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製作ノート(24)『ケソン工業団地』レポート

こんにちは!안녕하세요!キャスト&制作チームの大石です。
『珠光の庵』には2017年の福井公演から出演させていただいております。2017年からは12月や1月の公演が続いたため、毎年稽古の時期になると「ああ、今年も珠光の季節だなあ」と冬の訪れを感じさせられ、まるで季語のようなライフワークになりつつあります。

さて、韓国語版製作に向けて、「さっさんの韓国語講座」でハングルを勉強中の僕ですが、「もっと韓国の事知っておきたいなあ」と考えていたところ、KYOTO EXPEROMENT 2019の公式プログラムとして、京都芸術センターでグループ展『ケソン工業団地』が行われているという事を知り、先日、植村さんと行ってきました。

ケソン工業団地については恥ずかしながら全く詳細を知らなかったので、KYOTO EXPERIMENTのサイトとインターネットで軽く予習をしたところ、「南北協力のシンボルとして、北朝鮮が土地と労働力、韓国が資本と技術力を提供して開始された工業地区」の事だそうです。
何となく、“政治”という言葉とイメージが結びついて堅苦しい雰囲気の現場を想像していきましたが、それは良い意味で裏切られることになりました。
それでは、『ケソン工業団地』の旅に、さっそく行ってみましょー。


エントランスに入ると「ケソン工業団地の24時間」という映像に迎えられる。バスに乗って出社する人、歩いて出社する人、一緒にご飯を食べる人、休み時間に談笑する人、等々の風景が流れている。印象に残ったのは、KEXの公式サイトの画像からミシンのイメージ(公式サイトの画像引用するのが憚られたので、リンク先参照です…!)がかなり強かったのだけど、衣類品だけでなく精密機器?みたいなものも多く作られているみたいだった(当たり前といえば当たり前だけど、、)。

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次に一階の奥、ギャラリー南で展示されている《ケソン工業団地、北からの労働者》《ケソン工業団地、南からの労働者》《ドラ展望台から見たケソン工業団地》を見に行く。
ここには、北朝鮮と韓国の労働者が一緒に写っている写真、お互いにプレゼントしあったお菓子の写真が展示されていた。ここに写っている人たちは、言われなければ北朝鮮と韓国の人だと絶対に分からない。国境も政治も関係なく「シンプルに仲の良い友達」の日常の一コマだった。

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ギャラリーを見終わった植村さんと僕は、場所的に近い3Fの資料展示に行こうと思うものの、配られたパンフに書かれた番号順に周った方が物語的には良いだろうということで、講堂の《Brothers Peak》を見に行く。
映像作品なので写真は撮っていないが、講堂の中心に一つの大きなスクリーンが置かれていて、東側には棺を背負って山を登る男性が、西側にはケソン工業団地の作業の様子や当時のニュースの映像、廃墟になったケソン工業団地の内部?の映像が流れていた。
そういえば、さっきのギャラリー南での展示も、一枚のパネルの片面に「北からの労働者」の写真が、もう片面には「南からの労働者」の写真が映されているものがたくさんあった。ふと、“背中を預ける”という言葉が頭をよぎる。あるいは“表裏一体”のような密接な関係か。

ところで、僕の裏の垂れ幕のハングルの読み方が分からない、、どなたかコメントで教えてください、、。(ㄹがrの音なのだけ分かる)

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映像を見終えた後、奥の大広間に向かう。(この展示には全く関係無いけど、僕は芸術センターの大広間といえば和室のイメージだったので、西部講堂の舞台みたいな木張りの床になっている事にテンションが上がった。)
大広間では《Robo Cafe -労働者支援グッズカフェ》が展示されていた。一転、ポップな色彩に目を惹かれる。この展示会を周ってきて色んなハングルのフォント見たけど、ハングルってかわいいなあ。特に色んな色を使ったデザインがめっちゃマッチしている。ポケモン世代の僕らとしては“アンノーン”の事も思い出して、生き物を見ているみたいな気持ちになる。そして、この色彩のカラフルさが、これまでの展示を見てきて今想像している、当時のケソン工業団地の明るい雰囲気をより強く想起させられた。

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ここで一緒に働いた友人たちが、今は普通に会うことすら難しくなっているのかと思うと心が痛む。


この前のコリアフェスティバルのレポートで、西井さんは、「文化は人が作っていて、人が守っているもの」と言っていた。
僕もこの展示会で“人”を強く感じた(そもそもこの展示会の原題も「The People of Kaesong Industrial Complex」なので、その通りではあるのだが)。
国とか政治、経済みたいに主語が大きくなると見えにくくなってしまうけど、何よりもまず「人」、「個人」で社会は形成されている。
そして半ば強引に公演の話につなげると、演劇公演も企画側やお客様の「個」で形成されている。
いつもの珠光公演メンバーと、スヨンさん、ギフンさん、ウンギョンさんと、そして公演を観に来てくださる皆さんやお気にかけてくださる皆さんと一緒に作品を作れる喜びと意味を噛み締めながら、まずは2月の京都公演に向けて、突っ走って行きたいと思います。


2019年10月21日
大石達起

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「KYOTO EXPERIMENT」は、今週末27日まで!
最終の26・27日は、サイレン・チョン・ウニョンの公演もあります。
https://kyoto-ex.jp/2019/

どうぞみなさん、京都の秋をお楽しみください。


『珠光の庵〜遣の巻〜』韓国語版 2020年2月京都初演
●チケット先先行販売のお申し込み受付中!!
https://dbf.jp/fueki/kaika/200208/
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劇団衛星の活動継続と公演の実現に向けて、みなさんのサポートを、ありがたく受け取っております。応援ありがとうございます。