見出し画像

一人で勝手に死ぬ前、90年代とスクールカーストを語る (実話本編5)

5.少年誌からヤング誌へ
時代-『桜通信』、『稲中卓球部』、『聖龍伝説

 テレビ番組の課題を一つクリアしたところで、今度は漫画の話題が少年誌からヤング誌へと切り替わっていった。周りが大絶賛するのが『稲中卓球部』で、私の認識ではエロ本だった。頭の中でアダルトビデオの『アダルト』と『ヤング』は同意語で、エロくないのが少年マガジン、エロいのが『ヤングマガジン』という印象だった。現に少年サンデーコミックス欄に並べられているコナンと、ヤングサンデーの欄に山積みされている『桜通信』では表紙からして全然違う。
ヤング誌の『稲中卓球部』を持っていた子のほとんどが、「兄ちゃんから借りた」と口にしていたので、中学生はヤングでもっと上だとアダルトマガジン、アダルトサンデー、アダルトジャンプなのだろうか? あと、アダルトガンガン・・・・・・。
 借りて読んでみたけどギャグは頭に入らず、乳首が隠されずに描かれているところばかりが気になった。やっぱ、エロ本じゃん・・・・・・。

 男子は性に目覚めると、一気に突き進む。つい最近まで安達祐実の『聖龍伝説』ごっこ遊びをしていたノリくんも、R18まで一気に飛び越えようとしている。
クラスのジャーミーくんが、兄ちゃんの洋物アダルトビデオ-『ハイスクールエロチカ』を手に入れたらしい。ジャーミーくんは二年程前転校してきたハーフの子で、初めは拙かった日本語も流暢に成っていた。クラスメイトとは上手くいっていない様子だったけど、こういうときに限って結束力は強い。ジャーミーくんのよく口にするギャグは宮本武蔵の名字を“近藤”に変えた「コンドームサシ」で、加トちゃんケンちゃんの言う「うんこちんち○」よりもヤングなギャグだった。
「AVって、あの志村けんのコントで見るやつか?」
「あれな! おもしれーよな」
 ベタなコントで、まず志村けんがアダルトビデオをデッキにセットする。そこで隣にティシュペーパーを置いて見ようとするけど、トラブルが度々起きて困るという内容だった。
 この時代のテレビは『電波少年』や『元気が出るテレビ』など、本当に過激だった。マスゴミなんて言葉は無かった時代にエロあり、暴力あり、不謹慎ありで視聴率を全力で取りにいっていた気がする。あれから時が経ち、今ではyoutuberの迷惑行為が話題になっているけど、子どもはなんとなく理解しないで笑っている・・・・・・のだと思う。現に私はあのコントで笑っていたのに、学校ではこんなことを口にしたのだから。

「俺は行かないけど、鼻血出ないようにティッシュ用意しとけよ」
 私がそう言うと、ノリたちはキョトンとした顔をする。エッチなものを見ると、鼻血が出る。そのために志村けんは、ティッシュを用意したんじゃないの?
私一人だけ、話が噛み合っていなかった。

 ジャーミーとノリ君一派がAVデビューしている最中、私は中古のゲームショップへ向かっていた。家族の空気がピリピリしている中、バレて親へ報告されるようなことはしたくないし、普通にハイスクールエロチカよりレトロゲームを収集したかった。
 ゲーム業界ではハード戦争が勃発している真っ只中。藤岡弘の『せがた三四郎』のCMはイカしてるけど、プレステ派のほうが周囲では多かった。
私は時代と関係無しに、唯一持っているハードのゲームボーイが相変わらず好きだった。マイブームは中古でゲームボーイの隠れた名作を見つけることで、毎日お店に通ってはパッケージを物色して隠れた名作をリサーチしていた。そこで目に止まったのがヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』をパロディった、『カエルの為に鐘は鳴る』だ。
 このときハイスクールエロティカ・ルートを選ばずに買ったこのソフトは、20年以上経った今でも宝物として持ち続けている。

 学校の勉強より、受験用の勉強をする子が増えていた。学校の勉強もこどもちゃれんじも疎かにしている私とは違い、日能研やZ会での勉強をしっかりやらないと中学には合格しないらしい。
 エロ男子たちの行動は過激度が増し、最近では女子が教室に居ない間にリコーダーを舐めたり、あそこに擦り付けたりしたのを自慢していた。相変わらず周りとは仲良しだったが、理解できない行動をする人たちが増殖している。舐めるのも気持ち悪いし、あそこに付けるって・・・・・・なに?
 恋愛や性について、全くもって理解できない。自宅の漫画もゲームも悪と戦う題材ばっかりだったし、女子がキスに憧れるのもワケワカメだ。キスで交換するのは唾液で、唾液ってあの朝、口から溢れて枕に付いているヨダレと一緒だ。汚いし臭いし、やっぱ意味プー、クマのプー太郎だ。
 セックスについてなんとなく教わったけど、それでも両親がそんなことをして自分が生産されたことが疑わしい。
 父は相変わらず「一家の大黒柱」だの「俺が稼いでる」だのと口にする。あんなウザくて酒臭い人と裸で抱き合って、そんなことをするほど母は気が触れてはいないと思う。
 学校はまだ楽しかったけど、家の人たちと一緒に居るのが苦痛に成りかけていた。特に兄の言動は酷さを増し、些細なことで殴ったり、人のものを壊したりやりたい放題し初めた。そんな行為を強く注意しない母もムカつく。友だちを自宅に招いていた時期もあったけど、この頃から誰も家には呼ばなくなった。クラスメイトから「山田ん家の前を通ると、いつも喧嘩してる声が聞こえる」と言われたくらいだし、こんな状況で家に誰かを招き入れたくない。
 片付けが苦手で『BB戦士』や漫画が足場の無いほど散らばった部屋だったけど、自分だけの空間は居心地が良い。鍵が付いていない扉を背中で強く押して、いつも心の中で呟いていた。
 ずっとこの扉を閉じたまま、時間を過ごせたらいいのに・・・・・・。

本編6 小学生編最終話へ
https://note.mu/geekmogura/n/n77343486a573

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

へえー 1へぇ
11

山田 葉介

1990年代実体験を一週間テスト連載。スクールカースト形成前の小学生編 1話 https://note.mu/geekmogura/n/n75d2abc95872  連絡用Twitter https://twitter.com/Geekmogura

一人で勝手に死ぬ前、90年代とスクールカーストを語る

東京のような神奈川のような街で起こるノンフィクション
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。