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K-138 ペルセウス胸像

石膏像サイズ: H.75×W.32×D.34cm(原作サイズ)
制作年代  : 1797~1801年
収蔵美術館 : ヴァティカン美術館
作者    : アントニオ・カノーヴァ(Antonio Canova 1757-1822)

古代ギリシャ神話の英雄ペルセウスが、ゴルゴン三姉妹の三女メデューサの首を取りに行くというエピソードを描いた彫像です。目を合わせた者を石に変えてしまうという恐ろしいメデューサの首を、アテナの盾、ヘルメスの翼のあるサンダル、ハデスの隠れ兜などを身に付けたペルセウスは見事に打ち取ります。

作者のアントニオ・カノーヴァは、ベネチア近郊の町の石工の家系に生まれ、早くからデッサン・彫刻を学びました。10代前半から既に頭角を現し、24歳でローマに出たカノーヴァは圧倒的な評価を獲得し、その後はローマ教皇の記念碑の制作など、彫刻家としての王道を歩みました。

ルネサンス→バロック→ロココ・・という形で、王政と共に変遷してきたヨーロッパ芸術の潮流は、フランス革命によって巻き起こった民主制、共和制という政治的なトレンドに強く影響されて新古典主義を生み出します。新しい民主的な政治体制の理想を古代ギリシャ世界に見出したのと同じく、彫刻の世界も神話や人体そのものを讃える古代ギリシャ的なスタイルが流行しました。そんな時流にカノーヴァの彫刻スタイルはピッタリと合致しました。その名声はヨーロッパ中に響き渡り、特にロシアでは高い評価を得ていたため、現在でもサンクト・ペテルスブルグのエルミタージュ美術館には、カノーヴァの作品がたくさん収蔵されています。

このペルセウス像の制作は、1796年から始まったナポレオンのイタリア半島侵略と関連しています。1798年ローマがナポレオンに占領されるとヴァティカン美術館の収蔵品が大量に略奪されパリへと送られました。古代彫刻コレクションの多くを失ったヴァティカンは、その埋め合わせとして古代彫刻に匹敵するような作品をとカノーヴァに依頼し、制作されたのがこのペルセウス像なのです。

ヴァティカン美術館収蔵 カノーヴァ作 「メデューサの頭を持つペルセウス」 (写真はWikimedia commonsより)


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