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【特別読み物vol.2】 ファックジャパンの学会潜入レポート

ファックジャパンです。よろしくお願いします。

過去、劇団衛星では、
「珠光の庵」

でお茶会演劇を創作し、
「大陪審」や「控訴審」

では裁判劇を創作し、
その都度、作品づくりの一環として「お茶会」に潜入したり、「裁判」を傍聴したりしてきましたが、遂にこの度は、「学会」なのであります。
そうです。劇団衛星は現在、世にも珍しい「学会演劇」を創作しているのです!
ありがとうございます。
よろしくお願いします。

「学会」という言葉を辞書でひけば、
「同じ学問を研究する学者の団体(‐の会合)」
と、出てまいります。
ううむ。
「お茶会」や「裁判の傍聴」に行く前にあった「・・・どうしたらええんやろう?」という怯えや恐れ。(結果的にどちらもそれは杞憂にすぎなかったのですが。)
それが今回はありませんでした。
むしろ今回は、
「言うなれば客やん? 発表を聞いて、見聞を広められるやん?」
という完全なる受け身&呑気な、若干ウキウキした感じで、気持ちが高陽してくるではありませんか!

と、いうことで。
3月某日、私は京都にて行われた「M学会」に出席してきました!

会場に着くと、受付で分厚い資料を一式いただきます。なるほど、こちらを参照しながら発表が進んでいくのだなと、さらに期待はふくらんでいきます。
ちらりと中を確認しますと、そこには2種類の資料が。

本日の発表は、
・「狐」伝承に関する研究
・「育児儀礼」に関する民俗学研究
の2組のようです。

ああ、もうすでにタイトルだけでヨダレが出てきました。面白そうではありませんか。
中にはすでに20〜30人ほどの人がいて、私にとっては意外でしたが、とても和気藹々としたムードです。しかも皆様、声のボリュームが1メモリほど高いというか、普段より一回りテンションが高い、そういう類の和気藹々さなのです。
会場内にはいかにも大学の先生っぽい方々が半数以上を占めておられて、学生風な若者も2~3割いらっしゃいました。中には、信じられないぐらいビッチリキマったスーツ姿の方もチラリホラリいらっしゃいます。そして、カテゴリ分けをするならば「謎」に部類されるであろう方々も、私を含めて数名いらっしゃいます。
謎なのが私だけでなくて良かった、と、ホッと胸をなでおろしました。

時間が来て、司会役の大学の先生が一通りの挨拶と、本日のタイムテーブルを確認してくれました。なんでも、本日は発表が2組なので、発表60分、質疑が30分設けられるとのことで、時間はタップリあるようでした。
1人目の方の発表が始まります。
急に会場の和やかさは薄まり、発表に対して皆真剣になっていきます。発表者の方の声と、資料をめくる音だけが会場に響きます。
この辺は私の知っている小劇場の世界に例えさせてもらうと、「間もなく始まります」というアナウンスから客席の電気が消えていく時の、あの感じに似ているなと思いました。
皆様、対峙していくような感じです。
基本的にはおそらく発表者の方が用意してきた台本にそって発表は進み、緊張感を持ちながらも、あくまでも淡々と進んでいきます。

学会という場所は、
「同じ学問を研究する学者の団体(‐の会合)」
なのです。
同じ学問を研究しているもの同士の集まりなのです。
皆、同業者なのです。
私のような、与えられた情報をただただ消費しようとするような人の集まりではなかったのです。
1人目の発表が終わって10分の休憩時間になると、当初の和気藹々が戻ってきます。
ただ、やはり先ほどの発表の余韻も残っております。
先ほどの発表の感想など、いろんなところでいろんな人がいろんな話をしています。
発表者が質疑で意見を述べられた方のところに行き、そこで先ほどの質疑の続きの話をしている場面も見受けられます。

資料を見ながら対話は盛り上がっているようです。
発表者の方も先ほどの淡々とした様子とは違って、和やかな雰囲気になり、表情も豊かになっていきます。
トイレに行っても、
「“つくり物の話”だから、収集して研究するのは難しいんだよね」
「翻訳の問題は質問しようと思ったんだけどね」
なんて言いながら、先ほどの発表に対して色々話す人たちもいます。
また小劇場の例え話で恐縮ですが、終演後の関係者同士のトイレでの会話みたいでした。
やがて2人目の発表者の方の時間になりました。
まだあまり経験のなさそうな若い方で、発表は淡々というよりは緊迫感に包まれておりました。おかげでというわけではありませんが、発表に関しては先ほどの方よりも速度がゆっくりで、初心者の私にはついて行きやすい内容でした。

終わった後の質疑の時間も白熱しておりました。
発表した研究者のために質疑しているような、そんな場面もあったように思います。

芝居はお客さんと共につくるというけれど、
私の行かせていただいた学会も、雰囲気は、発表者ではなく、会場に集まった方々がつくっておりました。
発表の内容は勿論ですが、大切なのはその研究対象に対する興味の深さなのかもしれないということが、新参者の私には感じられました。
その興味の深さが変態的になればなるほど「学者」に近づいていくのでしょうか?

                                                                               <文責:ファック ジャパン>


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