神アプリ 4話

◯横須賀港
自衛隊イージス艦
「ゴゴゴ……」
発射準備に入るトマホークミサイル
自衛隊員 「どうなっているんだ?」
自衛隊員 「わかりません。勝手にトマホークが…」
自衛隊員 「コントロールできません」
「シュポーーーン」
発射されるトマホークミサイル
地上すれすれを飛ぶトマホーク
レインボーブリッジの下を通るトマホーク
急に角度を上げ、上昇
頂点に達し、鷹のように狙いを定めるトマホーク。
ターゲットは国会議事堂
急降下

閃光と爆発

◯ラーメン屋
テレビでは謝罪会見が行われている
謝罪する自衛隊幹部の面々
アナウンサー 「昨夜の国会議事堂の爆破は自衛隊の誤射だということがわかりました」
アナウンサー 「昨夜、国会議事堂の前には、10万人を越すデモ隊と機動隊がいましたが」
アナウンサー 「幸いにも国会休会中だったため、議員は全員無事です」
アナウンサー 「この爆発による負傷者は51名。死者は4名」
アナウンサー 「この4名は寺門組の組員と確認されました」
アナウンサー 「死因はデモに巻き込まれ際の圧迫死と見られています」
アナウンサー 「昨夜の爆発との関係は現在捜査中です」」
アナウンサー 「政府はこの事態を受け、ただちに非常事態宣言を行いました」

◯デモ隊の映像
ふたりの会話がだぶる
信者A 「すごかったな昨夜は」
信者B 「美喜さんが両手を上げて『ミキプル~ン!!』って叫んだだら」
信者A 「国会議事堂ぶっとんだ(笑)」
信者B 「マジ、プルン、プルンだぜ」
信者A 「ああ、震えたぜ」
信者A 「俺人生で初めて『生きてる』って思ったわ」

◯BAR「ディラン」
美喜 「富士子さん」
富士子 「はい」
美喜 「昨夜の騒ぎ、おばさんの仕業だよね」
富士子 「機動隊とデモ隊が一触即発だったでしょ」
富士子 「花火を上げて、みんなの目を覚ましたかったのよ」
美喜 「そのせいで、今、日本は有事下、うかつに外も歩けないわ」
富士子 「ごめんなさい」
富士子 「美樹さん、こんなときだからこそ、国民をひとつにまとめるだけの優秀な指導者が必要よ」
富士子 「美喜さんは、今、日本中の注目の的」
美喜 「公安にもね」

美喜 「私、神なんてやらない」
富士子 「なぜですの?」
美喜 「神なんてやったら、がんじがらめ。窮屈と退屈で死んじゃうよ」
美喜 「富士子さんがこのまま、神続けたらいいじゃない」
富士子 「私でもどうにもならない深刻な問題があるのよ」

美喜 「へ~なんでもできるのにね」
富士子 「見ての通り私、おばあちゃんでしょ…」
富士子 「実年齢は2歳だけど」
美喜 「あは…ははは」
富士子 「ね、富士子、一生に一度のお願いよ。みんなを幸せにして」
美喜 「……」
ふてくされる美喜

◯長崎県沖合 野崎島
テレビ局のヘリコプターの音
(※女子アナがいいなあ…前原飽きた)
前原 「長崎県五島列島の北に位置する、ここ野崎時は世界遺産候補の地です」
前原 「昭和30年代には、およそ150世帯、650人の人々が集落を作り自給自足の生活を送っていました」
前原 「島にレンガ造りの立派で美しい協会もあります」
前原 「しかし、昭和のある出来事のせいで、管理人を除けば、今は無人島です」

◯フェリー「はまゆう」
アキラ 「野崎島に何が起きたんですか?」
富士子 「島に電気がきたのよ」
アキラ 「え、そんなことだけで島が無人に?」
富士子 「江戸時代、宗教の迫害を受け、野崎島に流れ着いた人々は、ひっそりと自給自足の生活をしていたのね」
富士子 「ずっと平穏な日々が続いたわ。電気がくるまでは」

アキラ 「電気が無人島に変えた…意味わからん」
富士子 「簡単なことよ。電気がくれば、お金が必要でしょ」
アキラ 「そうか、それまで野崎島の人たちは、お金なんて必要なかったんだ」
富士子 「いちばん大切なものはと聞かれて『お金』って答える人もいるけれど、お金なんてなくても野崎島の人たちは、宗教を持ち、穏やかで平和…幸せに暮らしていたのよ」富士子 「電気代のお金を稼ぐために、島の人達は出稼ぎに行くしかなかった」
富士子 「これが野崎島が無人島になった理由」

