見出し画像

どこがHappy Togetherなんだよ…って思ってた映画「ブエノスアイレス」が好き

僕が映画で一番好きなものは?と聞かれると必ず答えているのがウォン・カーウァイ監督の「ブエノスアイレス(原題:春光乍洩、英題:Happy Together)」です。

そんな映画の好きなところや見どころを完全に自己満でまとめました。この気持ちを残しておきたくてnoteに書きました。
※この記事はネタバレを含みます。

映像が美しい

再会したあとカラーに切り替わる映像

ブエノスアイレスは1997年の映画なのでもう20年以上も前の映画です。なので映像は正直、ガサガサしている印象です。
ですが、色彩がきれいだし、モノクロからカラーになる瞬間はすごいきれいです。
どのシーンも1カット1カットがアートのようです。

どうしようもないウィンと、どうしようもないファイ

最初見たときは人を振り回すウィンがどうしようもない人間だと思っていました。ファイはひたむきで真面目な正確で、仕事もちゃんとしていて生活もちゃんとしています。
そんなファイに比べてウィンは男遊びばかりでヒモ男のような生活。
冒頭、二人は別れてしまうんですが…ファイがボーイとして働くお店に現れたウィンはまたファイを振り回します。
自分が振っておいて、「またやり直そう」と言うんです。
でも何度も見ていくうちに、結局呼び出されたら素直にウィンに会いに行くファイもファイなんです。
そんなファイがいるから遊んで、遊び疲れたらファイに戻るんです。本当はどっちがどうしようもないんだろう…。そう思って見てみると、実はファイのほうがどうしようもないんです。

時計を盗んで渡した結果ボコボコにされてファイのもとへ帰るウィン

ボーイとBARで働くファイの元へウィンは高級時計を渡して去ります。それを売って金にしろと言い、ファイは嫌がりながらも受け取ると…
次のシーンでウィンは顔に傷を負ってます。「時計を返せ」

結局自分の時計ではなく男から盗んだものだったようです。そのシーンのウィンは子供のよう…。そして二人で別れ際にタバコを吸うシーンはブエノスアイレスでも名シーンです。

映像がカラーに切り替わる瞬間

この映画は始まって少しすると二人が別れてからはモノクロで映画が進行します。
最初、僕は特にここに意味を感じていませんでした。
しかし何度も見てると明確に切り替わるシーンには意味がありました。
何者かにても使えないほど暴力をされてファイに助けを求め、病院にファイガ連れていきます。
その後、二人でタクシーに乗ってる瞬間に映像は一気にカラーへと切り替わります。
「ファイ、やり直そう」また、ウィンがそう言ったあとの返事は映画ではありません。
しかし、タクシーのなかでファイは両手が使えないウィンに自分の吸うタバコをわけてあげます。ここで鮮やかなカラーの映像になっているんですよね。

タイトルの「春光乍洩」の意味を知る

この映画を1度見たことがある方はみんなバッドエンドなの?結局なんだったの?と思う方も少なくないんじゃないでしょうか?
この映画の原題は「春光乍洩」です。「春光乍洩」とは、「春が来ることを思って心がふわっと明るくなるような気持ち」を意味する言葉です。
そのタイトルの意味を知ってみると全然見え方がかわります。カラーに切り替わってファイとの生活が始まったウィンはつらい生活の中にも笑顔を取り戻しているんです。
そう、どうしようもないんですよね。ファイにとってウィンが春のような存在。そんなウィンと一緒にいることでふわっと気持ちが明るくなっているんでしょうか。
面倒なやつだなって思いながらも自分よりもウィンを優先しているようなファイの言動には依存症のような、少し怖いものを感じることもあります。

ファイはウィンを自分のものにしたいのか

わがままで自分勝手で、フラフラを別の男遊びにもでかける男ウィン。そんな男、ろくでもないですよね?
夜中にタバコがないと拗ねるし、風邪をひいてもファイにご飯を作らせる。しかも、別れるときはいつもウィンからいなくなる。
そんなウィンをファイは自分のものにまでしたい支配したい欲があるように思います。
ウィンが怪我をしているとき、ファイはウィンのパスポートをどこかに隠してしまいます。どこにも行けないようにしたいのです。

最後のシーンが意味するのは?

この映画のラストシーン、結末は「どういうこと?」と思う人がかなり多いように感じます。
友達に勧めた結果、感想を聞いてもなんかよくわからなかった。と言われることが多いです。
僕はラストシーンでアルゼンチンから出国し台湾経由で香港に帰国するファイは「春光乍洩」という気持ちになってるんじゃないか?と思っています。
ファイはウィンのパスポートを盗み、ウィンをアルゼンチンから出られないようにしています。
そして、途中知り合った中華料理店の同僚であるチャンの実家である飲食店でご飯を食べてチャンの写真を1枚盗みます。
ここでファイが「もし会おうと思えば、どこでだって会うことができる」と言ってエンディングソングのHappy Togetherが流れてエンドロールになり、この映画が終わります。
結局ファイはどこに至ってウィンと出会えるんじゃないでしょうか。ファイもウィンを求めていれば出会えるし、ウィンもファイを求めれば出会えます。そんな二人が同じ気持ちになってふわっと春の気持ちになったときまた二人はどこかで出会うんでしょう。

バッドエンドじゃないし、ゲイがメインテーマではない映画

この映画は切なく二人が別れてしまう話ではなく、前を向いてやっと依存、悪いクセから一人立ちできる人を描いた話です。
どうしてもゲイがメインテーマに思ってしまいがちですが、メインテーマは「bad habit」だと思います。要するに悪い癖、ファイの依存性です。
それをファイは断ち切り、一人であるき出せました。
それがHappy Togetherなんじゃないでしょうか。

▼ゲイマガジン「ゲイブロ」では毎週新しい記事を更新中!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?