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求めていた「誰か」に私がなる。ベンチャーから地域おこし協力隊へ【gCOBインタビュー#2 坂本紫織】

「命を使って生きる」
同じ会社で働いていたかつての後輩はインタビュー中にそう何度か口にしていました。言葉には人間性が出るのではないでしょうか。

彼女とは一緒に仕事をする機会はほとんどなかったものの、興味・関心の領域が近く気になる存在でした。退職後はTwitterで時折やり取りしていて、元気そうな姿に懐かしさと安心を感じていました。

今回2年振りに再会して気づいたのは「こんなにも自分は彼女の事を何も知らなかったのか」という驚きです。
東京から熊本へ行く選択をした彼女の「しなやかで力強い生き方とやさしさ」が伝われば書き手としてこれ以上の喜びはありません。
それでは、gCOBインタビュー第2弾です。

坂本 紫織
2016年gCストーリー株式会社に新卒入社。大型PRJにアサインされたのち、コンプライアンス業務に従事。屋外広告物の許可申請や社内システムの設計を行う。また、大学在学時に会議やワークショップの設計を行っていた経験を活かし、所属チームの営業会議の設計・進行に携わる。
現在は熊本県の甲佐町で地域おこし教育協力隊として活動。副業として、複数の業務に従事している。

東京のベンチャーから熊本の地域おこし教育協力隊へ

ー今日は熊本から会社に来てくれてありがとう!

ちょうど東京に用事がありましたし、どこかで仕事する場所、探してたんでよかったです!

ー坂本さんが勤めてた頃は、一緒に仕事したことほとんどないよね(笑)

私が辞めてからTwitterで絡むほうが多いぐらいですしね(笑)

ー一緒にエナジー事業部のビジョンを作ったのは覚えてる。あの時にワークショップの設計と実行を担当してくれて、驚いたんだよね。

場作りが好きで、どうやったらそこにいる全員が楽しめる場になるかとか、最後までわくわくした状態を創り出せるかとか考えるのが楽しいんですよね。大学生の時もキャリア教育のワークショップ設計や面談をやっていた自分にしっくり感がありました。今の活動にも繋がっています。

※当時のvision作成時の資料

ー今はどんな事をやってるの?

熊本県の甲佐町で地域おこし教育協力隊をしています。
甲佐高校の入学者数を増やすことをミッションに、高校の教育内容の魅力化に取り組んでいます。主な活動は高校の敷地内に町営の塾「あゆみ学舎」を設置し運営することで、いわゆる塾講師として教科指導や、キャリア教育としての授業を行うこともあれば、広報も行ったり、学校と役場の調整だったり塾に関わることは何でもやっています。
また、入学者の増加が、町の定住促進や、人口の増加に繋がればという側面もあります。

ー副業もやってるんだよね?

いくつかやってます(笑)

1つ目がCredo Ship.という京都の会社でリモートワークをしています。元々は大学のときの長期インターン先で、私にとってキャリア教育の道に進むきっかけをくれた人の会社です。
2つ目は、アシスタント&秘書業務です。空き家や歴史的建造物の活用による地域活性化にまつわることをさせていただいています。
3つ目は、個人の活動で、グラレコだったり色々やらせてもらっています。

元々は2~3年のんびり働くつもりだったけど、こういう性なのかもしれませんね。命ある限り全部使わないといけないというか。

gCストーリー入社当初から考えていた次の選択肢

ー熊本に行ったきっかけはなんだったの?

入社してすぐに熊本で震災が起きました。その時に私は東京で、忙しく働く生活を送っていました。

生まれが九州なので、東京で働くのであれば、家族の力になりたいと思った時にすぐ飛んでいけるくらいには、お金か時間的な余裕が必要だと思ったんですね。gCストーリーに入社した当初からなんとなく、次の選択肢を考えていました
いつか仕事を変えるのであれば、時間の融通が利く仕事がいいと考えるようになりました。

ーそうだったんだ。

gCストーリーでは、大小様々な課題はあれどみんな幸せに過ごしているとは思っています。そこよりも本当に困っている人の力になりたい。そんな気が当時からしていました。

そのタイミングで公営塾の話を日本仕事百貨というサイトで見掛けて、しがらみの少ない24歳の今しかタイミングはない、と。

ー前回のgCOBインタビューでも、櫻井さんが転職はタイミングとご縁だって言ってた。

お迎えが来た感じでした。行くか~、という(笑)

ーじゃあ、今は熊本で暮らしてるんだよね?

