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アラビックヤマトと木工用ボンド(+スライム作り)

工作に使う糊、接着剤といえばアラビックヤマトと木工用ボンド。
そう言っても過言ではないと思います。
透明で黄色のアラビックヤマトに対して、木工用ボンドは真っ白。見た目は全く異なりますが、実は元となる原料は同じです。

アラビックヤマトはPVALと表記されています。これはポバールのことで、ポバールとはポリビニルアルコール(PVA)の別名です。
つまり、洗濯のりと同じ原料なんです。
対して、木工用ボンドはポリ酢酸ビニルが使われています。
ポリ酢酸ビニルはチューインガムのガムベースや化粧品などにも使われています。
実は、ポリ酢酸ビニルに「けん化」というエステルの加水分解反応を施すと、ポリビニルアルコールになるんです。

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図のように、酢酸ビニルを重合反応で沢山つなげるとポリ酢酸ビニルが出来ます。ポリ酢酸ビニルをけん化すると、酢酸基が水酸基になり、ポリビニルアルコールが出来ます。
ポリ酢酸ビニルもポリビニルアルコールも、酢酸ビニルから作られているんですね。酢酸ビニルはエチレンと酢酸から作られるため、酢酸の価格変動に影響を受けます。
ちなみに、ビニルアルコールは不安定な物質のため、重合が困難です。そのため、ポリビニルアルコールはポリ酢酸ビニルをけん化して作っているんです。

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木工用ボンドに使われているポリ酢酸ビニルは水に溶けにくい物質です。
乳化剤としての機能をもっているため、水と混ぜるとエマルション(エマルジョン、乳濁液とも呼びます)になります。

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木工用ボンドは図のように、水の中にポリ酢酸ビニルが球状に分散している状態と考えられます。ボンドが白く見えるのは、光が分散しているポリ酢酸ビニルに反射されているためです(光の乱反射)。
エマルションで代表的なのはマヨネーズ。エマルションにすることを乳化と呼びます。乳化は料理や工業製品など、広く利用されている分散技術です。

アラビックヤマトの方は、親水性のポリビニルアルコールが使われているので水に溶けた状態です。木工用ボンドのように光の乱反射は起きないので透明です。

さて、洗濯のりと同じポリビニルアルコールで出来ているアラビックヤマトは、ホウ砂を使ってスライムを作ることが出来ます。ついでに、木工用ボンドも試してみました。

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アラビックヤマトは補充用の大容量パッケージを購入しましたw

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アラビックヤマトに水を混ぜます。水:アラビックヤマト=2 :1にしました(重さ、体積どちらでもOK)。      

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4%のホウ砂水溶液を少しずつ加えながら混ぜます。 

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少し硬めのスライムになりました。もっと水を加えても良かったですね。
そして、かなりベタベタします。手に付くと離れないので、あまりお勧め出来ません...

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水を加えず、糊にそのままホウ砂水溶液を混ぜてみると、弾力のあるスライムになりました。スライムボールと名付けましょうw
結構跳ねます。

正直に言うと、洗濯のりより割高でコストパフォーマンスは悪いです。スライムを作るなら洗濯のりを使いましょう。

続いて、木工用ボンド

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       ホウ砂水溶液を加えて混ぜると......

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白い塊になりました。伸びは少ないです。 
ポリ酢酸ビニルに水酸基は無く、疎水性なのでホウ砂水溶液とも混ざり難い。ですが、水素結合に必要な水素と酸素を持っているため、ホウ酸イオンとある程度水素結合を形成してゲル化するようです。 

木工用ボンドは独特の臭いがしますが、あの臭いは酢酸ビニル由来です。
比べてみると、アラビックヤマトも似た臭いです。こちらも酢酸ビニルが元なので、当然かもしれません。
ちなみに、けん化したポリビニルアルコールでも、酢酸基は残っています。

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図のように、けん化(エステルの加水分解)反応を進めてもある程度酢酸基が残ります。ポリビニルアルコールは、どのくらい水酸基になっているのかを、「けん化度」という指標で表します。
アラビックヤマトは色が黄色っぽいので、けん化度はあまり高くないと推測されます(おそらく80%くらい。高けん化度だと90%を越えます)。 

アラビックヤマトは、昔使われていたアラビアゴムの液状糊をヒントにしたことからこの名称が使われています。かつてのアラビアゴム糊の容器は海綿状の塗口が付いており、手を汚さずに使うことができました。しかし、塗口はすぐに固まり、価格も高かった。
ヤマト株式会社は、塗りやすく表面の乾燥し難い画期的なスポンジキャップを開発。これが大ヒットします。

木工用ボンドはコニシ株式会社の商品です。接着剤を主力としていますが、工業用から家庭用まで幅広くカバーしていて、テープやワックス、ボンド用の機器など様々なものを扱っています。
木工用ボンドが有名になりすぎ、そのイメージが定着してしまったことが悩みの種のようです(^^;)                                          


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