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KURAYAMI制作環境レビュー(エンジニアリング編)

早速機材自慢かよ、と思われそうですが、内容的に書くのが一番ラクだったので…それに機材の話を書くのは楽しい(重要)。とはいえ手持ち全ての機材を書くと膨大になるので、まずはミックス、マスタリングで使う機材に絞りました(それでも結構長い)。
※ 現行機でないものには、後継の機種へのリンクを張りました。

オーディオ・インターフェース - Lynx Studio Technology Hilo

オーディオI/Fと書きましたが、肩書きは“Reference A/D D/A Converter System”で、インアウトとモニターのハブになる機材です。各種I/Fボードを入れて初めてオーディオI/Fとして機能します。

とはいえボード無しではあまり売ってないし、実質多機能オーディオI/Fです。うちは買った時に使ってたPCにUSBポートしか無かったんで、USBモデル。他にもThunderbolt 3、Danteで使えます。

リファレンスを謳ってるだけあり、ヘッドフォンアンプもマスターアウトも解像感が高く定位がいいです。他の同価格帯とは比べたことがないですが、先代のEcho Layla24(オーディオマニアにもウケた古の名機)も出音良かったので、それと遜色がないだけで自分としては満足。

ただアナログ入力が2つと足りないので、後述のマルチチャンネルADDAコンバーターとADATで繋いでます。Hiloはクロックも出せるので、そちらを使って同期してます。

最も重宝してるのは内蔵ミキサーのルーティング面です。ハードシンセ 、アウトボード、テレビの音などのソースをモニターに回したり、DAWから出し入れするのに、配線を変える手間が減らせて非常に取り回しがいいです。

43型テレビをPCモニタにしてるんですが、光端子を繫いで映画をモニタースピーカーを使って観つつ、突然セリフをサンプリングって時も、即ルーティング出来ます。

欠点は、本体画面のミキサーレイアウトが把握しづらいのと、タッチパネルとノブの精度がイマイチなところ。PCやタブレットから専用ソフトでも操作できますが、これも表示がバグったりリンクが切れることがあって、どうも安定しない。

そうしたソフトウェア面、最近はファームもアプリも更新がありませんが、オーディオI/Fとしては現行OSで安定してます(Mojave、Win10で使用中)。

リリースから結構経ちましたが、未だ現行機として他に代え難い存在感を放つ名機です。本家が

Hilo is our most transparent interface ever.

って言い切ってるのも頷けます。

Lynx Studio Technology - Hilo

モニター・スピーカー - IK Multimedia iLoud MTM

やっぱ普通のマンションの一室なので、モニター環境には限界があります。賃貸だしあんまり無茶できない…でも出来るだけいい環境にしたい…。そんな煩悩から買い替えたのがこれです。

ツイーターが真ん中にある独特な仮想同軸構造、音響のデジタル制御といかにも現代的な設計です。なによりARC(自動音場補正システム)が内蔵されてるのが魅力。

最近同機能を搭載する競合機も増えてきましたが、PC内でソフトで補正するよりスピーカーだけで補正できたほうが、再生ソースを選ばずクオリティコントロールが容易です。

測定と補正の精度は本家ARC SystemやSonarworks Referenceには劣るのかもしれませんが、この手軽さは圧倒的で、測定用マイクが付属で本当に本体だけでキャリブレーションしてくれます。補正のパラメーターが見れないのは、少し気になりますが。

音質は定位がよく、音の立ち上がりも良好です。f特もですが位相特性が良さそうな音。そして低域がこのサイズでは考えられないくらい下まで出る。低域、”出てればいい”わけでもないですが、”とりあえずでも聴こえる”というのはビートメイクのフェーズではモチベーションの向上にとって大切です。

一応、低域は裏のスイッチで40、50、60Hzで調節できます。設置によってはさすがに出すぎだよって場合はある。

欠点、長所でもあるんですが、キャビネットが樹脂で自重が軽いことです。音量が大きめだとすぐビビります。部屋の共振とかの問題もあるんですが、このサイズにしてはローがかなり出るので惜しい…。

いいスピーカースタンドにネジ止めなら、ビビらずに出せるのかな。うちはスチールラックに置いてますが、スピーカーの下に御影石の板、ソルボセインマット、下段にレコードを詰めて、ラックの足に制振ゴムを敷いています。

