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なぜ辻井は「生まれ変わるならなりたい芸人」No.1なのか? “愛される兄さん”アイロンヘッドの胸の内

今春の∞ホールリニューアルで、劇場の顔となる看板芸人20組が「ムゲンダイレギュラー」と命名された。その中には、2018年に一度は劇場を卒業したアイロンヘッドも顔を揃えている。

「月刊芸人」が実施した「看板芸人に聞く"20の質問"」企画では、「ムゲンダイレギュラーの中で生まれ変わるなら誰になりたい?」という質問に、多くの芸人が「辻井さん」と回答。後輩から慕われていることが周知のこととなった。
ネタ番組への出演も増加中の“兄さん”たちに、劇場のこと、ネタのこと、そしてこれからの夢を聞く。

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「何回でも∞に戻ってきていいんやと思ってます」

――この春からムゲンダイレギュラー20組に入られました。アイロンヘッドさんは2018年に一度∞を卒業されてますよね。卒業してまた戻ってきた形ですが、自分たちではそこはどうとらえてるんでしょうか。

ナポリ:いや、それを言い出したらうるとらブギーズさんは4回くらい戻ってきてるんで……(笑)。

辻井:そうっすね。兄さんたちが何回も戻ってきてるのを見てたんで、何回でも戻ってきていいんやと思ってます(笑)。

ナポリ:18年に卒業が決まったときも兄さんから「いや、お前たち絶対戻ってくるから」って予告はされてたんで、「ついにそのときが来たか」と。
成長した自分たちをまた見てほしいと思います。

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――2016年に上京して2年余りを∞ホールで過ごされていたわけで、当時と今とで劇場の雰囲気に変化はありますか?

辻井:楽屋がすごい活気づいてるなと思いますね。僕らが来たてのときって、ちょうど劇場のシステムが全部変わったばっかりでみんな「どうしたらええんや」みたいな、愕然としてる雰囲気やったんですけど。

ナポリ:最初来たときはちょっとどんよりしてましたね。さくらももこさんのマンガみたいに、縦の線が入ってた。

辻井:当時ジェラードンさんなんか「2年くらい新ネタつくってない」って言ってましたもん。

ナポリ:そら珍しいな。

辻井:みんなのやる気がなくなってる状況やったという思い出はありますね。その頃に比べたら今は明るくて、キャッチボールとかサッカーとかしてます。

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∞レギュラー内で「生まれ変わりたい人」No.1の理由

――「月刊芸人」では「ヨシモト∞ホール看板芸人に聞く"20の質問"」という企画をやっています。その中で「ムゲンダイレギュラーの中で生まれ変わるなら誰になりたい?」という質問があって、「辻井さん」と答えてる人がかなりいるんですよ。たぶん一番多いと思います。

ナポリ:へぇーー!

辻井:え、マジですか!? うれしいな。


――うるとらブギーズのお二人、サンシャイン坂田さん、レインボー池田さん、空気階段かたまりさん、ゆにばーす・はらさん、オズワルド伊藤さんが辻井さんの名前を挙げてます。(※本取材後に公開された記事でスパイクの2人、大自然・里さんも同様の回答)

ナポリ:変なやつばっかりじゃないですか。

辻井:(笑)。そんなことないわい、みんな精鋭やんけ。

ナポリ:レインボーのいけちゃんもお前になりたいって言ってるんや。変なやつやん。

辻井:それは変なやつや。いや、でもうれしいですね。

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――ご自分ではなぜだと思いますか?

辻井:それこそ東京出てきたとき「東京の楽屋ってこんなにどんよりしてるんや」と思って、一日中絶対楽屋にいてこいつらと仲良くしようって決めてたんです。楽屋でサッカーしたりギター弾いて歌ったりして、学校みたいになっていきましたね。それで仲良くなって、たぶんちょっと慕ってくれたんかなと。好きなジュースも買うてあげて。


――∞の芸人さんを取材すると「とにかく辻井さんが楽屋で明るい」という話をよく聞きます。

辻井:アホなことしてたらそのまま舞台に持ち込めるときもあるんで。無理やりスイッチ入れなくてもいいですけど、お笑いの劇場なんでどんよりしてるよりは明るいほうが絶対いいっすよね。


――辻井さんがそういうことをしてるとき、ナポリさんは何をしてるんですか?

