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水の話

ハイドロゲルと水は切っても切れない関係にあります。
水が無ければ、ゲルは干物になってしまいます。
水を吸収することで初めてゲルとなり、柔軟でウェットな材料になります。ところで、水は他の物質と大きく異なる、特殊な物質だということをご存じでしょうか?

パンやスポンジに圧力をかける(強く握る)と、柔軟性の無い、硬いかたまりになります。多くの物質は、圧力をかけると密度が大きくなり、硬くなる。
ところが、氷に圧力をかけると溶解して液体になります。水は固体よりも液体の方が密度が大きいので、圧力をかけると固体から液体になるのです。

この原理を上手く利用しているのがアイススケートとスキーです。もし、水が他の物質と同じ性質だったら、氷は圧力をかけると小さく硬くなるだけで、液体に戻りません。液体になるから滑ることが出来るんです。
私たちがアイススケートやスキーを楽しむことが出来るのは、水の特異な性質のおかげなのです。

なぜ、水は液体のほうが密度が高いのでしょうか? 上の絵を見て下さい。普通、物質は温度が下がれば下がるほど密な構造を取ります(密度が大きくなる)。しかし、水は4℃のときに最も密度が高くなり、4℃より低くなると密度は下がります。
これは、水が水素結合によって結晶構造を形成するためです。その結晶構造はスカスカなので、凍結して固体になると密度が下がります。
つまり、海の底には4℃の水が存在し、それより軽い氷は水面に浮かびます。
そのため、真冬や極寒の地でも海や川が完全に凍ることはありません。(浅い、水の少ない川は完全に凍ることがあります)水の中の生き物が冬を越せるのはこのためです(水やジュースに氷が浮かぶのも同じ理由です)。

水の持つ大きな表面張力も水素結合によるものです。
私たちの体にも、この水の性質が大きく影響しているんです。

人の体の約60%は水です(成人の場合)。
水は体内の酸素や栄養の運搬、発汗による体温の調節、体内の浸透圧やpH調整(弱アルカリ性を保つ。人の体液はpH7.4)、老廃物の除去など、数えきれないほど多くの役割を担っています。

この重要な水を失うとどうなるのか?
体の水分が2%失われるだけで、喉の渇きと食欲不振に襲われ、運動能力が低下します。体温調節機能も低下します。
3%失うと、更に強い喉の渇きに襲われ、頭がぼんやりしてきます。
5%も失うと頭痛がし、情緒不安定になります。体に力が入らなくなり、眠気に襲われることもあります。
10%となると、大変です。身体が痙攣し、循環不全に陥ります。意識を保つのも難しいでしょう。
20%は危険どころではありません。命を失います。

2%以上の水分を失わないように心掛けるのが大切です。
電解質(塩分)の摂取も忘れないようにしましょう。
熱中症は3%以上の水分を失っているときに出る症状。危険水域です。黄信号ではなく、赤信号です。

水は図のように酸素原子がマイナス、水素原子がプラスに帯電する極性分子で、104.5°に開いた構造をしています。そして、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)と水素結合を形成します。
この性質のため、多くのものを溶かします。
特に体に重要な糖(グルコース)、塩分(塩化ナトリウムなど)、ミネラルを溶かします。すべての生命を支える重要な性質です。

図のように、糖類は水素結合によって溶けています(見難い図ですが...)。
実際には図のように平面ではないので、糖(グルコース)の周囲を水分子が取り囲んでいます。

塩分やミネラルは水の中ではイオン化し、図のように水に包み込まれるようにして溶けています(図はナトリウムイオンと塩化物イオンが水に溶けている様子です)。

水は地球上の多くの場所に存在し、毎日触れているが故に、その特異性に気付き難いです。水があるからこそ、生命がある。いつまでも大切に使いたいですね。

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