あと何故かT-RackS5deluxeが付いてきて、異常なコスパの良さです。

IK Multimedia - iLoud MTM

モニター・スピーカー - Genelec 8020B

[しまってるので写真は無しです]

先代のモニタースピーカー。めっちゃ憧れのGENELECだったので処分できず、何かの時に使えるよう残してます。

キャビネットが密度の高さを感じる金属でサイズの割に重量があり、しっかりと鳴ります。ただスイートスポットが非常にシビアで、綿密に測って設置した上で背筋を伸ばして向き合わないといけない、厳しい鬼軍曹的なモニターです。

上位の径がデカいモデルの方がよりGENELECらしい音なんだろうけど、スタジオモニター系のメーカーでベッドルームトラックメーカーでも気軽に置けるこのサイズ感は、買った当時は選択肢が少なく貴重でした(今はめっちゃあって良き)。

スタジオモニターでは普通背面にあるボリュームが前面にあって、自宅向けを意識してたようです。

何度かアップデートを重ねた現行機は、見た目はほぼ一緒ですが設計はかなり変わったようです。ボリュームは背面に戻っています。

Genelec - 8020D

モニター・ヘッドフォン - Focal Listen Professional

恥ずかしながら試聴せず評判だけで、楽天セールのときにポイント使って衝動買しました…でも買ってよかった…。まだ詳細にレビュー出来るほど使い込んでませんが、パッと聴きはフラットで聴きやすい。

ケーブル着脱式ですが、カールコードとは別にリモコン・マイク付きケーブルが付いていて、スマホに刺すだけでチャット用ヘッドセットになります。なんというやさしさ…。

Focal - Listen Professional

モニター・コントローラー - TC Electronic Level Pilot

ご家庭だとリファレンスレベルを決めた後でも、使う時間帯や再生ソースによってちょいちょい音量を変えられたほうが都合がいいので、スピーカーの前にパッシブボリュームを入れてます。

Hiloで調整出来なくないんですが、マスターボリュームをあまりいじりたくないのと近くに置けるので。パッシブですが音質変化も少なく重宝してます。

アルミ削り出し感がいいです。あとXLRで入出力できるのが強み(他はフォーンとかRCAが多い)。

TC Electronic - Level Pilot X

ADAT A/D D/Aコンバーター - Focusrite Clarett OctPre

先述のHiloの入力拡張用機材。マルチチャンネルでADAT付きの手頃なA/D D/Aコンバーターを探すのは、結構大変でした。高級機ばっかりなんですよねー。流石にHiloと同じくらいの値段とか出せない。

でも老舗Focusriteが手頃なやつを出してました。コンソール直系の、とは言いませんがマイクプリとしても使えます。最近はチャット飲みのときに58を雑に突っ込んでる(笑)。

AIRスイッチは、押すと眠たい音にお手軽に明瞭感が出せます。マイクプリのついでみたいな機能ですが、意外と使える。リズムマシンの録音とかにめっちゃ使ってます。

最近のFocusriteは個人的に好きです。赤くてかっこいいー。

Focusrite - Clarett OctPre

マイクプリアンプ - Drawmer 1962

今のところうちの唯一のアウトボードです。これについては探すきっかけになった記事、ベルリンのテクノデュオにしてArtefact Mastering StudioのエンジニアDadubのインタビューの引用から入りましょう。

