見出し画像

マンションにキッチンカーを誘致したときのお話

コロナ禍の「Stay Home」の影響もあって、キッチンカーが来ているマンションも増えてきていますよね。

今日はうちのマンションでキッチンカーを誘致したときの内容をまとめてみたいと思います。
今でこそマンションの敷地内で、かつ売上が見込めれば(管理組合の許可が得られること前提で)誘致可能なキッチンカー。
うちが誘致検討していた段階では、そのハードルは結構高かったのです…。

マンションにキッチンカーがやってくる!?

今でこそマンションにキッチンカーがやって来ることへの認知と理解が広まっていますが、私が導入検討をはじめた時にはまだサービス提供企業も手探りで拡大を進めようとしていた時期でした。

私が知る限り、「月夜のキッチン」がいち早くマンション居住者向けのサービスとして本展開していたように記憶しています。
この発表時はまだコロナのコの字もなかった時期ですし、私が住むマンションの周りは商業施設が多かったこともあり、今ほどの需要が見込める印象はありませんでした。
しかし、当マンションは1LDK/2LDK等の単身者・DINKS向け住戸が比較的多いことから潜在的な需要はあるだろうと判断し、先のニュースリリースが出された翌日にはキッチンカーの誘致について調査を始めました。

出店条件は「まちづくり団体」が要件…って、うち、ダメなの?

フロントさん「キッチンカーの誘致はできないようです…」

導入検討を始めて2ヵ月目、キッチンカー誘致プロジェクトはいきなり頓挫しました。

がすたま「え?公開空地はありますよね!?なんでダメなんですか?」
フロントさん「それは、まちづくり団体に登録できないからです」

当時のキッチンカーは「公開空地」での展開が前提
マンション居住者向けのキッチンカーの運営事業者(以降「事業者」)からは、キッチンカーの展開場所として公開空地を提案されました。
これを、「あぁ、臭いが出るから空き地でやるものなのね」という浅い理解を初めはしていたのですが、正しくは「まちづくり団体への登録を行った上で公開空地で展開する」ということだったのです。

まちづくり団体とは
公開空地があれば良いという話ではなく、公開空地を一時的に占有する場合には行政への申請が必要となります。
しかし、東京都には公開空地の弾力的な運用を支援するためにまちづくり団体という制度があり、この団体に登録すればにぎわい創出活動の目的において継続使用が出来ます。

つまり、先の「公開空地に展開する」とは、この団体制度に登録し継続使用できるようにするという前提があったのでした。

まちづくり団体

(参考)まちづくり団体登録制度(東京都都市整備局)

ただし、登録には下図の通り要件があり、当マンションは公開空地の敷地面積要件を満たせなかったため団体登録が出来ず、事業者から提案ができなかったという流れがあったのでした。

まちづくり団体要件

なお、登録団体には湾岸タワマンの名前がいくつか確認できます。

マンション

(参考)まちづくり団体の登録制度の概要(東京都都市整備局)

晴海の3つのマンションでは、1回目の緊急事態宣言が出されてからすぐに導入できていましたよね。
これは理事会の柔軟性もありますが、本制度に適合していたからという側面も少なからず関係しているものと考えられます(うらやましい)。

また、2021年9月末までは、国土交通省の通達で公開空地の一時的な占有が相当緩和されていますので、この限りではありません。
(詳しくは、「新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店等を支援するための公開空地等の一時占用等の取扱いの延長について」へ)

最後の切り札「車寄せ」。管理規約との整合性は…?

お断りから数日間は少ししょんぼりしていたのですが、ある時、おぼろげながら浮かんできたんです。車寄せが。

管理規約との整合性は確認が必要
車寄せは自マンションの敷地になりますので行政の申請や許可は不要ですが、今度は各マンションのルールともいえる管理規約との整合性を確認する必要があります。

標準管理規約

(参考)マンション標準管理規約(単棟型)

上記はマンション標準管理規約の雛形ですが、これに則って管理規約が作成されていると、赤枠の通り「敷地及び共用部分の第三者の使用は総会決議事項」となります。

最初はトライアル扱いでスタート
当マンションは特に捻った制度にはなっていないため、敷地の利用は標準管理規約ベース(総会決議)でした。
そのため、厳密には総会決議が必要なのですが、「ニーズを確認すべくまずはトライアルで実施。問題があれば即中止」という形で理事会決議を経て、トライアル運用をスタートさせました(現在は総会承認済)。

