文庫P.120)
〇 〇 〇 〇 〇