見出し画像

おばあちゃんの手 〜山菜の話〜

山菜の季節なので、張り切って山菜を故郷から取り寄せてはせっせと料理している。

山菜は、買うと結構いい値段するけど、田舎ではそこら辺に生えているご馳走だ。旬の時期に小一時間も沢や山、林の中を歩くとカゴ何個分も取れたりする。

さらには、各地区に山菜採り名人がいて、いただくことも結構ある。もらってばかりでは悪いので、代わりに畑でとれた野菜や、これもいただきものなんだけどの食べもの、沢山作った郷土菓子などをお返しにする。あげたり貰ったり。

そうやって田舎の食卓はあまりお金をかけずとも意外と豊かになるのだ。


画像1

ただ、困るのが下ごしらえ。山菜のアク抜きや、皮むきなどはけっこうな手間だし、面倒だ。ましてや、大量になると、一人で向き合うのは大変。

何しろどうすれば良いのか、美味しく出来るのか分からない。急いでググって格闘する。苦行か!?と思いながら。

でも、おばあちゃん達は、台所の隅や小屋の一角にちんまり座って、淡々と作業する。農作業や家事で鍛えられた“忍耐力“と

ただ美味しく食べさせたい一心で

黙々と下ごしらえをしていた。

手のシワや指紋まで、手袋をしていても染み込んでしまっている土や野菜のアク。どこのおばあちゃんの手も小さくて、節くれだって、少し黒ずんでいていぶし銀のような味があった。

そんな、おばあちゃんの手からは魔法のように美味しいご馳走が作られていた。

野菜の皮をむいたり、山菜のアク抜きをしたりしていると、おばあちゃんの手を思い出す。

『こごをポキッとやって、ツーってむくのす』

『お湯さパラーっとタンサンへで、グラッと煮だら火を止めで冷ます』

『ボレボレと沸いだらば、さっと湯がくのす』

なんて楽しいオノマトペがいっぱい!!

でも、レシピに起こせない感覚的なやり方なので、よく見ていないといけないけど。その微妙な塩梅が難しい。きっと、美味しさの秘訣。

おばあちゃんに聞けない今は、地元の知り合いに聞いたり、必死にググっては、試行錯誤している。

画像2

アク抜きや下ごしらえは、うまくいかないと、苦いし、ゴンギゴンギずくて(固くて)食べられない。

だから、手を抜くところはあってもいいのだけど、適当すぎたり、めんどくさがったものは後から如実に味に差が出るから、コツはちゃんと掴まないといけない。

少しでもおばあちゃんの手に近づけたかなぁ。

そう思いながら、ミズの皮をむいた。


山菜の下ごしらえの仕方 あれこれ

①ふき

鍋に入る長さに切り、塩を振って、板ずりしたふきを、たっぷりの湯が沸騰した鍋にいれ、3分くらいゆでる。水にとり、薄皮をむく。合わせだしを作り、(例えば鰹出汁8:薄口醤油1:みりん1をあわせる)煮立てたら、適当な長さに切ったふきを入れて煮含める。

画像3

②みず

葉を取りながら根元に向かって薄皮をむく。適当な長さに折りながら都度薄皮をむいていく。沸かしたお湯に入れ、1分くらい茹で、合わせだしに漬ける。胡麻和えも美味しい。

画像4

③わらび

沸かしたお湯1リットルに対し、小さじ1の重曹を入れ、洗ったわらびをいれたら、10秒茹でて火を止める。そのまま一晩置く。この後茹ですぎると柔らかくなりすぎるので、水に晒して重曹水をながしたら、合わせだしに漬ける程度にする。

画像5

④こごみ

アクが少ないので、そのまま1分程度茹でて、胡麻和えにしたりする。

画像6

⑤行者ニンニク

綺麗に洗って、小口切りにして、だし醤油に漬ける。薬味として使える。

画像7

あとは、なんといっても天ぷら!!!

画像8

※追記

おばあちゃんの手の魔法は野菜作りにも活かされていたようで、継いだ弟が感心しています。草取りや間引き、摘果、虫取り…肥料や除草剤、機械に頼らない細やかな手入れと思いやりで年中食卓を彩る野菜を作ってくれていました。

私は彼岸の入りの生まれなので、誕生日の朝はいつもお赤飯と精進料理でした。おばあちゃんはお赤飯もおはぎも大福も、小豆栽培から作っていてとても美味しかった。朝起きて、こさえてるところを見てテンション上がり、おはぎなどはつまみ食いしてから学校に行きました。

先祖があって今がある、は祖父の口癖。祖父は米を祖母は野菜を作って家族の食を守り、いっぱいご飯をたべさせて育ててくれたおかげで、丈夫な身体を持つことができました。今度は、私が、食の未来に何を残せるかな、と大福みたいな月を眺めながら思いました。もうすぐ中秋の名月だそうで。

この記事が参加している募集

おじいちゃんおばあちゃんへ

おいでくださりありがとうございます。 不器用な料理人、たぬき女将が季節の食材、料理、方言にまつわるよもやま話を綴っています。おまけレシピもありますよ。