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K-150 ソクラテス胸像

石膏像サイズ: H.52×W.32×D.c22m(原作サイズ)
制作年代  : 2世紀初頭(原作はB.C.318年頃のブロンズ像 現存せず)
収蔵美術館 : ルーブル美術館
原作者   : リュシッポス(Lyssipos)
出土地・年 : 

古代ギリシャ・アテナイの哲学者ソクラテス(B.C.469-399)の肖像彫刻です。リュシッポスが作ったとされるブロンズ製の原作彫刻は、アテネの市壁の内側にあったポンペイオンという公共建築物に設置されていたということです。そのブロンズ作品を元にして複数のローマンコピーが制作され、発掘物は複数の美術館に収蔵されています。石膏像の元となったルーブル美術館収蔵の大理石像は、発掘物としては頭部のみで、胸、鼻先等は後世の補足です。文献によれば、ソクラテスの風貌は“剥げ頭、広がった鼻孔、太い首、太鼓腹”と表現されていて、この肖像はまさに本人の様子をよく伝えているのでしょう。
哲学者としてのソクラテスは、“無知の知”という概念が根底にあり、自分が無知であることを自覚しているからこそ自分は人に勝る・・・と考えました。知っていると思い込んでいることに対して、常に問いかけを行い、他者と対話してゆくなかで人々の無知、矛盾、曖昧さをあぶり出し、思考を積み重ねることで「人としてより良く生きる」よう促しました。それまでのソフィスト達が、「世界の事物は何からできていて、いかに成り立っているのか?」という”自然哲学”を追求していたのに対し、ソクラテスは「人間の魂はいかにあるべきなのか?」という”倫理学”の方向へ進んでいったのです。

ルーブル美術館収蔵 ソクラテスの頭部 石膏像の元となったもの ローマンコピー 現在の展示では補足部分が除去されている
(写真はWikimedia commonsより)


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