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白いカラス(2) ー神話から人間世界の事象へー

20145月、安倍首相が目指す集団的自衛権の行使に反対する市民団体や労働組合が「憲法9条があるのに、海外で武力行使する国にしてはいけない」と訴え、通行人にビラを配りました。

参加者の1人は、「北朝鮮や中国の脅威を理由にしているが、日常生活では感じない。脅威を無理やり作る出しているのではないか」と言います。


しかし、現実の社会では、北朝鮮が核開発を行い、中国は南シナ海でベトナムやフィリピンの領土で海底油田の開発を強引に推し進めています。また、日本の尖閣諸島周辺への侵入はいまだ続いています。

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時代の流れに追いつけなくて、現実と乖離してしまう法があっても、六法全書からは見えてきません。

今、国民の国防意識は高まっています。


平和は真空状態に浮かんでいる訳ではありません。
時代、そして隣国の統治形態や政治体制、冷戦構造など様々な条件を反映しているのですから。一国だけが「内面的な正しさを持つ憲法9条」を自慢しても、平和は訪れないのです。

国と国の間の「公平=平等な関係性」が成り立つという前提があり、その上で憲法9条国際法となっているなら問題ないのですが、残念ながら現実はそうなっていません。

このたびのロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにした今、国防というテーマが日本人の神話的思考から切り離されたに違いありません。
つまり、「人間世界の事象として実証的に考察すべき=日本社会の問題として理解されるべき」と受け止められるようになったということです。

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議論にはお作法があります。



お互いを尊重し、納得がいったなら人の助言や主張を受け入れることです。相手に反対する目的で議論をふっかけるのはルール違反です。
「こうこうこうだから、悪い」と言うべきところを、ただ「悪いから、悪い」と言うだけでは議論になりません。

具体的な内容とは無関係に必ず真になる文をトートロジー(循環論法、同語反復)といいます。情報量は多いけど、情報の確かさを持たないのです。

要するに、「何も述べていない無内容な文」「中身のない、説明にならない説明」がトートロジー。


例えば、2009年の福島瑞穂さん。
北朝鮮の弾道ミサイルが日本領内に落下する前に迎撃するという政府の方針に対して。
「迎撃ミサイルが目標に当たったら残骸(ざんがい)が落ちる。当たらなくともミサイルは向こう(国外)へ行ってしまう。国内外の市民に被害はないといえるのか」と激しい批判を展開。
閣僚の答弁に対しても、「当たらない場合は国益を侵害し、当たった場合でも単なる人工衛星だったらどうなるのか」などと迎撃批判を延々と続け、野党席からも失笑が漏れた。

でも、普通の脳があれば、
そのまま落ちてきた方が被害は大きい ⇒ まずはミサイルを破壊することで規模を小さくする ⇒ 国民の生命財産を守る
と考えるはず。

こんな当たり前のリスク管理も考えられない人が我が国の国会議員でいられるのですから、トホホ・・・(笑)。

まだまだいますよ。
立憲民主党の西村さん。
「プーチン大統領は自身の権力を増すために憲法を変えて自分の任期を長くした。そのようなことが日本で起きないように参院選で政治の流れを変えなけばならない」。

でも、憲法9条に関しては、国防のための改正であり、任期は無関係ですよね(笑)。

オーストリア出身のユダヤ人 ハンス・ケルゼンは、「少数意見も多数意見になる可能性を秘めている以上、保護されなくてはならないし、多数意見も絶対的な正しさをもったものではない。だから、『妥協を念頭に置きながらフレキシブルな態度議論して決定に至るべき』」と主張したんですけどねぇ。

ケルゼンも、日本がトートロジーで国会議員になれる国に成り下がるとは予想もしていなかったでしょうねぇ(笑)。

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今回は、平和論争の落とし穴について考えてみましょう。

連合国軍の占領下、幣原内閣が提出した天皇の統治権を認めたままの憲法改正要綱はGHQに拒否されました。米国側には軍国主義の復活阻止および米国に敵対しない日本にする意図があったからです。

また、GHQ民政局スタッフに理想主義者が多かった影響も大きく、長らく憲法9条日本人を監視し、平和をもたらす「神話」と化してしまいました。

護憲派の主張を要約すると、以下の2点かと。

「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し……」の戦争放棄の決意憲法9条でより具体的に示された。
「平和を愛する諸国民の公正と信義」に信頼を寄せることが、わが国の安全と生存を保障する。

「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」「政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは……各国の責務である」との表現は国際協調主義を表す。


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でも、護憲派のみなさんは、理想主義を唱える人ばかりなのでしょうか?
ここでは、議論が噛み合わないのは何故かについて考えてみたいと思います。
まあ、あげればキリがないのですが、主だったものだけ。



