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ぎっくり腰とサボりぐせを乗り越えて高みを目指す! ネルソンズの“腹をくくる”タイミング

「キングオブコント2021」準決勝進出者35組が発表された。ネルソンズもそこに名前を並べている。2019年の決勝進出時には青山フォール勝ちが骨折、今年は準々決勝後に和田まんじゅうがぎっくり腰(は無傷)。立ちはだかる障壁を乗り越えて高みに再びたどり着けるのか、最終手段は「お祓い」と「運」に託された!

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「岸で安心したら和田が噛んだ」綱渡りの準々決勝

ーー「キングオブコント」準決勝進出おめでとうございます。準々決勝は、自分たちの手応えとしてはどうだったんでしょうか。

和田:ドキドキしましたね。

青山:どうにかしがみついて、指だけかかったって感じです。

和田:言い訳じゃないですけど、準々決勝が二部制でお客さんを入れ替えた後半のトップバッターだったんです。だから前の人のウケ方がわからないし、今はネタ終わったらすぐハケないといけないんで後の人たちがどれくらいウケたのかもわからなくて。ほんっとに結果が怖かったです。体感では「イケたかな」って思ってはいたんですけど。

青山:その前に劇場でやったときは「このネタ大丈夫かな」とか思ったもん。それでもやるしかないんですけど。

岸:「準決勝はいかないと!」っていうのと「ここで終わりたくない」って気持ちが相まって、僕は準々決勝がいちばん緊張するんですよ。MCの人が出る前にチュ〜チュ〜ルチュ〜♪って「キングオブコント」の音楽が流れるんですけど…

和田:そんな音楽か?

青山:そんな音楽じゃない。

和田:ちゃおちゅ〜るじゃん。

岸:ちゃおちゅ〜るじゃなくて! とにかく出囃子が一発流れるんですけど、それに合わせて一回「オエッ!!」って空ゲロ吐いておきました。

和田:岸は毎回ソデでそれやるじゃん。客席に聞こえるからね、あれ。

岸:喉の引っ掛かりがなくなるんで、あれをやらないとダメなんです。

和田:「岸は別に間違えてもいい」って言ってるんですけどね。僕と青山は「岸は間違える人」と思ってるんで。なのに緊張するんですよ。

青山:岸、今回は前日まで全部間違えてたんですよ。1日前にネタをちょっと変えて、岸のセリフが増えたんです。そのセリフの後に和田が大きい声で一言言ってウケる流れなんで、岸が噛んだら終わりなんですけど、前日にあった3回のライブで1回もうまく言えなくて。余計にグッとなっちゃうから「指摘しないほうがいいかな」とも思ったんですけど、さすがに言っておかないと後悔すると思って「あそこ大丈夫か? お前の言葉でいいから」って伝えました。

岸:本当にそう言ってもらってよかったです。言われなかったら自分から「セリフ変えていいか」って言ってましたもん。

青山:準々決勝では、そこがうまくいったんですよ! 「噛まなかった!」ってネタ中に思いました。そしたら、和田がその後のセリフをめちゃくちゃ噛んだ(笑)。

和田:それまで噛んだことなかったのに……。

青山:岸がちゃんと言えたことで、俺と和田は一回スッと役が抜けちゃった。

和田:「言えた!」

青山:「言えちゃった!」

岸:(笑)

和田:あのとき集中できなかったもんな。

青山:安心感で噛んだんでしょうね。結構大事なくだりだったんで、もし準々決勝で落ちたらそこが理由だろうなって思ってました。

和田:うそ、あぶな!

青山:受かってたんで今言えました。岸が言えたことがミスでしたね(笑)。

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「仕方ねぇな」とサボりぐせが出た2020年の反省

ーー「キングオブコント」の戦績は2019年が決勝進出、2020年は準決勝敗退です。いけた年といけなかった年で何が違ったのか、この1年思うところはありましたか?

青山:2020年はコロナを理由にネタつくってなかったです。本当はつくれたんですけど。


ーーつくってる人はつくってましたね。

青山:そうなんです。全然つくれたはずなのに、「コロナだから仕方ねぇな」って思ってたところがありました。決勝行った人に比べてそのへんの気持ちの弱さは出ましたね。

和田:単独もなくなったしな。

青山:「仕方ねぇな」ってちょっと安心してる自分らもいたんですよね。僕らサボりぐせがあるんで、そこが出てしまいました。

岸:ひょっとしたらキングオブコントもなくなるんじゃないかっていうのにちょっと賭けてたところはあります。

和田:賭けてた。

青山:そう、それなら傷つくこともないだろうから。


ーーサボりぐせがあるんですか? 