ナポリ:僕は自販機の前のたまりのところでゆっくりしてましたねぇ。辻井はそういうふうに楽屋を楽しく明るくするんですけど、僕は自分のスペースを見つけるのが大得意です。「ここ誰もいてないな、俺の領土にしよ」って思って荷物置いて、じっとしてるんですよ。そうすると誰かが「あれ? ここのスペース、めっちゃくつろげるぞ」って入ってくるんです。それで人が増えていっぱいになったら、また自分ひとりの良いスペースを見つける。

辻井:開拓してんねや。

ナポリ:そう。次は元喫煙所のスペースを狙ってます。

辻井:あんなん、もう倉庫やんか。

ナポリ:俺がライトを持ち込めば明るくなっていくと思うねん。荒野を拓いて居心地良くしていくんや。

辻井:いや、いいからみんなとしゃべれって(笑)。

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「僕ら、KinKi Kidsです」

――最近は『クセスゴGP』や『ネタパレ』などで歌ネタ、音ネタを披露する機会が多いですよね。今さらながら、ネタはどうやってつくってるんでしょうか。

辻井:歌ネタは僕がつくって、普通のコントは2人でつくって、って感じですね。

ナポリ:半々くらいですね。音楽に関しては僕はよくわからないのでノータッチで、設定だけ投げて、当日辻井が持ってきて。でも、難しいですよ。辻井は自分でつくってるから完璧なんですけど、僕は当日くらいに知らされるんで、ツッコミのワードが絞れてないまま舞台に立ってるときがあります。歌うのも曲作るのもマジですごいなと思うんですけど、その合間の決められた時間とタイミングでしっかりしたツッコミを入れないといけないんで、めっっっちゃ……嫌です。

辻井:嫌がってたん?(笑)

ナポリ:もっとゆっくりしゃべりたいのに、「今起きてるこの現象を3文字で言わなあかんのか?!」ってなるんで。

辻井:そうやなぁ、歌は言葉が流れていくからなぁ。テレビの収録だと「ツッコミが歌とかぶったんで、もう一回やりましょうか」とかすぐ言われるもんな。

ナポリ:自分たちが出た番組観てると、辻井の歌詞がテロップ2行になってて、その上に僕のツッコミも載るんで、画面がほぼ文字で埋まってるときありますね(笑)。

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――なるほど。歌の割合が大きいネタはどうやってできているんだろうと思っていたんです。「ここはこういう感じの曲で」と指定するのも難しそうですし。そこは辻井さんにお任せなんですね。

ナポリ:そうですね。多分、“辻井節”みたいなのもあるんだと思います。僕はわかんないですけど、「この人、こういうコード進行が好きなんやな」って詳しい人にはバレてるんだと思う。

辻井:KinKi Kidsみたいにしといたらええ歌になるから、だいたいそうしてんねん、俺。

ナポリ:辻井のつくった歌は、僕にとってはどれも新鮮で聞いたことない歌なんですけど、「◯◯の△△って曲に似てる」って絶対何かしら言われるんですよ。

辻井:全部KinKi Kidsやで、あれ。

ナポリ:そうなん? ほな書いといてください、僕らKinKi Kidsです。

辻井:パズルみたいな作業ですよ。主旋律とコードと、「ここをこう変えたら全然違う風に聞こえる」っていう。

ナポリ:お笑いに似てるんかな。「ここはこうなって、こうせんとウケへん」みたいな。

辻井:あー、わからへん。「これが音楽的に盛り上がる」とかは俺もよくわからへんから。

ナポリ:意味わからん作り方してんなぁ。漢字があって、みんなが同じ読み方してるからお前もそうやってるみたいなこと?

