劇作家女子会。は誰もが尊重される演劇製作の過程と上演を求めます。

私たち 劇作家女子会。は、女性劇作家4人の団体です。2018年からは、演劇公演だけでなく、演劇界におけるセクシャルハラスメント、パワーハラスメントの問題を改善するためにも活動を行ってきました。
その一つが、演劇製作の現場で使えるオープンソースのハラスメント対策ガイドラインを作成することです。そのために様々な方に取材をし、ご意見を聞き、対談を記事にして公開してきました。しかしその間にも演劇界では沢山のハラスメントが行われてきたことが明るみと出ました。
もしもっと早くガイドラインが出来ていればそれを防ぐ一助になれたのではないかという思いから、私たちはこの度ハラスメントに対するステイトメントを発表することにしました。

多くの演劇は、年代も性別も異なる複数のアーティストが関わって、一つの作品をつくり出すものです。そして、観客に出会うまでの一定期間、稽古場ではある程度の閉鎖性が必要とされます。不均衡なパワーバランスが存在する閉鎖的な空間は、ハラスメントや暴力が起こりやすい場所でもあります。
いま自覚できるもののみならず、自覚できていないものも含め、私たちも不適切な言葉と行動でハラスメントに加担してきた過去があると思います。こうした声をあげる資格が自分たちにあるのか。声をあげて何かを変えられるだけの力が私たちにあるのか。自問すればするほど、これまで正しく振る舞えたわけでもなく、これから決して間違わないとも言えない自分たちのことが頼りなく思えます。
しかし、現在のハラスメントや性暴力を受けたアーティスト(今は演劇活動や俳優をやめてしまった人を含む)たちの告発を私たちは受け取りました。2017年の演劇業界の #MeToo での告発も忘れ難く残っています。
揺らぎも迷いもありますが、私たち 劇作家女子会。は、多大なリスクを背負いながらも勇気を出して声をあげてくれた彼らに敬意をもって、連帯の意志を表明します。

これから、 劇作家女子会。の公演では、ハラスメント講習の実施やガイドラインの作成、演劇製作の過程でハラスメントを行わないという宣誓を契約時に交わすなど、全てのアーティストが尊重される環境づくりを行っていきます。そして私たち4人が劇作家として関わる現場でも同様のものを求めます。また、私たち自身もハラスメント加害者となる可能性があることを意識しながら行動していきます。
ハラスメント被害にあい現場を去っていくアーティストに対し、これまではしばしば彼らが至らないために演劇現場から見限られたのだと思わされてきました。しかし、アーティストが被害にあって現場を離れていく時、見限られているのはアーティストではなく演劇製作の場の方です。もう二度とこのようなことがありませんように。

このステイトメントが、演劇製作現場における環境改善、そこで起きるあらゆるハラスメントへの抑止に少しでもつながることを望んでいます。
また、被害者の孤立を防ぎ、被害者への二次加害の抑制の一助となるようにも願っています。
芸術活動の名の下に人権侵害が横行することのない、誰もが尊重される演劇製作の過程と上演を、私たちは求めていきます。  

2022年5月12日 
坂本鈴、オノマリコ、黒川陽子、モスクワカヌ


劇作家女子会。は「死後に戯曲が残る作家になる」を目標に集結した、坂本鈴、オノマリコ、黒川陽子、モスクワカヌによる劇作家チームです。 演劇公演やイベント、ワークショップ、noteで対談記事を公開する等の活動をしています。 私達をサポートして頂ければ幸いです!