本間龍 原発広告の罠 新聞・テレビを沈黙させた電通

原発安全神話を浸透させた巨額の原発広告

── 本間さんは、『電通と原発報道』(2012年)に続いて、昨年『原発広告』を著し、原発広告がもたらした問題をえぐり出した。

本間 私自身、博報堂に18年間勤務していて、原発広告に問題意識は持っていました。2011年3月11日に東日本大震災が起こり、福島第一原発事故が発生して以来、著名な作家の方や、著名な広告業界の方が、原発広告についての著作を作るだろうと思っていたのですが、どなたもやりませんでした。そこで、自ら書いてみようかと思ったのです。

── 福島第一原発の事故直後の報道も歪められていましたが、それ以前の原発報道もおかしかった。そのいずれも東電による巨額な広告費によるものだったことを、本間さんは明確に示した。

本間 東京電力や各地の電力会社は地域における完全な独占企業で、競争相手がいません。優位に立つために広告を出す必要などないのです。にもかかわらず、彼らは大量の広告宣伝費をメディアにばらまいてきました。それは、原発の安全幻想を植え付け、原発に反対する言論を封じ込めるためだったのです。

 原発広告は1970年代半ばから始まっていますが、東電は1979年のスリーマイル島原発事故と1986年のチェルノブイリ原発事故以降に、普及開発関係費(広告宣伝費)を加速度的に増やしていきました。そして1989年以降は、毎年200億円以上の予算を持つ大スポンサーになっていったのです。その頃、担当代理店であった電通がメディア操作のための指南役になったと、代理店業界ではささやかれています。朝日新聞が調べたところでは、東電など電力9社は、1970年代から約40年間で2兆4000億円もの原発広告を出していました。またそれ以外にも、電気事業連合会(電事連)が主に新聞や雑誌などの全国的なメディアへ出していた広告もあります。特に1980年代以降に電事連の広告は増え、2010年の時点で年間200~300億円もの広告を出していました。この電事連などの広告を含めると、40年間で3~4兆円の原発広告費が使われていたと推測されるわけです。

── 湯水のように使われた原発広告は、電気料金によって賄われています。

本間 通常、企業は利益に応じて投入する広告費を決めます。ところが、日本の電気料金は発送電にかかるすべての費用を上乗せする「総括原価方式」によって決められています。電力会社は、どんなに広告費を使っても赤字にならないようになっていました。

 国民が負担する電気料金によって、巨額の原発広告を出して、国民を洗脳し、メディアを懐柔してきたのです。

 嘘と欺瞞にまみれた原発広告は、「原子力発電所は絶対に事故を起こさない」「万一事故が起きても放射能は絶対に外に漏れない」などという根拠のない安全神話を浸透させてきました。同時に、エネルギーの3分の1は原子力、原子力はCO2を出さないクリーンなエネルギーというイメージを刷りこんできたのです。

電通によるプロパガンダ戦略

── 原発の安全神話を浸透させるために、徹底した原発PA(パブリック・アクセプタンス=社会的合意形成)戦略がとられてきました。

本間 「巨額の広告を使って原発をPRしてきたが、まだ浸透度が足りない」ということで考え出された手法がPAです。PRと似たような手法ですが、原子力政策が社会に受け入れられるようにするための手法です。

 1991年3月に日本原子力文化振興財団の原子力PA方策委員会が、科学技術庁(当時)からの委託を受けて「原子力PA方策の考え方」をまとめました。そこには、「原子力に好意的な文化人を常に抱えていて、何かの時にコメンテーターとしてマスコミに推薦出来るようにしておく」とか「人気キャスターをターゲットにした広報を考える。事件のない時でも、時折会合を持ち、原子力について話し合い、情報提供をする」といった具体的な方策が書き込まれています。こうした方策の作成には、広告代理店が協力していたと推測されます。

 電力会社から金をもらって、原発礼讃キャンペーンの片棒を担いできた評論家や作家、タレントも少なくありません。彼らは、原発推進派の学者や東京電力の社長とともに、企業広告や意見広告に出演していました。そしてその人選から制作まで、すべてを広告代理店が手配していたのです。

 電力会社は桁外れの広告出演料を用意していました。漫画家のみうらじゅん氏は、東電から四コマ漫画一作品で500万円出すと言われましたが、あまりに胡散臭くて断ったといいます。

── どのような人が広告塔になっていたのですか。

本間 「My News Japan」が調査してランキングを作っていますが、露出の多かった人として、勝間和代さん、櫻井よしこさん、増田明美さん、岡江久美子さんといった人の名前が挙がっています。

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