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サンシャイン坂田の夜の高鳴り『芸人の休日』

芸人の休日


皆さんは休日どのように過ごしてるだろうか?

日頃の仕事での疲れを癒す為に、お昼まで寝て家でのんびり過ごす。
または外に出て、映画やショッピング、趣味に打ち込んだり、家族や恋人、仲の良い友人たちと外食。色んな過ごし方があると思う。

しかし、売れてない若手芸人にとって休日とは、定義が曖昧なもので。

ありがたいことに、僕でさえもほぼ毎日劇場の出番やお仕事がなんかしらある。だからと言って、じゃあ休日皆無毎日大忙しとは胸張って言えない。なんだかんだ出番と言ってもネタ時間5分だけの1ステで1日が終わる日も多いし、そもそも300日以上は昼過ぎからの稼働なので、毎日めちゃくちゃ寝てる。
なんだか忙しいそう風に見せてる時もあるが、別にネタ作りと称してただぼんやりと考え事してるだけの時も多々多々ある。だからと言って今日は出番が1ステだけだって日も、夜の1ステのことがずっと頭の中にあるし、合間にライブや諸々の打ち合わせがあったり、なんかしら提出しなきゃいけない宿題に追われてたりと、100%の休日は中々無い。


そんな中1ヶ月前に、休日の極み。休日の果て。休日の嵐。
OH!KYUZITU!!!
そんな1日があったので紹介したい。


その日は先輩のダイタクの大さんと駅のロータリーで待ち合わせ。そこにダイタク拓さんを助手席に乗せた、相方のぶきよがレンタカーで迎えにくる。車の向かう先は、戸田競艇。僕らのディズニーランド。エレクトリカルエキサイティングパレードの順位を当てたら、ご褒美が貰え、外せば没収の合法脳汁ランド。


とはいえ、日頃から365日お世話になってる兄貴のダイタクさんと地元のツレのぶきよと、休日にレンタカーを借りて戸田競艇はもはや小旅行。楽しみすぎて前日の夜中3時にイカのお寿司10貫とカップラーメンぶち込んでしまった。
子どもは遠足の前日に眠れなくなるけど、若手芸人の大人は前日に不眠暴飲暴食。二日酔いと腹パンで出発。最高のスタートだ。


車の中で、地元福岡みやま市から届いた山川みかんというこの世で1番の甘みを4人で味わう。旅にみかんは付きものだ。車中、高速のどこから乗って降りるかというだけでわちゃわちゃとトークは絶えない。あまりの天候の良さに、ドライブ日和ならぬギャンブル日和だと4人の心は踊った。


元々、競馬はやっていて競馬場にも足を運んだことは何度もあったが、競艇は初めてで。生のボートの迫力、競艇場での生の警備のおじさん、生の新聞もって悩んでるおじさん、生のタバコ吸って遠くを見ているおじさん、生の歯が無いから笑ったら宇宙のように口の中が真っ暗なおじさん、ほぼ生のおじさんに夢中になってしまった。実際にこういう競艇場や競馬場などに偏見を持ってる方、一度で良いから遊びに来てほしい。100円から出来るし、何よりこの生のレースの迫力。やっぱり生のヒリヒリを感じる現場に限る。


着いたら、食堂で昼から生ビールとカツカレーを食べる。至福とはこのこと。美味すぎるやろとキレ喜びする僕らに、母親と同年代であろうこの食堂のお姉さんが「さあ、勝たないとね」と背中を押す。そう、あとは勝つだけだ。

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競艇はボート六艇のレースで、色んな賭け方があるが僕は1.2.3位を順番に当てる3連単という1番当たりにくいがバッグが大きい賭け方をベースに賭ける。男は黙って3連単。誰が言ったか分からないが、誰かが言った名言。男は黙って3連単なんだ。初めての1レースは1,000円かけて、見事ハズした。大丈夫、最初はこういうもんさ。


