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N-035 サタイア全身像

石膏像サイズ: H.62×W.29×D.21cm(縮小サイズ)
制作年代  : ローマンコピー(原作は古代ギリシャ・ヘレニズム期)
収蔵美術館 : フィレンツェ・ウフィッツィ美術館

サテュロス Satyrus(英語名サタイア Satyr)は、ギリシア神話に登場する半人半獣の自然の精霊です。ローマ神話にも現れ、ローマの森の精霊ファウヌスやギリシアの牧羊神パーンとしばしば同一視されました。「自然の豊穣の化身、欲情の塊」として表現され、プリニウス(古代ローマの歴史家・博物誌の著者)によれば、その名前はギリシア語で男性器を意味する言葉に由来しているとされます。つまりこの三つの存在はみな精霊的な存在で、よく似たような特質を持っているということのようです。いずれにしても、神々の世界に属する存在でありながら、酒を好み、どんちゃん騒ぎに加担し、肉体的な快楽を貪るという、すこし”卑しい”性質を象徴するような存在ということです。サテュロスは、酒・豊穣・祭りの神であるディオニソスに従属する存在として語られることが多く、ディオニソスの持つ狂乱的な祝祭の登場人物です。酒と女性と男性(美少年)を愛し、アウロスという笛、シンバル、カスタネット、バグパイプといった楽器の音楽に乗って、ニムベーと踊ったり口説いたりしました。彼らは悪戯好きで、同時に小心者で、破壊的で危険であり、また恥ずかしがり屋で臆病だったということです。

サタイア像の大元となったオリジナル彫像は、古代ギリシャ・ヘレニズム期のものであると考えられていますが、そちらは現存していません。最も原作に忠実とされるのが、フィレンツェ・ウフィッツィ美術館収蔵のローマンコピーの大理石像で、等身大よりも少し小さいサイズです(H.139cm)。

この石膏像(H.62cm)の型取りの元になったのは、1704年にフィレンツェの彫金家であったマッシミリアーノ・ソルダーニ・ベンツィ(Massimiliano Soldani Benzi 1656-1740)が作ったブロンズ製の縮小複製像です。マッシミリアーノはメジチ家の庇護をうけた彫刻家で、彼が取り組んだ古代彫刻の複製作品は高く評価され、メジチ家が周辺諸国との友好関係を維持する際の贈り物として大変重宝されました。

フィレンツェ・ウフィッツィ美術館収蔵 サタイア像(踊るサテュロス Dancing Satyr) ローマンコピー (写真はWikimedia commonsより)


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