辻井:そうそうそう。だから俺はなんにもすごいことはしてない。

ナポリ:そういうことか。……今の絶対意味わからん例えやったな。

辻井:(笑)。俺もようわからんかったから「はよ終わってくれへんかな」って思ってた。

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ライブはウケてもスベっても自分の責任、だから納得できる

――なんというか、お二人はあんまりガツガツした雰囲気がないですよね。

ナポリ:ガツガツした人、います? 逆に。

辻井:おるやん。田渕なんか見てみ、「おらぁぁ!」っていくやん。


――若手の方を取材してるとやっぱり「めっちゃ売れたい」という感じが強いので、それに比べると落ち着きがあるなと。

ナポリ:僕は本気で売れたいと思ってますけどね。

辻井:言い過ぎたら恥ずかしい部分もあるよな。

ナポリ:いや、もう言っていってええと思うねんけどなぁ。この歳やし。若さとは違う、年相応の「売れたい」って意欲は出してますよ。

辻井:ふつふつとしてる?

ナポリ:そうそう。どう売れたいかにもよってきますよね。無理せず売れたいという……いちばん売れなさそうなスタンスとってるな(笑)。


――理想的な売れ方はどんな感じですか?

辻井:僕はずっとライブでご飯食べたいなと思ってます。そのためにはテレビも出なきゃダメでしょうけど、マジでライブがいちばん楽しいです。今は配信もあるんで、そこで売れたらそのぶん稼げもするでしょうし、ライブでも食っていけるチャンスはあるんかなと思ってます。

ナポリ:たしかに。60億人が観るチャンスあるもんな。

辻井:世界が見れるわけやからな。

ナポリ:僕もライブがいちばん面白いですね。テレビもちょいちょい出させていただいて、おいしさとか楽しさもわかるんですけど。

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――あらためて、芸人さんにとってライブの面白さってどんなところなんでしょうか。

辻井:スベるんもウケるんも、そのまま自分の責任のものとして見てもらえるから納得できるんですよ。テレビは編集とかで、僕がやったことと観る人の感じ方が違ってくるから。現場でしゃべってても使われなかったら「あいつ、なんもしゃべってへんやんけ」って勝手に思われるじゃないですか。ライブだったら「あいつあかんな」と思われるにしても全部見てもらってるんで。だから楽しいですね。やりがいがあります。

ナポリ:たしかにテレビは「これをやってください」っていうのがあるけど、舞台は完全に自分の考えだけで動けるんで。ただただ自分が本気で挑んで戦果を上げられるかどうか。スポーツみたいで楽しいっすね。

辻井:スポーツ……?(笑)


――5月22日には単独ライブ「四時半起きのギタリスト」が開催予定です。社会の状況がどうなっているかにもよりますが、できるといいですよね……!

辻井:そうっすねぇ、無事開催できるのがいちばんいいですけど、配信でも観れるには観れるんで。いろんな人に観てほしいですね。

ナポリ:直前で急に「中止!」ってなるといちばんしんどいんでね。急遽変わらん限りはいけるんで。

辻井:今回初めてオープニングコントだけは動画撮影OKにしてるんですよ。お客さん各自のアングルがあるわけじゃないですか。ナポリ好きやったらナポリばっかり撮ってていいですよ、と。それをあとでSNSにあげてもらって僕らがかき集めて、いろんなアングルからのオープニングコントを載せようかなと思ってるんです。ナポリくんが言い出したことなんですけど、面白いなと思って。だから実際に来て楽しんでもらえたらいいんですけどねぇ。

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アイロンヘッド
NSC大阪校 30期生。2007年に結成したナポリ(左)と辻井亮平(右)のコンビ。
2021年4月より、ヨシモト∞ホールの看板芸人「ムゲンダイレギュラー」として活躍中。


■インタビュー動画 「BEHIND THE STAGE」



■アイロンヘッドINFO

アイロンヘッド新ネタ単独ライブ 「四時半起きのギタリスト」
日程:2021年5月22日(土)11:45開場 12:00開演
会場:ヨシモト∞ホール
出演者:アイロンヘッド


その他の出演情報はヨシモト∞ホールHPにて随時更新中!


 

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ライター/斎藤岬 撮影/越川麻希
スペシャルインタビューMOVIE:CAMSIDE


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