「インタラクティブミュージック」という、ゲームと音楽の関係性。連載開始。

前回のnoteが、初のnoteだったんですが、予想以上に多くの反響をいただきました。皆様のゼルダ愛のおかげです。

「インタラクティブミュージック」という言葉を初めて知ったという方も多く、広まってくれて良かった!!と同時に、皆さんの「もっと知りたい」をひしひしと感じました。


「ゼルダ」が「ファイナルファンタジー」に与えた影響

コメントの中に、「FF15でインタラクティブミュージックが使われていて初めて知ったけど、ゼルダはもっと凄いことしてたんだ」という方もいらっしゃいました。

(……言っておかないとその後の連載がステマとか言われても困るので最初に言ってしまいますが)そのFF15の技術を作ったのが私です

連載でお話する事は一切会社の意見ではなく私個人の意見であり、何らかの作品を私が批評してもそれはスクウェア・エニックスとは関係がありません。他社あるいは自社のゲームについていかなる表現をしても私個人の意見なのでご意見ご要望お問い合わせは私個人にお願いします。大事なことなので2回言いました。

しかし、事実として、私はゼルダのインタラクティブミュージックに天啓を受け、それを研究することでファイナルファンタジーの演出にその技術を活かす事ができました。FFがゼルダを真似したとかそういう方向性があったわけでは全くありませんが、私のようにゲームに感動した人間がゲーム作りに関わっているので、人を感動させた技術は未来のゲームに影響するのです。

※連載では、基本的に自分が関わったゲームについては解説しませんが、既にカンファレンスなどで発表した内容については、説明のために引用しながら進めていきます。


2つの技術

インタラクティブミュージックの演出がわかりやすい動画がインターネットにたまたま転がっていたので紹介します。

こちらのFF15みたいなゲームの動画では、チョコボみたいなものに騎乗した時の速度に応じて音楽のアレンジが変化しています。メロディは途切れずに繋がりながら、しっかりと雰囲気を変えることができる手法です。

こちらはどこかのノクティス王子みたいなキャラが戦っていますが、戦闘が進むにつれて音楽が展開して、最後は戦闘終了と同時に音楽が終わっています。

その他のFF15みたいなゲームの音楽演出についてはこちらのプレイリストにまとまっています。https://www.youtube.com/watch?v=99uHf1ud75w&list=PLYB9gFlMyTSJl3y1RPVh5Wx9X51H2XND_

インターネットは便利ですね。ゲームでの音楽変化は現在そのほとんどがこの2つの技術によって作られています。


1.音楽の「アレンジが変化」

チョコボの曲でアレンジが変化するのは、技術的には、ゼルダの伝説BotWでハイラル城の内外でアレンジが変化したものと同じ種類です。他にも、「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」のラネール砂海で乗るボートでも同じように速度によるアレンジ変化が使われていました。

これは、2種類のアレンジ曲を同時に流して片方の音量をゼロにしておくことで、音量変化で2つの曲を同期して切り替えるという事が行われています。

BGMの「レイヤー」を重ねて変化させているので、BGMレイヤーの変化とも言えます。開発者の間では、DAW(作曲ソフト)上でレイヤーが縦に並んでいる事から「縦の遷移(Vertical Remixing)」と呼ばれています。


2.音楽の「展開が変化」

ボス戦の形態変化に応じて音楽が展開していくのは、技術的には、ゼルダBotWの通常戦闘曲が敵の強さに応じて展開が変化したものと同じ種類です。他にも、有名ですが「ゼルダの伝説 時のオカリナ」のハイラル平原では、
8小節の部品が状況に応じて次々に展開していました。

近藤:
8小節の細かい“部品”をいくつかつくって、
それがランダムに鳴るようにしてみました。
岩田:
それはつまり、コード進行が決まっていて、
“部品”を取り替えながら鳴らすような仕組みなんですね。
近藤:
そうです。なので8小節の最後は、
どの“部品”にもうまくつながるようなコードにして、
それをランダムに流しても、自然に聴けるようにしました。

ゼルダの伝説ではこの上さらに「ランダム」や「状況によって変化」「コード進行を違和感なく保つ」など様々な工夫が上乗せされたものですが、技術的にはどれも、音楽を時間軸でいくつかの部品に分けて、それを「次の小節」とか「8小節後」とか「部品の終わり」とかにピッタリと合わせて繋げることで実現されています。

これを実現するためには、「現在の音楽が何小節目の何拍目にあるか」を検知するシステムと、「次の音楽にキレイに繋ぐタイミング」を計算するシステム、そしてその時間に「ピッタリと重ねて次の部品を予約再生する」システムが必要なので、1.のアレンジ変化に比べてハードルが高い技術です。

※これを自社で開発している所もあれば、「ミドルウェア」と呼ばれる「必要に応じて買うことができるゲーム開発用ツール」を使って実現している会社もあります。
※任天堂は一般的な波形再生技術ではなく昔ながらの譜面再生(MIDIファイルのような形式)技術で実現している事もあり、少し方法が違います。

開発者の間では、DAW(作曲ソフト)上で横に並んでいる音楽の時間軸で区切った部品を使うことから「横の遷移(Horizontal Resequencing)」と呼ばれています。


「アレンジの変化」 と 「展開の変化」

以上の2つ。

1.アレンジの変化=縦の遷移(Vertical Remixing)

2.展開の変化=横の遷移(Horizontal Resequencing)

が、多くのゲームで使われています。

今回はFF15の動画とゼルダの伝説シリーズを対比する形で紹介しましたが、
皆さんの遊んでいる/遊んだことのあるゲームにも同じ種類の工夫があるはずです。

是非、みなさんの体験した音楽演出を教えて下さい。あるいは、「あのゲームの音楽好きだったけど、もしかして…!」と思ったら、もう一度プレイして確かめてみるのも面白いと思います。

以上のスライドは、CEDEC2016にて私が発表したFF15に使われているインタラクティブミュージックシステムの説明をするために利用したものから引用しました。

これを発表したときに、取材もされたしきっと記事になって一般の人にも届いてくれるだろうなーと思っていたし、なぜか一本も記事が出なくて、私の渾身のインタラクティブミュージックに関する日本語の情報がまったく広められなかった事を今でもちょっとだけ恨んでいます、ちょっとだけですよ、えぇ。(#^ω^)


おまけ


連載のつづき

こんな感じで、インタラクティブミュージックの事例や技術、工夫を紹介していきます。

メインはゲームを楽しむプレイヤーの方向けに
「ゼルダ」を始めとしたゲーム作品でどのような音楽変化が使われているか?
その背景となる技術や工夫はどんなものか?
ゲームの音楽はこれからどうなっていくのか?どんな葛藤があるのか?
など、ゲーム音楽が好きな方に興味を深めてもらえるような内容にしていこうと思います。

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ゲームと音楽の関係性

ゲーム音楽の鳴らし方には、どのような工夫が詰まっているのか?大好きなゲームの音楽にも、あなたの知らない「インタラクティブミュージック」が隠されているかも。ゲームと音楽の関係性に迫る連載です。
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