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いかにして私がVRChat内で受肉するに至ったか

2021年の暮れからぼちぼちVRChatに入るようになりました。サムネイルはVR上でKURAYAMIとして活動するために作成した、オリジナルのアバターです。多分VRChatを始めた人の殆どの人がそうだ思いますが、やはり紆余曲折があったので、経緯と感じたことを記しておこうと思います。

VRChatへの興味

ゲーセンに入り浸っていた子供の頃から、仮想現実の技術は究極のゲーム体験になるとずっと楽しみに待っていました(“ゲームーぴあ”にときめいていたあの頃…)。月日は流れオッサンになって、PSVRの登場でやっと、まともなレベルで個人が自宅で使えるVRゲーム環境が登場。エースコンバットやANUBISなどで部分的には期待通りの体験を得られましたが、ほかに魅力を感じるゲームがほとんどなく、稼働率は下がるばかり…。

2017年にリリースされたVRChatは、一部の盛り上がりをツイッターなどで見ていました。ユーザーが自己組織化して世界をほぼ無制限に拡張していき、自作のアバターで自由な姿で交流するコミュニケーションツールとして、注目はしていました。ただ要求されるPC、GPUとVRヘッドセットを合わせた環境を考えると、投資額に見合わないと当時は考えてました。音楽機材の方が優先度高いし。あとあの独特のサービスとしての”洗練されてなさ”に、(自分も含めて)ギーク以外には広まらなそうだし…と思っていました。

2020年にはコロナ禍中に入ったこともあり、必然的に仮想の音楽活動の場と意識して情報収集をしていました。SHARPNELさんを始め、ごく一部にはかなり早くからVR内でクラブミュージック系の活動をしてる方もいましたが、自分がVRクラブが身近になってきたなーと感じたのは2021年アタマ頃でした。

その頃に自分が関わっている秋葉原重工のスタッフ用Slackで、VRChatのレイブシーンを取り上げた個人制作のドキュメンタリーを勧められて。

日本語字幕付きです

この動画の最後に、最もリスペクトを受けるクラブとして今ではVRChat外にも知れ渡る、ゴーストクラブが紹介されていました。参加環境に左右されるとはいえ、このクオリティで仮想空間で音楽を楽しめるようになってるとは、ちょっと想像を超えてました。なるほど、これは行ってみたいぞ…。

VRChatデビューはピューロランドで

そして少し意外な形で機会は訪れます。2021年末、日本の誇るKAWAII文化の総本山・サンリオピューロランドが、「SANRIO VIRTUAL FES」なる仮想音楽フェスをぶち上げたのです。

実は自分はカジュアルなサンリオファンで(キキララ推し)、ピューロランドにも4,5回行っております。サンリオは音楽を始めサブカルチャーの取り込みにすごく貪欲で、コロナ前にはあらゆるジャンルの尖ったDJやアーティストを集めて、屋内ハロウィンレイヴを毎年開催していました。

ピューロ森のステージで観たkyokaたん(Raster Noton)のド暗黒電子音ライブ

そんなピューロランドがコロナ禍にVRで音楽フェスに乗り出した、それはただ事で済むはずがない。なんと協力者にゴーストクラブの0b4k3氏の名前が...!ピューロランド最下層に存在するフロア(という設定の)”ALT3”のディレクションをするとのことで、実質サンリオ協賛のゴーストクラブ!これはなんとしてもVRで参加したい...!

しかし自前でVRで参加する環境がないため、盟友であるR-9君に協力を要請し、彼の自宅に押しかけて体験したのでした。その時の様子はR-9君の記事に詳しいです。

VRChatをベースにした商業のVR音楽フェスとしては、貴重なモデルケースじゃないでしょうか。仮想の会場の動線や有料/フリーゾーンの複雑さ、複数の参加環境の分かりづらさなど、普段のピューロのターゲットをまったく無視した異常に参加ハードルが高いイベントで、問題も多かったと思います。しかしそれ以上に今、この自由度と規模の仮想音楽フェスをやり遂げた実績は、必ず今後に繋がると思えるいいイベントでした。