1.理想主義
2.無知な大衆
3.特定のイデオロギーを信奉する人 = 例えば共産主義
4.懐疑主義(懐疑論) 
5.不可知論(ふかちろん) 
6.価値相対主義
7.スパイ
8.原理主義
9.教育・メディアの影響


1.理想主義に立脚すれば、「国際経済が発展し、各国が関係を深めれば戦争は減る」となりますが、現実はそうなっていませんね(笑)。
「非理想状態(= 現実)で起こっている問題は、理想状態では起こりません」って、理想状態を作ってから言ってよ(笑)。


2.の無知な大衆については説明の必要はありませんね。


3.のイデオロギーのケース。
疑似科学だけでなく、平和について議論しようとすると、あるイデオロギーを信奉する人は、固定観念に盲目的に従っていることに気づかず、「自分たちは、きっと正しい(= 間違っているのは相手の方だ)」との確信を払拭できません。


4.懐疑主義(懐疑論)では、疑って疑って判断停止に陥ってしまいます。でも、懐疑論者であったデイヴィッド・ヒュームの言葉を借りれば、「過去の成功例(日本は紛争に巻き込まれなかった)をもとに未来もうまくいく(これからも侵略など受けないだろう)というのは、過去の成功から帰納的に推論される」っていうトートロジーでしかありません(笑)。なにしろ、戦後すぐと今では、諸条件が違いすぎるのですから。
むしろ、疑いが高じて、5.不可知論と結びつき、神や存在の確かさをも疑う(無神論)になります。
不可知論とは、我々には、ものごとの本質を認識などできない、とする立場。
「神は『いる』とも、『いない』とも言えないのだ」とする中立的不可知論に代表されますね。

6.価値相対主義:価値は各人の感情、意欲、信念に依存する相対的なものであり、価値判断には客観的妥当性がないのだから、決められませんってこと。

ところが、歴史を紐解くと、意外な真実が・・・。

民主主義においては「なんびとも一人以上に数えてはならない」という公平原則が考慮されている ⇛ 自由との両立が難しい ⇛ 特定の価値を絶対化せず、他者の自由を広く認め、自分も他者から強制・拘束されないという立場(リベラル・デモクラシー)。

でも、ナチス統治下のドイツを憂いていたハンス・ケルゼンは、「価値観が違うから、これ以上議論しても仕方がない=決められない」ということで価値相対主義を主張したわけではありません。

ケルゼンは、民主的手続きを経て制定されたからには、どんな悪法でも遵法義務がある。しかし、少数意見も多数意見になる可能性を秘めている以上、保護されなくてはならないし、多数意見も絶対的な正しさをもったものではない。
だから、「悪法に反対する者が増え、改正されるようにしなければならない」という願いを込めて「 悪法も法なり」と言ったのでした。
そして、「妥協を念頭に置きながらフレキシブルな態度議論して決定に至るべき」と主張していたのです。



7.スパイ(spy) :  政府や他の組織に雇われて、秘密裏に敵や競争相手の情報を得る人のこと。
印欧語の「見る」を意味するSpek ⇒ 古期フランス語のespion(見張る者)⇒ 英語のspy、espy (見つける、探し出す)、フランス語のespionnage (諜報)。
映画『007シリーズ』で広く知られているジェームズ・ボンドはエージェント

TVに出てはとんちんかんな説を唱えている方などは、エージェントではなくて機関員(インテリジェンスオフィサー)の疑い濃厚。上海電力とべったりの弁護士さんがいるとかいないとか(笑)。
あるいは、密かに得た情報を雇い主に知らせたり、雇い主が「敵」や「競争相手」と見なしている組織の活動を阻害・撹乱すること。リニアの建設を邪魔するどこぞの県知事さん、そうでないことを願っておりますよ(笑)。

 エージェントはサラリーマンですが、機関員は金銭を提示して釣られるか、ハニートラップでからめとられるようです(笑)。

ジャーナリストが同時にスパイ活動をもこなす場合もあります。

産業スパイだけでなく、◯本◯術◯議の学者さんが軍事技術をどこかの国に献上する場合もあるとかないとか(笑)。

8.原理主義:宗教の経典に書いてあることをそのまま実行しようとすること。
「どうして改憲はいけないの?」
「そんなことを考えること自体が不遜だ」
てな具合にね。
要するに、現実の方が間違っているの一点張りで生きていらっしゃる知性軽視の面々。必然的に、口を開けばトートロジーとなっちゃいますよね(笑)。


9.教育とメディアについての解説は、次回のお楽しみということで。




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