和田:そうですね。新ネタライブの当日の朝にやっとネタができるくらいです。夏休みの宿題やらない小学生みたい。

青山:ほんとそう。ギリギリまで宿題溜めてる。「キングオブコント」も、ほかの人たちは早くにネタ決まっててすごいっすよね。俺たちマジでいつもギリギリです。

和田:台本提出期限のギリギリで決まる。

青山:2019年は早かったんだっけ?

和田:いや、決まってなかった。何やるか揉めてたよ。もともと本当にネタをつくらないんで、候補がないんです。つくっても「キングオブコント」ではできないネタだったりもあるし。

青山:選択肢は少ないよね。

岸:「これでいくしかない」ってなる。

青山:腹くくるタイミングがどこかってことでしかないな。

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脱・キャラコントを目指しても徐々に「まんじゅうになる」

ーー今のネタの方向性について聞かせてください。今年1月に『しくじり学園 お笑い研究部』(ABEMA)にジェラードンさんと2組で出た際に、和田さんが「もうキャラコントはやめようと思ってた」とちらっと言っていましたよね。あれが気になっていました。

和田:言いました、言いました。キャラのパターンが3つしかなくて、それを5年くらいやってるんです。おじさんと、しゃくれてる眼鏡と、最近はやってないですけど熱血先生ジュンヤ、この3つです。もう飽きられてきてあんまりウケなくなってきてたんで、やめようかと思ってたんですけど、出ちゃうんですよねぇ。


ーー出ちゃう、とは?

青山:最近、新ネタをおろすとき、最初キャラが薄めなんですよ。多分本人的にも普通でやりたい、新しいキャラ見つけないとって思ってるんでしょうけど、何回かネタ叩いていくうちにちゃんといつものキャラに戻ってるんです。

和田:はい。

青山:和田の中では模索してるんだと思います。ネタ合わせのときは“和田”でやってるんですけど、だんだん濃くなっていく。

岸:どんどん“まんじゅう”になっていくよね。

青山:そう、どんどん“まんじゅう”に。

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ーー“和田”と“まんじゅう”は別人格なんですね。

和田:まんじゅうのほうがキャラ側です。そうなんです、結局まんじゅうになっちゃう。

岸:そっちのほうがウケるしね。

和田:本当は内容で笑かしたいんですけど、どうしても手前の笑いが欲しくなっちゃうんで……。


ーー和田さんは東京03さんに憧れているんですよね? 03さんは台本がしっかりしたコントの代表格というイメージです。

和田:そうです。東京03さん、バナナマンさんに憧れあります。どっちも台本がしっかりしてますよね。ただ、東京03さんが感情でコントやるところは意識していて、自分がやるときも感情で言葉発してます。

青山:和田はそれ言うよね。岸がセリフで詰まってるときに「セリフとかじゃねぇ、感情でやるんだよ」ってネタ前にアドバイスしてました。

岸:セリフが多くて頭抱えてたらそれ言われた。

青山:「噛んだっていい。感情でやれば噛むことも感情のうちだから」

和田:恥ずっ!

岸:ネタ終わりにも言われました。


ーーそう言われて岸さんは「なるほど」となるんですか?

岸:「いや、わかるけど!」って感じです。

和田:なんで怒ってんだよ。

岸:「わかるけど! 和田くんみたいにできないから!」

青山・和田:(笑)

岸:でも勉強になります。見習ってます。

青山:見習ってんだ。相方なのに。

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岸、女性役の演技を名物プロデューサーに褒められる

ーーネタをつくるときは、キャラとシチュエーションのどちらが先行なんでしょう。

和田:今は完全にシチュエーションが先で、どういう感じでしゃべるかとかは後ですね。だよね?

青山:僕は考えるときは和田ありきですね。和田がどうなったら困るか、和田をどうするかでシチュエーションを考えてます。


ーーたとえば一時期よくメディアでやっていた「文化祭前日」のコントもそうやってできたんですか?