余談ですが、この車寄せという敷地を活用するアイディア。
その後、キッチンカー誘致の事例で数多く確認できますので、うちのマンションがキッチンカー誘致の敷居を下げたんじゃないのかな…と勝手に思っています。
(まぁ、コロナ禍で早かれ遅かれ敷地利用に至ったとは思いますが…管理会社が敷地利用を積極的に認めることはないでしょうから、先行事例にはなっているのかなと思います)

キッチンカーがやってきた! その反応は…?

そして2020年のとある月。念願のキッチンカーがいよいよマンションにやってきました!

画像1

(参考)キッチンカーのイメージ。実際はもっとおしゃれよ(いらすとや)


導入当初は反対する声の方が目立つ
実際に寄せられたコメントをピックアップすると…
「こんな目立つところでやってて、マンションのイメージが安っぽくなる」
「匂いが気になる!」
という感じで、(想定内ではありましたが)やはり反対の声は少なからず存在しました。

導入から数日は評価するコメントが殆どない…!
マンション管理の現場に限らず、サービスに満足している方があえて評価するようなコメントを出すことはないんですよね。導入から数日間は評価するコメントが見受けられませんでしたので、キッチンカーを誘致した立場としては気が気ではありませんでした…(もう少しお褒めの言葉も欲しい…)

管理クラスタからは厳しい反応
財務や規約との整合性にこだわりが強い人が多い管理クラスタ。
お世話になっている「RJC48(マンション管理組合理事長勉強会)」でもキッチンカー誘致は先駆けだったこともあり、緊急事態宣言前は「商業施設が近くにあるのに、共用部分を使わせてまでやる必要あるの?」という反応を何人かの方から返され、ちょっと浮いておりました(笑)

「あれ?今日は来てないの?」
風向きが変わってきたのは、こんなコメントがコンシェルジュカウンターに寄せられてからです。
開始当初は平日でもキッチンカーの来ない曜日が存在していました。
そのため、来ない曜日にこのような声が寄せられるようになり、ようやくサービスが定着する流れが見えてきたのでした。

コロナ禍でキッチンカーは定着へ

誘致から1カ月ちょっと経過してやってきた1回目の緊急事態宣言。
あの時はもう何か営業していることが「絶対悪」のような扱いだったことを皆さん覚えていらっしゃいますか?
「クラスタが発生してしまう!周りの飲食店も営業してないのだから、中止すべきだ!」
キッチンカーに対しても、このような声がありました。

飲食店がやってない=需要は増えるんじゃないの?
この時は事業者からも、営業を継続して良いのかという確認が入ったのですが、私は逆に需要が増加すると踏み、ちゃっかりとコロナ禍のどさくさにまぎれて曜日と誘致台数を拡充しました(笑)

結果として読みは当たり売上は増加。先に取り上げた「月夜のキッチン」も緊急事態宣言下で売上が伸びたことがPRされています。

その後、どうなったかと言えば…キッチンカーはご存じの通り大規模マンションなら決して珍しくないサービスに至っており、今日時点では市民権を得たものと考えられます。

マンション居住者向けキッチンカーって今後も続くの?

最近になって、キッチンカーのオフィス需要が回復しつつあること、そのため軸足を徐々にマンション等の生活の場からオフィスに戻しつつあることを、出店者からお話いただくことが増えています。
マンション居住者向けのキッチンカーは、オフィス需要減少と外食需要の取り込みの両方で活性化した経緯があることを踏まえると、今年の年末くらいには縮小しているのではないかと踏んでいます。

また、誘致した側の視点としては、コロナ禍で多くのマンションがやり始めたので、サービスの差別化としては短期間で終わったなぁ…という印象が強く、事業者側・管理組合側の両方の意識として無理に持続する流れには至らないのかなと思っています。

ありきたりな結論ですが、この先もキッチンカーをマンションに呼びたければ、ちゃんと買いましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?