で、近くのダイナーで晩飯を食いながら感想戦をしてる最中に、Oculus Quest2 (現Meta Quest2)を注文してました。それくらいすごい体験だった。

Meta Quest2でVRChat事始め

VRChatはPCだけでなくQuest単体アプリがあり、かなりの制限があるもののスタンドアローンで参加できます。PC環境とクロスプラットフォームなので、買って登録したらすぐにQuestに対応した範囲内で、誰とでもコミュニケーションが取れます。

この”Questに対応した範囲内””かなりの制限がある”がクセモノで、Questユーザー同士でQuest対応ワールドに集まってるうちは心穏やかなんですが、PC環境のフレンドのアバターが見れなかったりPCのみ対応ワールドのイベントを知ったりすると、PC対応への欲求が強くなります。なんだか強いお酒を飲んだみたい…

とはいえ、Quest対応ワールドにも制約を乗り越えた素晴らしいものが多く、またVRゴーグルだけですぐ動かせるメリットもとても大きいです。後述のPC環境が整った今でも、ちょっと雑談するときとかはQuestだけでログインしてます。準備がラクだし。

Mac環境におけるPC版VRChat実現への道

というわけで、Quest環境でも十分にVRChatは楽しめますよ。でも、せっかくならゴーストクラブやSHELTER、CAT CLUBなど、本格的にVRクラブシーンなどを体験したい…。やはりGPUを含めてそれなりのスペックなWindows PCが必要…!

うちは現在デスクトップがMac mini、ノートがMBP13“という環境で、どちらもGPUはIntelの内蔵チップです。Mac miniにはBootCampでWindows10Proが入っていますが、このままではPC版VRChatが動きません。

最近のMacはTB3接続でグラボを外付けにできるeGPU BOXという機器に対応してるんですが、BootCamp Win環境下でeGPU BOXの対応は保証されてません。野良動作報告は結構あるんですが、それぞれ使ってる環境や起きる不具合が微妙に違って、確証がない。そしてeGPU BOX+グラボで9万円は下らない。賭けで9万円は厳しい..。

昨今の高騰しているグラボの価格推移を眺めつつ、Mac miniとeGPU BOXで人柱覚悟で実験するか、さらなる大枚を叩いて動作確実なゲーミングPCを買うか悶々としていました。そしたら貴重なeGPU BOX一式を、使ってないから貸してあげる、という奇特な友人が現れました!(しかも結局くれた!)

eGPU BOXがAkitio Node、グラボがGeforce RTX2070という一世代前の構成ながら、それでも全然安いものではないので、非常に助かりました。しかしMac OSではそもそもGeforce非対応、BootCamp Windows下では無理かな…と心配でしたが、普通に動きました。

最初すごく不安定でしたが、なんとか安定動作に成功しました。簡単にコツを書いておくと、

  1. eGPUを使う時は、本体やUSBハブに繋ぐデバイスを最小限にする(多分リソースが競合しなければ大丈夫だが、特定がめんどくさい)

  2. eGPUの電源は、OSが起動して落ち着いてから入れ、PCを終了したあとに切る(もしくはGeforceアプリからドライバを切断)

  3. それでも動かなければ刺すThunderboltポートを変えてみる

これで多分安定します。が、やはりグラボやeGPU BOXの相性、Windowsのバージョンなどで、大きく状況が変わる可能性は高いです。

ともかく、これでソロでならそこそこ重いワールドでも見て回れるようになりました。

ゴーストクラブにも入れた
VR内のサイバーパンク部屋で友人と団らんもできる

受肉する器の錬成

PCでVRChatに入れると、PCの性能と自分の技術の許す限り青天井に自由度が高くなります。 アバターはそのひとつですが、パブリックで配布されているアバターや、BOOTHなどで売られているアバターを少し改変するだけでも十分で、そういう方は多いです。

自分は先々の音楽活動にはあった方がいいので、すぐオリジナルのアバターを用意することにしました。とはいえ3DCGの経験はまったくないので、VRoid Studioという人間アバター制作アプリを頼りました。全身のタトゥーが光る、翼が8枚ある、関節が逆に曲がる、みたいな突飛なデザインにしなければ、それで十分行けそうです。