◯野崎島 船着き場
船から降りたアキラを出迎えたのは…

◯テレビ局のヘリの音
前原 「たいへんな人の数です。1万人は軽く越えているでしょう」
前原 「皆が船着き場のほうに続々と集まっています」

◯野崎島 船着き場
アキラを含め30人ほどの老若男女が船から降りる

アキラ 「こんにちわ」
裸族A 「なにしに来た?」
アキラ 「神一郎さんという爺さんを探して…」
(※作者註:神一郎さんがいるのは、野崎島ではなく、さらに船をチャーターしないと行けない無人島です)
裸族A 「知ってるか?」
皆首を振る
裸族A 「島に上陸したければ、服を脱げ、さもなくば、帰れ」

アキラ 「はい」
素直に服を脱ぐアキラ。
裸族A 「スマホは没収する」
アキラ 「あの~スマホは困るんですけど…」
アキラ 「…ダメですよね」
裸族A 「服と所持品は島を出るときに返す」

◯テレビ局のヘリの音
前原 「皆が協会の方角へ移動を始めました」
ぞろぞろと歩く人々。女の子から興味津々な目で見られるアキラ
アキラ 「なんか緊張すんなー」

◯協会の前
裸族A 「今日来た、新人を紹介する」
アキラ 「大神アキラです。よろしくお願いします」
途端に散らばる人々
アキラ 「あの、ぼくは何をすればいいのでしょう」
裸族A 「この島では何をするのも自由だ」
裸族A 「自分で考えろ」

◯アキラの元に集まる女の子たち
ファミレスでくっちゃべっていただけの4人組の女の子たちだ
女子A 「ねぇどこから来たの?」
アキラ 「東京です」
アキラに抱きつく女の子たち
アキラの陰茎を握る女子D
アキラ 「こ…困ります」
女子Dアキラのチンポをしゃぶりながら見上げる
女子D 「この島ではナニしてもいいのよ~」
アキラ 「神さま~たすけて~~~」
アキラの絶望的な声が響く
ズームアウト

◯長崎県
不法占拠反対!世界遺産を守れと書かれたデモ隊
住民の反応は冷ややか

◯横須賀港
衛星写真のような俯瞰図動画

ナレーション 「アメリカ原子力空母ジョージ・H・W・ブッシュとエンタープライズが横須賀に向かっています」
ナレーション 「先遣隊は、すでに横須賀基地 (海上自衛隊)と横須賀海軍施設に到着していますが…」
ナレーション 「今回のトマホーク誤射は両国だけでなく、同盟国の防衛システムを揺るがす大事件です」
ナレーション 「早急な原因の究明と防衛システムの見直しが求められています」

◯拘置所出口
ナレーション 「今、御厨進次郎氏が釈放されました!御厨進次郎氏が釈放されました!」
大勢の報道陣に囲まれフラッシュを浴びる進次郎
「神アプリ」が使えるようになって喜ぶ民衆

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「先日、暴徒化したデモ隊を率いていた女性が何らかの情報を知っているとして、政府が情報を求めています」
アナウンサー 「未成年であるため画像は公開されていませんが、こころあたりの……」

◯ラーメン屋
信者B 「ああ…教祖様どこにいっちゃったの~」
信者A 「ワクワク感がゼロ」

◯教団本部
教祖姿の美喜
富士子 「美樹さんよく似合ってるわ」
美喜 「誰かさんのせいで、外出られないし…」
富士子 「完璧よ」
富士子 「これで、日本は美喜さん、あなたのもの」
富士子 「さぁ、どーする? 今の日本」
富士子 「好きなようにしていいわよ」

◯テレビのニュース速報
ワゴン車の屋根に立ち両手を広げる美喜の姿
爆発する国会議事堂
群衆 「うおおおお~~~~教祖様」

両手を上げる教祖姿の美喜の映像
群衆 「おおおおおおおお~~」
信者B 「かわいい~~~」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「本日、正式に宗教法人「真円」が宗教団体「◯」(円)を設立しました」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 宗教団体「◯」が伊豆諸島の購入を発表」
アナウンサー 「利島、新島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島…伊豆七島すべてが『◯』のものとなりました」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「政府が『◯』の資産を凍結。税務調査に入りました」

◯テレビのニュース速報
キリスト教、イスラム教の映像にかぶせてナレーション
アナウンサー 「◯」の信者 2000万人を突破」
アナウンサー 「キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教、シーク教に次ぐ世界第6位の巨大宗教組織の誕生です」

