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映えないけど、地味で茶色いおかずの魅力☆〜夕顔の話〜

先日、田舎に帰ったら、行きつけのお店の小鉢に夕顔の煮物がついてきた。

最初、何かわからなくて、凍み大根かと思ったら、夕顔だった。

夕顔は、岩手の夏の味。

冬瓜に似たような姿だけど、夕顔は実はかんぴょうの素になる。夏に身体の熱を取ってくれるウリ科のものなので、夕顔も外で働く農家のほてった身体を冷やしてくれていたのだろう。


おばあちゃんは、カツオのなまり節(カツヲを茹でたり、蒸したりした加工品)、ちくわ、さつま揚げなんかとともに薄味の煮物にしていた。

(そもそも、ばあちゃんのたいがいの煮付けにはなまり節かちくわかさつま揚げが入ってた。食感の違いを出して、素朴な味に贅沢感を足していたのだろうと、今ならわかるけど。)

子供心には、魚くさくてあまり好きじゃなかった。

でも、夕顔の独特の食感は美味しい。

大人になって、しばらく食べてなかったから、先日の煮物は、懐かしい味が本当に美味しく感じられた。

店に戻ってきて、早速取り寄せて煮物を作った。そぼろ煮にしても、ツナと煮付けても美味しいものだと思った。

そして、こういう東京では珍しい食材は、美味しく料理すると、お客さんのウケが良い。だから、改めて、思い出のおばあちゃんの味シリーズも少しずつ紹介していこうと思っている。

料理人の要となる味付けは、私の場合は有り難いことに、農家で優しくて料理上手だったおばあちゃんの影響が大きい。

マンマの味には、名店のシェフでもやっぱりかなわないというけど、そんな感じ。

高級な料理には及ばないけど、素朴で茶色くて、じんわりホッとする味を知ってるということのかけがえのなさ。

そういうわけで舌のベースはおばあちゃんの味、考える料理も味付けにも反映されているらしい。

祖母が残してくれたこの宝物を守りたい、伝えたい。


祖母がお母さんやお姑さんに教えられて、その前はその先祖達が伝えてきた味、舌の記憶。

例えば、夏。おばあちゃんは、張り切って茄子を栽培し、漬物、天ぷら、素揚げの田楽、味噌炒め、煮つけなどなどこさえてくれた。

料理人の修業時代の登竜門、【賄い担当】の時にそのおばあちゃんの味、恩恵に触れるきっかけがあった。

(と、同時に料理にぺっこばり(少しばかり)の自信を持てるようになった。)

最初に働いた店はイタリアンだったのに、私は今思えばマイペースとしか言い様ないけど、張り切って、賄いで煮物を作っていた。あとは、あんかけとか。

なすは、煮びたしや揚げ出しや味噌炒めにした。おばあちゃんの美味しかったやつを思い出して、(まだ元気だったから、電話して)聞いて。

そしたら、上司や先輩に時々褒めてもらえたのだ。

(イタリアンなら、カポナータにでもすべきだったろう。)

それ以前から、友達にご飯を振る舞う趣味はあって、店で覚えたレシピを得意げに作っては味見してもらっていたけど、ジャッジされるようなことはなかったから、単純に嬉しかった。


イタリアン学ぶ気あるのかー???

と、今の私なら言うかもしれない。自分の稚拙で弱い手持ちのカードでなんとかしようとして、戦うつもりも挑むつもりもなかった。だって、怖かったんだもの。

だから、美味しいのはわかってる、おばあちゃんの味を参考に賄いを作った。

それが意外に褒められたので調子に乗り、今に繋がっている。

(その後には、賄いをけちょんけちょんに怒られる思い出もたくさんあったけど💦)

茶色いおかずの美味しさを知ってるってのはは財産だな。


もうひとつ、夕顔と言えば、『源氏物語』。もののけに取り憑かれる怖い人のイメージ。

夕顔の花は真っ白で朝顔とは違った儚さがある。


☆おまけレシピ☆

ゆうがおのそぼろ煮


ゆうがおの皮をむき、種とワタを削り取る。
食べやすく切る。
だし汁を沸かし、鶏ひき肉をほぐしながら煮て、酒、砂糖、醤油で味付けする。(出汁8:酒1:砂糖0.4:醤油1 一例として。めんつゆで充分!)
カットしたゆうがおを入れ、5分くらい煮込む。ちょっと置いて味を馴染ませたら完成!

あったかいうちもいいけど、冷たいのを、麦茶かけた冷やご飯茶漬けとともに食べるのも夏の定番。

おいでくださりありがとうございます。 不器用な料理人、たぬき女将が季節の食材、料理、方言にまつわるよもやま話を綴っています。おまけレシピもありますよ。