機材は関係ないと考えているようですが、実際は何を使っていますか?
Giovanni Conti:
機材が関係ないというのは、それが最新だったり、最高級だったりする必要はないっていう意味だ。30年前の機材でも先月発売された機材よりも良い音を出せたりする。重要なのは、機材に対してしっかりと理解しておくこと。例えばコンプレッサーならば、それを使って音にきちんと個性を加えることができるようになっていなければならない。もしくはプリアンプだったら、プラグインではできない形で低音にパワーを与えることができなければならない。僕たちはパンク的な価値観で育ってきたから、安い機材で出来る限りのことをやろうとするんだ。サウンドカードは5000ユーロするから安くはないけど、でもビッグなスタジオみたいな、30万ユーロもするような機材は持っていないよ。僕たちが持っているのはDrawmerのプリアンプ1962だ。
このプリアンプが優れている点は? 何故これを選んだのでしょう?
Giovanni Conti:
3つのチューブが備わっているという点だね。インプットに1つ、ノブでコントロールできる奴が1つ、そしてアウトプットに1つ備わっているんだ。サウンドをデジタルから電気信号へ変化させて、それを真空管かアナログ回路に通す時、サウンドはもうゼロワンの世界じゃなくなる。音の芯に迫っていくんだ。プラグインでも真似はできるけど、プラグインにはノイズが存在しない。ノイズとハーモニックディストーションを信号に加えるというアイディアは直感的には理解できないと思う。というのは、通常なら「マスタリング用にはとにかくクリーンに聴こえる機材が欲しい」と思うのが普通だからね。でもこのDrawmerは少しノイズを加える。だけどこれはトラックにとっては良いことなんだ。特にデジタルで制作した音を処理すると、そこに物理的な存在感を与えてくれるんだ。
Machine love: Dadub - Resident Advisor

彼らのマスタリングは詰まって粘りのある独特の質感なんですね。いかにもアーティストがマスタリングしてる音なんですが、好き嫌いは出ると思います。自分は彼らのサウンドが好きで、このインタビューにもわかりみがありました。

それで特に記事で具体的な言及があり、プラグインで替わりのないDrawmer 1962に興味が湧いたので、数年探して中古を購入しました。

マイクプリという分類ですがインプットが豊富で、ラインレベルにも対応してます。入力アンプ(ブライトネス、リミッター付き)、フィルタ(LF,HF)、エンハンサー、ファインEQ、Tube、アウト部という構成で、コンプこそないですがチャンネルストリップに近いです。

インタビュー内の写真をよく見るとエンハンサーやEQなどもオンですが、色が付きすぎるので自分はTube以外通してません。

入力 、中段、出力でそれぞれ突っ込むと、整数倍のハーモニックディストーションが増加します。特に奇数倍音が強く出るようですが、中域が前に出て濃い音になります。音の立ち上がりも微妙に変わる。

インダストリアル系のテクノでやや深めに、ダブテクノでは浅めに、2ミックス後これを通してから提出したりしてます。これはエンジニアリングというよりは趣味の色付けか、信仰に近いのかもしれない(笑)。

特にビンテージ機材ではないんですが、60シリーズはこれだけがディスコンのようです。メーカーにもオフィシャルな情報がない。この機材についてはいずれ解析記事を書く予定です。

DAW - Steinberg Cubase Pro 9.5

人生最初のDAWがCubase VST5で、以来使ってます。ただ最近トラック制作には全く使ってなくて、ハードウェアのレコーディングとミックス作業だけに使ってます。ミキサー画面がこれが一番慣れてるので、ハードでもソフトでもマルチで取り込んで、ミックスダウンはこれです。

でも最近のミックスは微々調整しかフェーダー動かしてなく(取り込み時点でバランス取ってるし、プラグインで音作りながらゲイン調整してる)、Liveのアレンジメントの方が合理的だし、そろそろ使わなくなるかも…。現行はバージョンが11ですね。

Steinberg - Cubase Pro 11

オーディオエディタ - Steinberg Wavelab 10

Wavelabは7から使ってて、その頃はUIがクソだったんですがだいぶ改善しました。波形編集用だったSoundforgeから乗り換えましたが、プラグインが刺しやすいしモンタージュやDDPマスター作成が便利で、マスタリングにも使うようになりました。メーター系も充実してて良いです。

Steinberg - Wavelab 10

プラグインは? - おわりに

ミックス、マスタリングといえばプラグインも重要ですが、これは書いてるとキリが無いので、パッと思いつく名前だけ。
Waves - NLS, Aphex Vintage Aural Exiter, API 2500
Plugin Alliance - SPL Stereo Vitalizer mk2T, Black Box Analog Design HG-2, brainworks bx digital V3
UAD - Studer A800, Empirical Labs FATSO Jr, Manley Massive Passive, Manley Variable Mu
PSP Audioware - Vintage Warmer 2
Fabfilter - Pro-Q 3
A.O.M - Invisible Limiter
好きなプラグインはいずれ個別の解析記事を書きたい。

以上、KURAYAMIがミックス、マスタリングで主に使用してる機材の紹介でした!

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