◯テレビのニュース速報
アメリカ、イラク、シリアの映像にかぶせてナレーション
アナウンサー 「新たな宗教戦争が起きるのでは…と、世界中がピリピリとした警戒感に包まれています」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「政府による資金凍結が解除され、伊豆七島に教団施設が続々と作られています」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「信者には、教団側から信者へ毎月10万円の”お布施”を払うと発表」アナウンサー 「教団の資金がどこから流れているのか依然、不明です」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「『◯』信者数が8000万人を越えました」

1年後─

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「◯信者が移住を開始しました」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「民族大移動 日本本土から人が消えます」
アナウンサー 「政府は武力で阻止しようしましたが、さすが何もしていない自国民を攻撃することができません」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「日本政府、『◯』に対して、立法権、司法権を除き、すべての行政権、各省庁の委譲案を提示」
アナウンサー 「日本が崩壊しました」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「本日、新日本政府が誕生しました」

◯テレビのニュース速報
アナウンサー 「誕生したばかりの新日本政府の姿が徐々に明らかになっています」

アナウンサー 「まず、国会を解散し、大統領制を導入」
アナウンサー 「国会議事堂跡にヌーディスト村を建設中」
アナウンサー 「初代大統領に小泉神一郎氏が就任することが決定しました」

アナウンサー 「新日本政府、国家予算案を発表」

アナウンサー 「国家として正式にベーシック・インカム制度の導入を宣言」
アナウンサー 「それにともない、国家体制を一新するもよう」

◯大統領執務室
ヤシが茂り、まるで南国のジャングルのよう
全裸の女性たちに囲まれる全裸の神一郎
神一郎 「国会は解散、議員は全員クビで~す!」
神一郎 「残務整理はランダムに選出した人工知能が務めます」
神一郎 「霞ヶ関は閉鎖」

◯自衛隊幹部の部屋のテレビ
神一郎 「自衛隊は今日から音楽隊と改名」
呆然とする自衛隊幹部

◯富士山裾野
呆然とする訓練中の自衛隊員
持っていたライフルを落とす
「わわわわ~~~~~~」
一目散に走り出す隊員たち

◯衛星画像のような俯瞰図からのズームイン

無数の中国船団の姿
突然、どの船もプスプスとエンジンが止まる
船上で呆然と立ち尽くす中国人
漂流する無数の中国船
ズームアウト

◯大統領室
神一郎 「富士子さんに敵う防衛システムはありません」

◯大統領室から地球を捉えるまでのズームアウト
神一郎 「富士子さん無敵で~す」

◯渋谷の街頭テレビ
神一郎 「えへん、今日から国民保険、厚生年金はなしよ」
群衆 「えええ~~~~~~っ!!!」
群衆 「だまされた~~~」
若者A 「…ま、生きていくだけなら…」
若者B 「いままで老人たちの生活が優先されて、若者は冷遇されていたからな」
笑顔の若者たち

◯巣鴨通り
老人A 「今まで貰っていた年金とくらべりゃ、ベーシックなんちゃらは、雀の涙ほどだけどな…」
老人B 「でも、老後の心配しなくてすむわ」

◯商店街
買い物客で賑わっている。
ナレーション 「国民が老後のためにと貯め込んでいたお金が世の中に出回りはじめ
日本経済にやっと光が見えてきました

◯病院のテレビを見てる、診察待ちの老人たち
神一郎 「はい、みなさ~ん。社会保証費、介護費用払いませ~ん!」
老人たち固まる
老人C 「こ・困るわ~病気なのよ~」
老人D 「診療費を払えん」
神一郎 「診療費も薬代も頂きませ~ん! すべて無料とします」
全員 「おお~」
神一郎 「ただし、皆さん明日からこれを着けてもらいます」
腕輪をかかげる神一郎
神一郎 「この『健康くん』が毎日、皆さんの健康管理を行いま~す」

◯大統領執務室
神一郎 「国・地方の公務員も全員クビで~す」
「だああ~~~~っ!?」
震える日本列島(地図)

◯地方の役所
全員が放心状態で立ちつくしている
神一郎 「明日から仕事は、ぜ~んぶ人工知能にまかせてね」

◯ファミレス
女A 「私たちほんとにしあわせになったのかなー」
男A 「とりあえず、好きなことだけ、やっていけんだから、いいんじゃないの!」
男B 「俺、ミュージシャン目指す…」

ナレーション 「ベーシック・インカム制度を心の底から喜んだ若者がいた」

◯今にも壊れそうなおんぼろアパート
漫画家A 「もうバイトせずに漫画だけを描ける」
漫画家A 「しあわせ~だ~」

◯大統領執務室
神一郎 「難民・移民のみなさ~ん」
神一郎 「平和な日本へおいで~」
神一郎 「まってま~す」

(おしまい)

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