今は熊本の甲佐町で暮らしています。車で行ける範囲にドラッグストアやスーパーがあるので意外と不自由なく暮らしてます。行ってから知ったんですけど、祖母の家も車で30分ぐらいで着きます。
実家にも車で帰れる距離なので、物理的に良くなりました。

甲佐町が九州のど真ん中なので、福岡や鹿児島に遊びに来た人を案内するのにも、阿蘇や天草など熊本の観光名所に遊びに行くにも、地理的にどこにでも行けるすごい便利な場所です。

ー熊本に実際に行って気づいた事ってある?

gCストーリーでは、安心と安全が守られていると思いますが、社会としてのリアルはココにある、と実感します。

日本の課題が集約されています。例えば、町から人がどんどん減っていく少子高齢化の課題を実感します。

学力や生活面で困難を抱えている子もいて、彼らが抱えている問題は、その子たちの問題ではなく社会の課題だと思います。

テストの点数が低い生徒でも、紙とえんぴつをホワイトボードとマーカーに持ち替えたら解けるようになったり、アルファベットを書くのがとても苦手だけどタイピングはとても早かったり、これまで過ごしてきた学校の勉強方法がたまたまその子には合わなかったんだろうなと感じることがあります。

また、塾の月謝は通塾回数や滞在時間に関わらず3,000円なので、週1回90分で月謝1〜2万円の大手個別指導塾と比較すれば格安ではあるものの、それでもためらったり、諦めたりしてしまう生徒もいます。

そういった生徒が就職ではなく大学に行きたいと思うことって、とてもハードルが高いですよね?現に、お金が心配だから大学には行けない。だから就職をするという生徒はたくさんいますし、そういった環境だと、やりたいことや好きなこと、能力を活かせそうなことで仕事を選ぶことも難しい。ロボットに代替されづらそうで自分にも出来そうな肉体労働という道を選ぶ生徒は少なくありません。

私の人生にも色々ありましたが、本当に世の中にこうした悩みが存在しているという事実に衝撃を受けました。

幸福な人たちよりも、本当に困っている人に対して自分の命を使いたい。私の場合は「何かしたい」があっての転職でした。

ー世界の見方変わるよね

何も出来ない自分に無力感を感じる事もあります。

転職は「福利厚生」「安定してる仕事」を挟みながらゆっくり考えるという選択肢もあったと思います。ただ、その時間すらもったいなく感じました。

今は「人の役に立つことが嬉しい」というよりも「奮い立つ感じ」です。
取り巻く状況から、使命感みたいなものが内側から湧き上がり、働いています。自分の「命を使って生きている感覚」があります。


ー坂本さんにとって gC ストーリーで働く意味はなんだったんだろう?

お互いに信頼を置いて、健やかに生きていける世界がこの世に存在すると感じられてよかったと思っています。

もし、gCストーリーに出会えてなかったら、学校を卒業した子たちが世の中に出てもしんどいことだらけではないか、と思ってしまっていたかもしれません。
ここから世の中で生きるのはしんどいんじゃないか、と。

美しい組織や人間関係、それを追い求めようとする人たちがきちんと世の中にあると知っていることは私にとって大きかったです。

人生とは命を使って生きる事。自分の命を何に使うのか?

ー「命を使う」っていう言葉の選択が面白いな、とさっき思ったんだけど原体験に関係してるのかな?

私は高3の時に家族の事で悩み、うつ病になってパニック障害と診断された事があります。

通院した病院で、大きなショックを受けたことがありました。初めて行った病院では、何が苦しいのかや家族について私が泣きながら話したにも関わらず、そんなことがストレスになるはずないわよと言われました。

たまたま合わない医者だったのかなと思って変えた病院では、わたしが家族のことで悩んでいるにも関わらず「そんなに頑張って勉強しなくていい」という見当違いの事をずっと言われました。
もちろんそんな方だけではないと思いますが、私はその時、「お金を払ってもこういう風にしか話を聞いてもらえないんだ」と感じてしまったんですね。

「人の役に立ちたい」と思っていましたが、まず私が「そばにいて欲しかった人」みたいにになってみようと決めました
苦しいという気持ちをただ聴いて受け止めてほしい。 能力値などの表面的なもので判断されるのではなく、誰かに私の人間性をわかってほしいと思っていたんです。
こんなに話を聴いてくれる人がいないなら、自分がなるしかないっていう発想の転換になりました

当時は、明日死のうと思ったら「死ねる」という感覚がありました。
ただ、今はそれを感じた上で「死なない」選択しています。
本当に自分が見たい世界や美しい世界。「やりたいこと」「幸せ」を突き詰めた時に絶望しかなかったら死ねばいい、と決意ができました。

病気、事故、災害など、自分でコントロールできない死もあると思います。
私が死ぬとしたら、自分で決められないタイミングでしかありません。

人生とは命を使って何をするかだ」という言葉について、真剣に考えるようになりました。

ー坂本さんにとって、幸せって何だろう?

昔、ノートにこんな事を書いていました。

・ご飯が食べられること
・それを美味しいと思えること
・感情を共有してくれる友人や仲間がいること
・心から幸せだ、楽しいと感じた時に笑えること。

あと、今、感じるのは大学の友人やgCストーリーも含めた大切な人が同じ社会で生きていて、繋がっている感覚がベースとしてあるのは大きいです。
あの人が頑張っているんだからわたしも頑張ろうとか、あの人がいる限り、地球は素敵だ!生きられる!みたいな感覚です(笑)

そこがあるから、自分なりの覚悟を持って「今」を生きる事が出来ます。

坂本さんのTwitterはこちら

文・取材・編集/佐藤政也 写真/長田和真 デザイン・アートディレクション/熊谷怜史

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