VRoid Studioはゲームのキャラメイクのように、パーツや色のパラメータを変えて好みの人間キャラを作れるアプリです。パラメータの数が多くて、可変幅も広いです。髪型や服などが女性キャラ向けに偏っている(アバターアプリはありがち)、作れる年齢層の幅が狭い(じいさんとか作るには多分相当工夫がいる)、基本VRoid特有のアニメ調テクスチャになる、あたりが問題だけど、一般的なヒトガタのキャラクターは大体作れそうです。体や服の各パーツに対してテクスチャーをインポート・エクスポート出来るので、お絵かきアプリが使えれば更に自由度が上がります。

VRoidからのエクスポートはVRMという形式ですが、VRChatの仕様に準じたVRoid内調整や、Unity上での変換作業が必要です。またQuest単体で使うにはPC版からQuest互換への対応も必要です。一元化した情報源がなく、問題ごとに検索したり、古い情報を現行バージョンに読み替えたりして、結構苦労しました。でも根気よく調べて試行錯誤すれば一つ一つは難しくなく、3DやUnityの専門知識がなくてもなんとかなります。

見る人が見ればわかる苦労の一部

結果、ヘッダーで紹介したそれなりにKURAYAMIのイメージを体現したアバターが完成したわけです。

VRChatの活かし方

VRChatの魅力、良さはさまざまな面でありますが、世界中の人と距離の制限なく、しかも身体性を伴って交流できる、というのが特に重要だと自分は感じています。記事の執筆途中に関東を離れましたが、距離の壁をなくして友人と逢える、というのが最終決断の一助になったのも確かです。もちろんできることは限定されますが、チャット飲み2.0ツールとしての機能性、かなり高いです。

 また、自分はKURAYAMIというサウンドアーティストとして表現活動の場を求めてJOINしています。VRDJもVRクラブも増えましたが、ジャンルやスタイルが画一的だし、次はライブパフォーマンスの層が求められると(願望込みで)思ってます。まだやり方もよくわからんし、自分のスタイルやジャンルがVR向けかはわからないけど、今年中にはやっていきたい。

ちなみに、リアルとVR両方のクラブで会う人とは「VRクラブは現実の代替ではない」という共通認識があります。現実のクラブにあってVRクラブにない体験はあるし、逆もまた然り。特に最近は視界を直接ハックしたり、現実ではありえない空間などの非現実寄りのクラブ系ワールドが目立ち始めてます。せっかくVRなんだから、現実と差別化した方がいい。現実のクラブと同期させたMRイベントなんかも、期待値高いです。

視覚をハックする系のCAT CLUB

何にしても音楽があって人が集まれれば、現実に限らずVRでもブロックパーティーが成立するというのは、都市に集中しがちなアンダーグラウンドミュージック好きには福音になると期待してます。

最後に将来性について少し批判的な面を。VRChatは現状、技術面も文化面もだれでも気軽に使えるシステムとはいえず、共通のインフラとして受け入れられるには問題が山積みです。特に自己組織化した長期的なコミュニティの形成と成長には経済圏の確立が必須だけど、数多の野生のプロが底なしのクオリティの体験を無償で湧かし続けている、という状況は正直あまり健全だと思えません。推しに金を積ませろ。

投げ銭やアバターの売買などのエコシステムが自然発生していますが、現状各自で外部サービスなどを利用して価値交換している状況。VRSNSはVRChatが寡占に近いユーザー数ですが、運営は通貨導入には否定的なので、そのあたりを軸に地殻変動が起きるかもしれません。

個人的には国産のClusterにも頑張って欲しいなぁというところです(最近アバターをインポートした)。

もう一つのアバター、くらやみ

おわりに

新技術はだいたいそうですが、特に体験が物を言うVR技術は、まず体験してみるのが吉です。まだの人は是非一度入ってみることをオススメします。

自分はログイン頻度もそんな高くないし、結構限られたワールドにしかいませんが、KURAYAMIのVRChatユーザーネームは暗闇KURAYAMIですので、お気軽にフレンド登録してください!おすすめワールドに連れてって

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