青山:あれはなんか、すごいでき方だったよね。

和田:そうだね。

青山:たしか和田が設定を持ってきて、なんとなく立ち(稽古)でやってたらできた。

和田:でも新ネタライブで下ろしてから、完成形になるまで半年とか1年くらいかかったんですよ。そこも含めて変なでき方でした。

青山:あのネタができたのはデカかったかもしれません。和田を振り回して岸が女性で、っていう今の形のいちばん最初に近い。


ーー岸さんの女性役も板についてきましたよね。

青山:本当に仕上がってきたなって思います。岸には言ってなかったですけど、最近周りで評判いいんです。

岸:えぇ〜。でも、たしかにね。『エンタの神様』(日テレ系)でも言ってもらった。

青山:そうね。前に五味(一男)さんから「君の女性の演技は妖艶さが足りない」ってダメ出し食らって、めちゃくちゃ撮り直したんですよ。何回くらいやったかな、10回くらい?

和田:もっともっと。30回くらいやった。

青山:初めて岸の女性役に対してしっかりしたダメ出しをもらいました。そこから数ヵ月経ってまた『エンタ』の収録に行ったら、「上手になったね……!」って言われて。

和田:何が変わったかはわかんないです。

岸:俺、めちゃくちゃ緊張してた。また女性役のネタだったから、ダメ出しあるかなって。

和田:その緊張感が良かったんじゃない?

岸:収録終わった後で五味さんに「首の動きが女性なんだよなぁ」って褒められました。

青山:あそこまでちゃんと岸の女性役について言ってくれる人、いなかったからね。ありがたいことだったよ。

岸:あと最近、ザ・ギースの尾関さんにも「うまいねぇ」って言われたわ。

青山・和田:(笑)

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13年芸人をやってきていちばんウケたハプニングの瞬間

ーー準決勝まで2週間程度ですが(取材時点)、いま、和田さんがぎっくり腰だとか。

和田:そうなんです。


ーー2019年の決勝は青山さんが骨折していましたよね。

和田:ほんとそうっすね。お祓い行ったほうがいいかもしれない。

青山:「お祓い行け」って俺らよく言われるよな。

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ーー以前ルミネでネタライブを観ていたときに、ネルソンズさんのオチ直前で急に舞台が暗転してしまったことがあったんです。その記憶もあって、アクシデントに見舞われやすいトリオなのかなという印象が……。

和田:あー! それ、ありました!

青山:「まだですー!!」って舞台上で叫んだときだ。13年芸人やってきて、ネタでいちばんウケた瞬間だった。

和田:いや、たしかに舞台上では一番ウケたけど、あれはネタでウケたわけじゃないから(笑)。

青山:「劇場でこんなにウケることあるんだ」って思いました。あの笑いの波がハプニングじゃなくつくれたら、「キングオブコント」優勝できるでしょうね。

和田:やっぱり3人で準決勝前にお祓い行きます。賞レースやネタ番組のランキングで2位に終わることが多いのも気になってて。

岸:神様になんて言ったらいいんだろうな。

和田:「ちっちゃい不幸が多いんで……」って言う。

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ーー最後に、準決勝に向けて意気込みをお願いします。

和田:ここから本番までやることやって追い込んで、あとは運っす。準決勝まで残ってるメンバーは普段のライブでもウケてる人ばっかりだから、当日のお客さんとどれだけマッチするかってところだと思うんです。もちろん実力も必要ですけど、そこの運に賭けたいですね。

青山:やることやったら後はそうだね。

岸:3人の運が重なり合ったらいけます。


ーーそれまでに腰が治って万全になることを祈ってます。

和田:それも運っすね。今日はありがとうございました。(立ち上がろうとして)イテッ……。

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■ネルソンズ
キングオブコント2019ファイリスト、2016年「おもしろ荘」優勝、2017・2018NHK新人お笑い大賞決勝進出の実力派コントトリオ。
中学校の同級生だった青山と和田がコンビを組み、そこに岸が加入してトリオとなる。
坊主頭・肥満体型の和田まんじゅうのキャラを生かしたドタバタ劇はなんとも絶品。


■ネルソンズINFO

トリオ狩り 犠牲者:かたつむり
日時:2021年9月11日(土) 12:45開場|13:00開演
会場:ヨシモト∞ドーム ステージⅠ
出演者:ネルソンズ/かたつむり
料金:前売¥1,800|当日¥2100|有料配信(GoTo割引)¥800



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ライター/斎藤岬 撮影/越川麻希(CUBISM)
企画・編集/小林亜美




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