楽しめない夏が来る

こんばんは。
そいつどいつ松本竹馬です。

このコラムは寝つきの悪い僕が寝れないときに書くコラムです。

前回は幕張イオンモール劇場、そして前々回はカリスマ性についてなど、お笑いに関することが多くなってるのですが、今回もすいません。
この時期なので、芸人にとっては切り離せない、夏の一大賞レースについて書きたいと思います。

僕は昔から夏が、1番好きだ。
海も山も川も全部好きだし、青空の入道雲も蝉の鳴き声も蚊取り線香の匂いもテンションが上がる。
でもきっと夏が1番好きなのは、子どものときから夏休みというのがあったからだと思う。
小学校の終業式が終わった後の、今から夏休みだというときの、あの思わず走り出したくなるようなワクワク感と解放感。
あれを超えるものはこれからの人生でもそうないと思う。
小、中、高、大と全てに夏休みがあったし、毎回夏休みになる度にワクワクしていた。
夏休みの度に家族旅行にも行ってたし、夏休みにはたくさん楽しいイベントもあった。
プール、夏祭り、バーベキュー。

でも芸人になると、そこにもう一つ大きなイベントが追加された。
そう、キングオブコントだ。

コント師の日本一を決める大会、キングオブコント。
これの予選がちょうど夏ド真ん中にあるのだ。

キングオブコントは大体、一回戦の予選が6月に始まり、二回戦が7月下旬〜八月上旬、そして準々決勝が8月中旬、準決勝が9月上旬というスケジュールだ。
つまり準決勝まで行けば、9月までずっとコントと向き合い、緊張し続けなければならない。
キングオブコントは一年間作って磨き続けたコントの集大成を見せる、コント師にとって1番大事な大会だ。
とてもじゃないけど、大会が終わるまでは「夏を楽しむぞー！」なんて気持ちになれないのだ。

1、2回戦で負けてた頃は、まだ夏を楽しめた。
もう7月下旬には負けて終わってるのだから、そこから残りの夏を遊べばいい。
でも芸歴を重ねて、これが準々決勝、準決勝までいくと、そうもいかなくなる。
緊張しながら常に臨戦体勢でコントと向き合い続ける間に夏が終わる。
それにある程度、芸歴を重ねて力がついてくると、負けたときにちゃんと悔しい。
負けた後も「よし、じゃあ残りの夏遊ぶぞー！」なんて簡単に切り替えられずに、泥のように落ち込んでる間に夏が終わるのだ。

つまりキングオブコントの予選が夏に開催される以上、僕たちコント師は夏を全力で楽しむことができない。
仮にちょっと息抜きで遊んだとしても、常に頭の片隅にはキングオブコントがちらついてるし「ライバルのあいつはこうしてる間にもネタを仕上げてるかもしれない…」と焦るのだ。

なんでキングオブコントの決勝は10月にあるんだ。そのせいで予選が夏ド真ん中と被ってしまう。
もっと4月とか5月とか、M-1みたいに12月とかそういう時期にやってほしい。
僕はあんなに夏休みが好きだったのに、芸人になってからは、全然夏休みを楽しんでない。
夏があんなに大好きだったのに。

一回自信がめっちゃあったのに二回戦で落ちた年、「これから切り替えて夏を楽しむぞ！」と当時付き合ってた彼女とディズニーシーに行ったが、落ち込みすぎてセンターオブジアースの待ち時間で120分中、117分一言も喋らなかったら、当時の彼女にめっちゃキレられた。
予選を勝ち進もうが、負けようが、夏なんて楽しめないんだ。

去年初めて決勝に行くことができて、そのときは楽しんでこなかった夏が、初めて報われた気がした。
でも結局、決勝は8位という結果に終わり(色んなメディアでは6位と嘘ついてる)残ったのはやっぱり悔しさと「夏を犠牲にしたのに…」という報われない気持ちだった。

僕らコント師にとって夏を全力で楽しむための方法は一つ、「キングオブコント優勝する」それしかないのだ。
キングオブコントに優勝して賞レースの螺旋からさえ抜ければ、次の年からもうキングオブコントに出る必要はないので、気兼ねなく夏を楽しむことができる。

去年、一期上の空気階段さんが優勝した。
「おめでとうございます」と駆け寄った僕に、かたまりさんが言った第一声が「これで、夏を楽しめる！夏休みだー！」だった。
めちゃくちゃ羨ましかった。
賞金の1000万よりなにより、僕は空気階段さんが来年からの夏休みを手に入れたことが、死ぬほど羨ましかった。

僕は今年こそキングオブコントで優勝して、来年はマネージャーに言って、ガッツリ夏休みを取りたい。
そして旅行で海外に行く。よく考えたら人生で一回も海外に行ったことない。宮崎の大学にいた時の卒業旅行も大分だった。
マジ海外行きたい。初海外は絶対、夏休みに行きたい。
てかなんなら、番組で番組のお金で行きたい。
有吉の夏休み的な番組、マジ羨ましい！あんなん最高すぎるやろ！
仲良い芸人と女優とかアイドル連れて、旅行なんてこの世の王様やん。
てか有吉さん賞レース優勝してないのに、最高の人生送ってる。
マジ羨ましい。

あー！マジ優勝したい！！
夏休み…！！

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著者／ そいつどいつ・松本竹馬