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「世界の彫刻 1000の偉業」

「世界の彫刻 1000の偉業」 2009年 二玄社刊

日曜日恒例の彫刻本のご紹介。
これは2007年に英国のsirrocco社から出版されたものの日本語版。西洋彫刻の全体像を俯瞰するにはとても良い書籍だと思います。

古代ギリシャからスタートして、中世、ルネサンス、ロココ、近代まで網羅していて、新しいものだと20世紀後半のセザール・バルダッチーニとか、ドナルド・ジャッドまで網羅されています。

各時代を代表する彫刻の写真を1000点掲載し、タイトル、作者、年代、素材、サイズ、収蔵美術館などのデータがそれぞれ添えられています。あくまでビジュアル優先で、文章による解説はごく一部の作品についてしか掲載されていません。543ページでかなり分厚い書籍です。

この本が素晴らしいのは、なんといっても写真の物量。これだけ写真の掲載量にこだわった書籍は珍しいです。しかもサイズが変形A5くらいのでコンパクト。大型の美術本をめくるのはついつい億劫になりがちですが、このサイズなら常に手元に置いて参照することができます。

欲を言えば、作者名に英語も併記されていればとか、全作者についての概略があれば、などあれこれ希望はありますが、日本で「西洋彫刻」に関する書籍でこれだけしっかりしたものは珍しいので貴重な一冊だと思います。

ところで、古代エジプト関連の石膏像の紹介に突入したばかりで、なぜこの書籍の紹介なのか?というと、じつは「世界の彫刻1000の…」というタイトルにも関わらず、この本には古代エジプト文明の作品が一点も収録されていないから(笑)

美術あるあるですが、あくまでヨーロッパを主軸に据えた「世界の彫刻」なわけです。もちろん日本の仏像も含まれていません。英国の出版社がこのタイトルなのは仕方ないとしても、日本版は「西洋彫刻 1000の偉業」とするべきだったかもしれませんね。

1000点もの彫刻作品を掲載した本書でも、私の工房で作ることができる石膏像の元ネタ作品は10%くらいしか収録されていません。個人的には、同じスタイルで「西洋彫刻 10000の偉業」を10巻本で作ってくれたらなぁ…なんて夢見たりしますが。

ともあれ、この本は西洋彫刻に関心がある方は絶対に手元に置いた方が良いと思います。それくらい良く出来てるし、日本では類書が滅多に出版されませんから。7000円は破格です。


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