ダイタクさんとのぶきよに色々と教えて貰いながら、次は1,000円、2,000円、3,000円。鼓動する心臓に比例していく掛け金。3レースで見事当たり、10,000円当たり。そっから2連で当たり、収支プラス20,000円。来た来た来た。周りを見れば、ダイタクさんものぶきよも順当に当たっており、みんなで飲んで食って遊んで、お金まで稼ぐ。おいおい、バチ当たるんじゃねーか、ガーハッハッ。僕らはもうすでに三杯目のハイボールを呑んでいた。止まんない。誰か止めてくれよ俺らを。誰も止めらんねーよな。最高の休日だ。さあみんないくよー!せーの、


KYUZlTU!!!!\(^o^)/!!!!


3時間後。死んだ魚の目をした3匹が夕日に照らされていた。
坂田30,000円負け、大40,000円負け、拓40,000円負け、

のぶきよ2,000円勝ち。


なんでやねん。結局こうなる。のぶきよだけ気持ち悪いちょい勝ち。なにしてんねん。ちょっと勝とうとすんな。あと2,000円賭けろや。


そして帰りに、駅近くの老舗の鉄板焼き屋で死ぬほどお好み焼きともんじゃ焼きを食う。

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美味すぎて涙が出る。そこでもネットで競艇ができるからと、ネットでも賭けるダイタク。とことんな兄弟だ。一喜一憂してたら、隣のテーブルでも一喜一憂するおじさんがいた。あまりにも同じタイミングだから何かと気にしてたら、しっかり同じレースに掛けてた。


「いやー負けたね〜。てか、ダイタクさんですよね?M-1敗者復活見てましたよ!」


まさかの隣の同時多発一喜一憂おじさんがダイタクさんのことを知っていて、これまたひと盛り上がり。ガハハと笑い、これだけ出来りゃあいいわ。高い飯や高い車や高い家に住まなくても、気の合う仲間と酒呑んでお好み焼き食ってずっと笑えてればいいや。それが最高だよな、そう言って僕らはこの日10杯目の酎ハイを喉と心臓に流しこんだ。

駅前で拓さんとのぶきよと別れ、もう一杯行くかと大さんとバーに。夜はまだ終わらない。久しぶりにモヒートを呑み、そのあとはウイスキーロックで乾杯。渋い夜だぜ。

「競艇もだけど、競輪もしびれるぞ」

そう言って僕はウイスキーロックを嗜みながら、気づいたら10,000円負けていた。

「ご馳走様でした、、、」かろうじて喉から振り絞り声を出したときには、右手を上げた大さんは闇へと消えていた。

次の日、クリスマスイブ。40,000円を取り返そうと気付けば、駅前のパチンコ屋に座っていた。エヴァの新台、40,000円ストレート負け。2時間もかからず、40,000円が消えた。昨日の小旅行1日分が2時間で終わった。家賃以上のお金を2日で失い、目と耳と鼻から緑の血が出た。顔がしっかりグニャリと音を立てて曲がった。
今年の冬のコートどうしようかと、10,000円のコートを店先でここ1ヶ月間ずっと悩んで買わなかった自分を殺したい。10,000円のコートに1ヶ月悩むのに、80,000円ノーシンキングでぶっこむの、どういう理屈?これどういう脳のシステムなんだろう?お願い、誰か教えて偉い人。優しく丁寧に、じゃないと泣いちゃうから。まじ頼むわ。

この話を先輩にしたら、ネルソンズ岸さんとマチルダのグチヤマさんからコートを貰えることになった。いっつもこうや。なんとかなる。この冬もなんとかしのげそう。兄さん方に感謝のみ。ありがとうございますの日々。


地獄だと思った休日も、今振り返れば2021年のベスト休日だった。

2022年も、最高も最低も全部抱きしめていきたい。


あなたのベスト休日はなんですか?

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サンシャインINFO


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著者/ サンシャイン・坂田光





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