移動するリングがもたらす新機能、スライドリング・マテリアル

ゲルは高分子の鎖を橋掛けし、三次元ネットワークを作っています
この橋掛け部分が自在に動いたらどうなるのでしょうか?
近年、この橋掛け部位(架橋点)が動く高分子が開発されました。
スライドリングマテリアルといいます。
それをゲルに応用したものがスライドリング・ゲル(環動ゲル)です。
スライドリング・ゲルは、架橋点が輪っか(リング)になっています。通常、ゲルに力を加えると、分子鎖の短い部分から切れていきます。

ところが、スライドリング・ゲルは架橋点が移動するため、加えられた力を受け流します(下図)。

特に、ポリエチレングリコールとα-シクロデキストリンから合成したものをポリロタキサンと呼びます。

α-シクロデキストリン:糖が環状に繋がった、オリゴ糖の一種です。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%87%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%B3)

シクロデキストリンを分子鎖に通し、外れないようにしたものがポリロタキサンです。

ポリロタキサン(https://www.asmi.jp/tec2)

架橋点が固定されていないため、自由に動くことが出来ます。上手く作ることが出来れば、スライドリング・ゲルは天然ゴムのようによく伸びます。

そして、ゲル内部での物質の拡散に優れていることが分かっています。
物質が拡散し易いということは、ゲルの中で様々な反応をさせ易いと考えられます。
ゲルに目的の機能を付ける事が、従来よりも容易になるかもしれません。
スライドリング・ゲルは、医療材料や衝撃吸収材料など、様々な分野への応用が考えられています。
しかし、製造コストが高く、作るのも容易ではありません。
何度作っても脆いゲルになったり、従来のゲルと変わらないものになったりと、ハードルは高いです。

ちなみに、ゲル以外の樹脂材料にも検討されています。
架橋点が動いて加えられた力を分散するため、割れ難く、傷付き難い材料として研究が進められています。

分子に通したリングが動く架橋点になる。画期的で素晴らしい材料ですが、実用化には更なる技術革新が必要です。

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Gelate

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