見出し画像

「ミケランジェロ」「フィレンツェ」


ルネサンスに関連する石膏像をずいぶんたくさん紹介してきました。参考になりそうな書籍で、入手しやすい新書を2冊ご紹介します。

木下長宏著「ミケランジェロ」2013年 中公新書刊

ミケランジェロについては、国内でも大きな図鑑とか研究書がたくさん出版されています。ずいぶん語り尽くされている巨匠ですから、どの本を手にとってもそれなりに充実した内容です。こちらはコンパクトな新書で比較的近年の出版です。語り口もスマートで、ミケランジェロという巨大な天才の全体像を楽しく読み進めることができます。

過剰な解釈を避け、作品の全体から細部へと丁寧に解説されていて、学ぶこと、気づかされることがたくさんあります。


池上俊一著「フィレンツェ 比類なき文化都市の歴史」2018年 岩波新書刊


イタリア各地で様々な動きがあったとはいえ、ルネサンスの中心となったのはやはりフィレンツェでした。ということで都市としてのフィレンツェを語る一冊。

古代ローマよりもさらに以前、紀元前8世紀頃のエトルリア人により成立した現在のフィレンツェ近郊に位置するフィエーゾレからスタートし、ローマ植民市となり、やがて都市国家として成長してゆくフィレンツェの姿を描いていきます。

ルネサンス発祥の地となるために都市が辿ってきた社会(コムーネ:自治都市)・政治体制(ギベリン党&ゲルフ党)・経済の変遷を丁寧に追い、文化的な大転換がなぜこの地から生み出されたのかということを分かり易く説明してくれます。現在でも宝石のように美しいフィレンツェの旧市街ですが、13世紀の建築家アルノルフォ・ディ・カンビオの活躍から本格化する都市の荘厳化の歴史が綴られています。当たり前のことですが、あのような素晴らしい建築物の集積、付随する彫刻・絵画が整備されるまでには、長い長い時間と莫大な費用、市民たちの献身的な情熱が注ぎ込まれているわけです。

それぞれの芸術作品について知ることも重要ですが、都市としてのフィレンツェの歴史を知ることで、よりルネサンスについての理解は深まるのではと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?